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ゴジラ対ヘドラ

2014年09月01日 12時42分15秒 | 邦画1971~1980年

 ◇ゴジラ対ヘドラ(1971年 日本 85分)

 英題 Godzilla vs Hedorah

 staff 原案・監督/坂野義光 特殊技術/中野昭慶 脚本/馬淵薫、坂野義光

    撮影/真野田陽一 美術・ヘドラデザイン/井上泰幸 音楽/真鍋理一郎

    主題歌/麻里圭子withハニー・ナイツ&ムーンドロップス『かえせ!太陽を』

        作詞:坂野義光、作曲:眞鍋理一郎、編曲:高田弘

 cast 山内明 木村俊恵 柴本俊夫 吉田義夫 岡豊 渡辺謙太郎 岡部達 勝部義夫

 

 ◇特撮とボク、その43

 少年の時代、この作品が、最後に観た怪獣特撮映画になった。

 その後は『日本沈没』だの『ノストラダムスの大予言』だのと、

 おなじ特撮物でもじゃっかん観客層の異なるものは観たんだけどね。

 でも、上記2本の作品とこの『ゴジラ対ヘドラ』は相通ずるものがあって、

 ぼくとしては、ちょっとだけ贔屓にしてる。

 ゴジラ(呉爾羅)という怪獣をおもうとき、

 ジュラ紀から白亜紀にかけて稀に生息していた海棲爬虫類と陸上獣類の中間生態を持つ生物で、

 原水爆の実験さえなければ、小笠原諸島大戸島の荒魂はこんな化け物にはならなかったはずだ。

 またヘドラという怪獣をおもうとき、

 日本中に垂れ流されていたヘドロに宇宙から飛来してきた鉱物が混ざり、

 きわめて稀な化学反応をひきおこして生物化し、本能に近い意識まで産んでしまったわけだけど、

 それもこれも日本が公害なんてものを生じさせなければ、

 ヘドラなんていう怪獣は生まれることはなかったはずだ。

 つまり、ゴジラもヘドラも共に人間の我儘と強欲の生み出した怪獣にほかならず、

 この両者に文明や文化が破壊されるのは、いわば、人類に対する自然の復讐でもあったろう。

 とはいえ、

 当時、小学生だったぼくは、そんなことなんかちっとも考えてなくて、

 行ったこともないゴーゴー喫茶なるところは、こんな気持ちの悪いところなのかとおもった。

 今にしてみれば、当時流行のサイケデリックは、

 結局、日本人には合わなかったのかもっておもえる。

 というのも、物語に出てくるゴーゴー喫茶もサイケに近いものであってサイケではなく、

 麻里圭子の歌は凄いようにおもえるけど、

 実はとってもまじめで気恥ずかしいくらいに主張してて、

 いかにもメッセージソングよろしく歌い方も手振りもとっても爽やかだったりするからだ。

 1 ※1水銀 コバルト カドミウム 鉛 硫酸 オキシダン

     シアン マンガン バナジウム クロム カリウム ストロンチュウム

   汚れちまった海 汚れちまった空

   生きもの皆 いなくなって 野も 山も 黙っちまった

   地球の上に 誰も 誰もいなけりゃ 泣くこともできない

   ※2かえせ かえせ かえせ かえせ みどりを 青空を かえせ

     かえせ かえせ かえせ 青い海を かえせ かえせ かえせ

     かえせ かえせ かえせ 命を 太陽を かえせ かえせ

 2 ※1(繰り返し)

   赤くそまった海 暗くかげった空

   生きもの皆 いなくなって 牧場も 街も 黙っちまった

   宇宙の中に 誰も 誰もいなけりゃ 泣くこともできない

   ※2(繰り返し)

 でも、当時のぼくはまだまだがきんちょで、

 怖そうなお姉さんがやけに過激な感じで歌ってた歌がものすごく耳に残った。

 そんなこともあって、いまだにこの歌は歌えるんだから、トラウマなんだろね、きっと。

 ただまあ、

 こういう主張性の強い作品っていうか、アクの強い作品はゴジラ物ではめずらしく、

 ぼくはたしかに贔屓だけれども、当時の東宝の上層部は眉をひそめたんじゃないかって気もする。

 そういう雰囲気に包まれながら制作されたものは、どうしてもどっちつかずになっちゃう。

 そもそも、ゴジラに公害という主題をもってくることが強引だったのかもしれないけど、

 それでもやるんだということになったんなら、

 ゴジラに空を飛ばすとかいった子供の喜びそうな新しい技を繰り出すんじゃなくて、

 子供がゴジラに対して助けを呼ぶような正義の味方物を設定するんじゃなくて、

 もっと悲劇的な世界を追い求めてもよかったんじゃないかともおもったりする。

 たしかにゴジラの腕をへし折られても戦い続ける凄まじさはこの作品にしかないけど、

 それ以前にゴジラはすでに温厚な怪獣さんになっちゃってしまったものだから、

 どうしたところで、ヘドラをやっつけてくれる人類の味方というくくりでしかない。

 そういう点、このサイケなゴジラ映画は、なんとも中途半端なものになっちゃってる。

 ともあれ、ぼくの小学校時代は、この作品と共にほぼ終わった。


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