△風立ちぬ(2013年 日本 126分)
staff 原作・脚本・監督/宮崎駿 プロデューサー/鈴木敏夫
アフレコ演出/木村絵理子 作画監督/高坂希太郎
撮影監督/奥井敦 美術監督/武重洋二 色彩設計/保田道世
音楽/久石譲 主題歌/松任谷由実 音響演出/笠松広司
整音/笠松広司 編集/瀬山武司 動画検査/舘野仁美
cast 瀧本美織 西島秀俊 志田未来 竹下景子 國村隼 大竹しのぶ 野村萬斎
△生きねば。
いざ、生きめやも。っていうキャッチコピーから、
こちらに変わったんだけど、これ考えた人、たいしたもんだわ。
ヴァレリーは、ほんとはそういう気分で書いたんだろね、たぶん。
生きろってのもあったね。たしか『もののけ姫』だったっけ?
ある意味、ジブリに共通した主題なんだろか?
ま、それはおいといて、
堀辰雄と堀越二郎に敬意を籠めるのはいいんだけど、
カプローニにも尊敬を籠めたら、
いっぺんに3人の人間に感謝しなくちゃいけなくない?
そりゃ、ちょっと大変だよ。
せめて、堀辰雄と堀越二郎だけにしとけばよかったのに。
けど、そんなこともいってられないか~。
ジブリの名称が「砂漠の熱風」って意味もあるけど、
カプローニの作った軍用偵察機が「Ca309 GHIBLI」でもあるし、
やっぱ、この作品にカプローニを出さないわけにはいかなかったのかな?
だったら、イタリアの話にしちゃえばよかったのに、ともいえないんだよね。
零戦を設計したのが堀越二郎なんだから。
まあ、そんなたわごとをいってても仕方ないんで、
映画の話だ。
関東大震災がどんなふうに活きてくるのかとおもってたら、
あれって、ふたりの出会いを印象的なものにするためだったのかしら?
飛行機とは関係ないのね。
菜穂子が「震災のときはありがとうございました」という声掛けをするために、
もしかしたら、あれだけの長さが必要だったんだろか?
でもさ~、二郎が軽井沢に長い期間出かけた理由はわからないし、
よく会社が認めてくれたな~とかおもうんだけど、
まあ、それはいいとして、再会したとき、二郎はとっても口下手になってるでしょ?
もうすこし菜穂子に飛行機のこととか設計のこととか話せばいいのにね。
だって、二郎はとことん美しい飛行機を作りたいっておもってるんでしょ?
もっと愉しそうに語って、止まらなくなるっておもうんだけどな。
そしたら、二郎の抱えてる夢がどういうものか菜穂子にも見えてくるじゃん?
なんだか、夢の世界と、ドイツの視察旅行と、どっちも長かったな~。
なのに、肝心の零戦が出てくるのは数カットだけなのね?
『紅の豚』にも雲の上に飛行機の墓場みたいなのがなかったっけ?
けど、零戦が開発されて飛んでくところが観たかったな~、
とかおもってた人達は、なんか、肩透かし食らった気になってないかしら?
この映画でいうと、
飛行機を作ることが大好きだった少年が、大人になって憧れの仕事につき、
(ほんとは乗りたかったんだよね、少年時代の夢によれば)
何度も失敗しては挑戦を繰り返し、世界でいちばん美しい小型戦闘機を作るんだけど、
でも、それは闘うことを運命づけられた飛行機で、
無数に作られながらも、つぎつぎに撃墜され、
やがて国まで滅んでしまうのをまのあたりにしてしまう物語じゃなかったんだね。
自分の作った戦闘機が世界で一番だったはずが、
銃座や胴体の防御は無に等しかったこともあって、多くの搭乗員が亡くなり、
やがて特攻にまで用いられるようになるという、悲劇じゃなくて、
あくまでも飛行機を好きな人が、どんなふうに飛行機を作ったのかということに、
物語の主眼が置かれてるんだろうか?
でもな~、二郎と菜穂子が微妙なんだよな~、飛行機が介在してないんだもん。
出遭って間もない頃は紙飛行機が好い小道具になってたんだけど、
それからが、どうも、飛行機が菜穂子と絡まなくなってくるんだよね。
なんでなんだろ?
ま、なんにしても、菜穂子は生きなきゃなんない。
生きようと努力しなくちゃなんない。
だって、それが生きねばってことだから。
自分の死を受け入れちゃいけないんだよね。
でも、これって大変なことで、だから、迷いに迷い、二郎の元を去るのかな?
ただ、生きねばならないのは、当時の日本人のみんなに言えることだし、
もっといえば、零戦そのものも生きねばならなかったんだよね。
生きねばっていう主題は、もっといろんな面を見せてもよかったね。
あ、ちなみに、
名古屋駅を降りたときに「カブトビール」の看板が出るのはリアルです。
煙草をはじめ、当時の道具類や風景はきわめてリアルだったし、
人物たちの動きもリアルだったんだけど、
その分、ひとつひとつのシークエンスが長くなって、余韻ばかり漂ってる気も。
なんか、そういうことを考えながら観てたんだけど、
この頃、ジブリの観客はなんか家族や恋人同士のイベントと化してて、
退屈になったのか走り回り始める子供や、
ぼくの席をかんかんと蹴り続けるカップルや、
いきなりあくびするおじさんや、あらすじを話し始めるカップルや、
タイトルロールが始まったらすぐに携帯をチェックするおばさんや、
携帯はチェックしなくてもさっさと立って出てくおばさんがいたりして、
もう、満員になってるもんだから、余計にごそごそ騒がしいし、
出てく人の影で、画面は観えなくなるし、
なんつっても、映画の途中で、そこらじゅうでイビキがし始めるし、
いやまじ、もうすこし、なんとかならないんだろうか。