感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

爪郭毛細血管の所見

2014-03-11 | 免疫
前々回でレイノー現象の診療について書きましたが強皮症の診断に欠かせないのが 爪郭毛細血管を観察する道具(nailfold capillaroscopy)で、ゴールドスタンダード法がビデオcapillaroscopyとのことですが当科ではまだ残念ながらDermlite(発光型ルーペ)を使っています。 昨年11月にACRとEULARが新しい強皮症の分類基準を出しており(記事)、爪郭の毛細血管異常も項目として入ってますね。毛細血管の異常はけっして強皮症のみではなく他の疾患でもみられるので注意。



まとめ

・Capillaroscopyはリウマチ性疾患における一次および二次レイノー現象の診断と分類のための実質的な価値を持つ手段
・レイノー現象の影響を受けた患者は、常に、少なくとも年に一度はnailfold capillaroscopyで検討すべき
・CTDの他の兆候なしに、レイノーコホートで、3年間の平均期間の後、うち15%は全身性硬化症(SSC)を発症する可能性がある

・定性的評価による正常なcapillaroscopicパターンとは、 1mm当たり9~14(平均10)の毛細血管密度で、“櫛状構造comb-like structure“として形態学的変化のないヘアピン状毛細血管の均一な分布によって特徴付けられる。

・全身性硬化症でみられる “強皮症パターン”と呼ばれるものは、毛細血管拡張、微小出血、無血管領域、および血管新生の存在、曲がりくねった交差するおよび/または分岐した毛細血管。 (SSC例の80-90%でこれらパターン)
・初期段階での最も具体的な発見は、拡張した毛細血管所見、 後期段階では、毛細血管の損失が典型的。
・Maricqらの強皮症パターンの定義: 広視野技術(倍率magnification: ×12–14)にて、評価指2/10にて少なくとも2つの確実に拡大した毛細血管所見。 確実に拡大した、とは、少なくとも50ミクロンの先端直径を参照している。
・SSCにて3つの進行度のcapillaroscopicパターン( “早期“、 “活動期“、 ”後期“)が記載
初期パターン: 少数の巨大毛細血管の存在。 毛細血管損失はない。
活動期パターン: 巨大な毛細血管、微小出血、毛細血管消失が混在。
後期パターン: 血管新生存在と毛細血管損失(大規模な無血管領域)。


・爪郭 capillaroscopyにより評価されるSSc患者では毛細血管数の変化(減少)は、臨床的合併症(すなわち、指先潰瘍)を予測する。
・LeRoyとMedsger のSSc早期診断のための2001年基準:  レイノー現象RPと、SSC-固有自己免疫抗体、capillaroscopyでの「強皮症型」変化
・この基準を検証した研究では、5年後に47%、そして15年後に79%でSSC中に進行した。
・自己抗体とcapillaroscopy変化の2つの予測の1つのみが存在する場合には、SSc発症の可能性は<30 %と非常に低い
・2011年にはEULAR強皮症トライアル研究グループ(EUSTAR)によりSSc早期診断のためのVEDOSS基準を発表。 ここではSSc早期診断のための高い臨床的関連性を有する項目として、RP、capillaroscopyで強皮症パターン、抗セントロメア抗体や抗トポイソメラーゼ1抗体陽性とともに、硬化に至る前の指の腫れ(puffy swollen fingers)が入っている。

・強皮症パターンと同様の変化が皮膚筋炎(DM)および多発性筋炎(PM)や混合性結合組織病(MCTD)、オーバーラップ症候群の患者(強皮症スペクトル)などで見られ“強皮症様パターン“と呼ばれている。 (DM患者の60%程度でこのパターン)
・このパターンの主な所見は、 拡大された毛細血管(動脈径、頂端、および静脈径により測定)および無血管分野
・最近の研究は、capillaroscopy所見は、SSCおよびDMの治療効果または内部臓器関与を評価するために有用としている

・全身性エリテマトーデス(SLE)におけるCapillaroscopic知見は上記疾患と比べより特異的ではないが、強皮症および強皮症様capillaroscopicパターンが存在する(SLEではこのパターンは珍しいが。2-15%)。SLEにて頻繁に記載された特定の変化は、毛細血管蛇行、奇異形成性ループ、毛細血長の増加、直径増大、および顕著な乳頭下神経叢。(“SLE型”capillaroscopicパターン)

・Capillaroscopicな変化は、糖尿病や動脈性高血圧症でもみられるが自己免疫疾患でみられるものとは異なる。 
・糖尿病ではその疾患の進行段階までは毛細血管拡張は表示されない。 長期にわたる糖尿病患者では、capillaroscopyで若干の毛細血管拡張とコイル状を示す。 毛細血管密度、動脈肢の直径は正常群と類似。 異常所見は網膜症の程度と相関するとされる。
・糖尿病では、糖尿病性拘縮手症候群diabetic stiff-hand syndrome(手,MP,PIPのこわばり) 、prayer sign(屈曲拘縮)と強指症 sclerodactyly、は一般的な合併症であり、 リウマチ性疾患における同様の徴候と区別されなければならない。capillaroscopic検査はこのような状況で有用であると思われる。


参考文献
<font color="blue">Mod Rheumatol. 2009;19(6):600-5.
Best Pract Res Clin Rheumatol. 2013 Apr;27(2):237-48.
Ann Rheum Dis. 2011 Mar;70(3):476-81.
J Dermatol. 2011 Jan;38(1):66-70.
Dermatol Ther. 2007 Jan-Feb;20(1):17-30.

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