☆クラウド アトラス
原題 Cloud Atlas(2012年 アメリカ 172分)
staff 原作/デイヴィッド・ミッチェル『クラウド・アトラス』
監督・脚本/ラナ・ウォシャウスキー トム・ティクヴァ アンディ・ウォシャウスキー
撮影/ジョン・トール フランク・グリーベ 美術/ウリ・ハニッシュ ヒュー・ベイトアップ
音楽/トム・ティクヴァ ジョニー・クリメック ラインホルト・ハイル
cast トム・ハンクス ハル・ベリー スーザン・サランドン ヒュー・グラント ペ・ドゥナ
☆小さな正義が、次の時代の鍵になる話
なんとも懐かしい感性っていうか、方向性っていうか。
30年ほど前、こういうスタイルはものすごく好きだった。なんていうか、80年代の自主映画のノリっていうんですか。簡単にいってしまえば、別々な世界を描きつつも個々の世界はしっかり繋がり、かつ影響しあい、やがてひとつの話にまとまっていくという、異なった時代のモザイクがパズルのように重なるか、あるいはパラレルワールドが並列したまま語られてゆく構成のことだ。
そこに輪廻転生が語られていれば、なおさら、ぞくぞくする。
そう、ちょうど『豊饒の海』や『火の鳥』や『アポロの歌』のように。
で、映画の中身なんだけど、
第1楽章「アダム・ユーイングの太平洋航海記」
1849年 南太平洋諸島 数奇な航海物語
第2楽章「セデルゲムからの手紙」
1936年 イギリス 幻の名曲の誕生秘話
第3楽章「半減記 ルイサ・レイ最初の事件」
1973年 カリフォルニア 原子力発電所の恐るべき陰謀
第4楽章「ティモシー・キャヴェンデッシュのおぞましい試練」
2012年 イギリス 平凡な編集者の類希な冒険
第5楽章「ソンミ451のオリゾン」
2144年 ネオソウル クローン少女の革命
第6楽章「ノルーシャの渡しとその後のすべて」
2321年 ハワイ 崩壊後の地球の行方
てな構成になってて、これが解体され、複雑に絡み合う展開になってるんだけど、各楽章は時の流れに逆らわずに描かれているから、話としては理解しやすい。かつ、時代と時代とのつなぎは、同一の行動や台詞を用いているから、より鮮明だ。役者がひとり6役になったりしているのは、もちろん、輪廻転生の証だし、彗星の刺青もそうだけど、小道具がそれぞれの時代を繋ぐ役割にもなってる。
こういうのは、とっても嬉しい。
けど、ラストは別な惑星に移住しちゃってるんだね、やっぱり。
地球の超古代になってれば、よかったのにな~。
それじゃまったく『火の鳥』になっちゃうか。
ただ、6つの話がるつぼ状態になっている分、6本の映画を観たのと同じことになるのは、なんとなく得した気分だ。ほんとだったら、1時間くらいの映画を6本観ると合計で6時間になるけど、この映画はぎりぎり3時間におさまってる。これは、別な話が交互に展開するため、場面と場面を繋いでいる部分が削ぎ落とされ、ぎゅっと凝縮されてるせいだろう。
その分、緊張の連続になるんだけど、濃密なストーリー展開になるから、ぼくとしてはとってもお好みなのです。