△迷宮のヴェニス(1990年 イタリア、アメリカ 100分)
伊題 Cortesia per gli Ospiti
米題 The Comfort of Strangers
staff 原作/イアン・マキューアン『異邦人たちの慰め』
監督/ポール・シュレイダー 脚本/ハロルド・ピンター
撮影/ダンテ・スピノッティ 美術/ジャンニ・クワランタ
衣裳デザイン/ジョルジョ・アルマーニ 音楽/アンジェロ・バダラメンティ
cast クリストファー・ウォーケン ナターシャ・リチャードソン ヘレン・ミレン
△サイコ、ヴェニス版?
「父はいつも黒い口髭を生やしていた。
髭が白くなってくると、黒く染めていた。
ブラシで、女性の使うもので黒く染めていた。
そう、マスカラ」
というクリストファー・ウォーケンの供述(ナレーション)から想像するに、
ヴェニスを訪れた不倫カップル、
いや、独身男と2人の子持ち女のカップルをストーキングし、
自分たちの身近において若さを吸収することで、
倦怠期にさしかかっているSM趣味の夫婦が、
ふたたび人生を謳歌しようとしていたところ、
不幸にもカップルの抵抗に遭ったために、
男を殺してしまうという悲劇が生じてしまったという展開なんだろう。
たしかに、異常ともいえるような性衝動と性生活に惑溺してしまった男女は、
どうしても新たな刺激を求めて生贄を捕獲しようとするんだろうし、
結婚しようとおもっていたカップルもやや倦怠期にさしかかっていて、
そういう異常な夫婦の煽情に遭ったことでふたたび情欲が燃え、
真っ昼間から求め合うことの快楽を知ってしまったために、
異常な夫婦と離れがたくなってしまうという設定はわからないでもないし、
こういう精神構造を映像化するにはヴェニスは最適で、
神経症を演じさせたら右に出る者のいないウォーケンをはじめ、
音楽も衣装も演出も当代一流を集めたにも拘わらず、
なんでこんな感じの映画になってしまったかといえば、
これはひとえに脚本とカメラにあるとしかおもえないんだよね。
いや、まいったな~。