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狷介不羈の寄留者TNの日々、沈思黙考

多くの失敗と後悔から得た考え方・捉え方・共感を持つ私が、独り静かに黙想、祈り、悔い改め、常識に囚われず根拠を問う。

「笑われて来た」イチロー氏の不動心・集中力・信念貫徹と常識外れの科学的・物理的根拠を基にする打撃

2016-07-21 04:45:53 | エッセイ・コラム
 先日2016年6月15日、米大リーグ・マーリンズのイチロー外野手が、ピート・ローズ氏の持つ大リーグ記録の最多安打記録4,256安打を上回る、日米通算安打数を更新した。
 イチロー氏は、子供の頃から常識外れの言動を行う事により笑われて来たと、その日の会見で語っていた。しかし、その周囲の嘲笑や雑音に影響されず、動揺せず、煽られず、泰然自若として淡々と集中力を持って我が道を進みながら、また自身の個性を伸ばしながら、結果・実績を残して来た。その事によって、反論せずとも周囲を黙らせて来た。
 イチロー氏の内面には独特の感性・捉え方・考え方・判断の仕方が存在する。それらのユニークさがイチロー氏のアイデンティティとなっており、子供の頃から自尊心・自信・誇りを持っているものと思われる。
 その個性はオリックス・ブルーウェーブ在籍時のバッティング・フォームにも現れていた。振り子打法は、その特異なフォームから、当初は周囲から笑われていたのであろう。しかし、それを臆する事無く頑固に信念を貫いた事が立派である。また、その個性を認める監督やコーチに恵まれた事も運が良かった故・仰木彬監督は放任主義でイチロー氏には好都合であったが、元巨人軍の前任の監督の場合には管理主義であった為に、押し付けられる事でその個性が潰されそうになっていた
 何時だったか、その当時の1990年代にテレビの報道番組か何かで、「科学する野球」( ベースボール・マガジン社)の著者である村上豊氏がイチロー氏について、その著者の物理的打撃理論に最も近いプロ野球選手であると言っていた事を思い出す。
 1984年~1985年に投手篇と打撃篇の「科学する野球」をそれぞれ出版された著者の村上豊氏は、プロ野球の経験は無い。「1918年生まれで、神戸三中(現・長田高)-高知高(旧制)-京都大学法学部(旧制)を卒業し、ノンプロ・オール神戸の一塁手として活躍。戦時中は川崎重工業、戦後は三菱商事に勤務し、定年退職後にリョウマ・システムズ(株)社長、金菱商事(株)会長、村上スポーツ企画を兼営する。身体運動学的見地と物理から割り出した野球技術理論で技術指導を行う。」(「科学する野球」著者略歴より一部要約。)
 本書には、物理を基にした打撃・ピッチングの本質が説かれている。そして、現場の監督やコーチの言っている理論とは、全く異なる事が書いてある。従来からの常識とされる理論を否定し、科学的・物理的な理論を根拠にした技術指導を行っている。著者は、巷の指導者よりは実績が無く、肩書きも無い為に説得力に欠ける様に感じる方々も多いと思う。しかし、現場の指導者や先輩は、昔からの根拠の無い言い伝え的な理論や、自分の経験からの思い込みによる指導をされる事が多い。それ故に、プロに入ってコーチにいじられ過ぎて、鳴かず飛ばずで去っていく選手達が多い。又、真実で無い為に、人によって指導理論・内容が違ってくる為に、聞く耳を持ち過ぎる選手は、それらの様々な理論に振り回されてしまう。本書に有る様に、科学的・物理的な理論を根拠にした技術指導であれば、真に正しいフォームとなって、故障する事も無く、選手としての寿命も延びる
 イチロー氏の打撃に見られる様に、球を打つ瞬間は後ろの軸足が地面から離れて浮いているか或いは着地していてもつま先がチョンと着いているだけで、全体重がステップして内側に閉じている前足に乗り移っている。重心は動かさず体重だけを移動するので、体は後ろに倒れて頭の位置は後方となっている。前足を外側に開かず内側に閉じておく事で、体重と捻りによる力を逃さずに溜めて、球にその力を乗り移せている。ステップの幅が小さい事で体重移動もスムーズであり、前足を屈さずに真っ直ぐ伸ばしている事で、打つ瞬間に前足がしっかりとした捻りの固定軸となっている。捻りによる打撃で静かに打ち、その捻りによる力と柔軟性のバネが相乗効果となって増大する力を生み出し、物理的に適ったフォームである為に力のロスが殆ど無く、故障することも無く、現役としての選手寿命も長くなっている
 構えた時に両足のつま先が内側に閉じ、初めは後ろ足を捻りの軸足とし、打つ瞬間に前足を捻りの軸足とする、体が後ろに倒れているので球を打った後は後ろ足に体重が戻ってくる。
 レベル・スイングとは、地面に対しての水平では無い。「仮想の加撃面」に対しての水平である。相対させる基準を何処に置くかが問題である。
 打撃・ピッチングに共通する事が多いが、バレーボールやボクシング、陸上競技、水泳等の他のスポーツにも共通する、或いは通用するのが本書の物理理論である。
 腕を内捻することで腰が入り胸が張る。ピッチングにおいては手投げにならず、肩を壊さない。
 踵(かかと)からのフットワークによりステップした足に体重をしっかりと載せて強い軸足となり、ボクシングにおいては強いパンチを生み出す。
 陸上競技の短距離走においては、踵からの着地でストライドが伸び、踏み出す脚にシッカリと体重を順に載せていく事が出来る為に、より一層の加速力が増す。また腕を内捻する事で腰が入り、野生の走力を持つ肉食系動物の様に、体全体を効率良く使って走る事が出来る。
 ピッチングにおいてもステップの幅を狭くする事で、体重移動がスムーズになるばかりでは無く、高い位置からの投球が可能となり、より角度のある球を投げる事が出来る。後ろ足(初めの軸脚)の膝を地面に着ける程に広くステップしている者が多いが前脚(後の軸脚)に体重が乗り切れずにステップの間に力を損失しており、せっかくの高身長も損をしている。また、ステップ幅を取り過ぎている為に前脚の膝が曲がってしまい、捻りの軸脚の役目を果たしていない
 投球においての直球を投げる上で、人差し指と中指を離さず付けて揃えた方が、力が集中してロスが無くなる
 著者が本書において、自身の物理理論に最も近い投手と紹介しているのが、元・阪急ブレーブスの故・梶本隆夫氏である。梶本氏は高校卒業後、1954~1973年まで20年間の現役時に、通算254勝255敗、防御率2.98、奪三振数2945等の実績を残した。歪み理論に適ったフォームで、捻りで静かに投げ、選手寿命も長かった
 「同時代の投手の多くが力投型のフォームで投げたのに対して、長身にもかかわらずスリー・クォーター気味の、一見おとなしく見えるフォームからの快速球を特徴としていた。ゆったりとしつつ全身を大きく使うフォームは当時最高の左腕投手の呼び声が高かった金田正一を手本にしたと言う。『カネさんの独特の全身の使い方はあの人にしか出来ないもの。ついにものにできなかった』という」(ウィキペディア「梶本隆夫」より。)本書には勿論、元・国鉄スワローズ投手の金田正一氏の捻りの投球も紹介している。
 科学的・物理的根拠を持つ事は大事である。私自身、まだまだ修行が足りない為に欠陥部分が多いが、心に確かな礎・土台を築き、確乎不動の中で自身の信念を持って集中力を発揮する為に、私の場合はそれを聖霊に求める

 



【イチロー氏の打撃フォーム】
・打撃の瞬間時において後ろ脚に体重が全く残っておらず、全体重が前脚に移っている事が解る。
・重心は動かさず体重のみを前脚に移動しているので、頭の位置は後方となって、上体が後ろに倒れている。
・打撃の瞬間時における軸脚である前足のつま先が、投手方向に対して真っ直ぐに向かずに内側に閉じ、前脚の膝が折れずに伸びているので強固な捻りの軸足となっており、体重の力をロスする事無く溜め、その全ての力を球に移す事が出来ている。
・ステップの幅が狭い為に体重移動がスムーズに行われており、前脚の打撃瞬間時の捻りの軸足の膝を伸ばす事が出来ている。
・手が背屈していない(手が手首で甲側に折れていない)。
・レベルスイングを行っているのだが、決して地面を相対基準にしての水平では無い事が解る(特に、高い投球や低い投球に対して「仮想の加撃面」を基準にしてのレベル)。
・静かな力みのない捻りによる打撃である事が解る。


 
 

【梶本隆夫氏の投球フォーム】
   (右から左へ)
・右写真より両腕が内捻して胸が張り、腰が入り、手投げにならず身体全体を使う事が出来ている事が解る(肩に負担が掛からない)。
・ステップの幅が狭い為に体重移動がスムーズに行われており、踏み出した前脚の捻りの軸足の膝を伸ばす事が出来ている。
・ステップの幅が狭い為に、全体重が踏み出した前脚に移動出来ており、体重の力のロスが全く無い。
・踏み出した前足のつま先が投球方向に対して真っ直ぐに向かずに内側に閉じており、前脚に体重の力をしっかり溜めて強固な捻りの軸足になっている事が解る。
・左写真より、上体が打者方向に対して正面を向いてもテークバックした腕が未だ後ろに残っている事が解る(この事は打撃においても同様で、投手側に正面を向いた時点でもバットのヘッドは後ろに残っている)。
・静かで力みなく、ゆったりとした捻りによる投球である事が解る。



 参考文献
 
 
 
科学する野球 ・打撃篇(著者:村上豊氏、出版社:ベースボール・マガジン社、出版日:1985/03)
科学する野球 ・打撃篇(著者:村上豊氏、出版社:ベースボール・マガジン社、出版日:1985/03/25)
科学する野球 ・投手篇(著者:村上豊氏、出版社:ベースボール・マガジン社、出版日:1984/11)
科学する野球 ・投手篇(著者:村上豊氏、出版社:ベースボール・マガジン社、出版日:1984/12/01)


  ・ウィキペディア:「梶本隆夫」

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