感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

関節リウマチへの私の治療法

2012-09-11 | リウマチ

RA治療の主要学会のリコメンデーションとして2010年EULARと2012年ACRがある。診断から治療薬の選択と変遷について相当詳しいが、解釈にまだかなりの余地がある。文献で“私はこうしている”と具体的な意見があったので読んだ。
ここでお勧めしている治療法は、初期治療としてMTX+プレドニゾンを使用すること。また MTXへの応答を評価し、併用治療戦略へのステップアップを検討する臨界時期として治療開始3か月目に注目している。非薬物療法としての生活指導やリハビリの有用性についても触れている。 
日本ではクロロキンは使えず、MTX25mgまで増量も皮下注も難しいので、やはり生物学的製剤だのみとなりやすそうだが、うまくステロイドやMTX増量法は使いこなしたいところ。



まとめ

・最近では、ACRとEULARが関節リウマチの治療のためのエビデンスに基づく勧告を公開しているが、解釈にかなりの余地がある。関節リウマチの治療と管理に使用するための現実的なアプローチとして機能することを目的に私たちの管理手法について説明する。 

・EULARの関節リウマチ新分類基準は早期診断を容易にし、我々は、疑い患者は紹介から1~2週間以内に"早期関節炎クリニック"の緊急予約枠で診療できるよう提案する。
・RAの活動性評価として、Global Assessment of Disease Activity score、HAQ、VAS、身体診察で圧痛と腫脹関節痛、血清CRP測定を行う。
・複合疾患活動性の指標として、簡易疾病活動指数(SDAI)と臨床疾病活動指数(CDAI)があり、複雑な計算を必要とせず、臨床的寛解のより厳格な定義を提供する。
・パワードップラー超音波検査などにより定義すると、SDAIによる寛解の達成は、関節炎症の真の欠如を意味し、DAS28よりもより正確
・我々は、主に治療反応と寛解を定義(SDAI≤3.3)する際にSDAIを使用する。CDAIは、なんどもCRP濃度の検出不可低値患者に使用( ・ASPIRE試験の関連事後解析では、MTX単独またはIFXと併用いずれにも関わらず、治療14週で寛解の達成(SDAI≤3.3またはCDAI≤2.8)が、1年間でX線写真の非進行の予測因子
・EULARのガイドラインでは、臨床現場でより現実的なターゲットは、低疾患活動性(SDAI<11またはCDAI<10)であること。しかし、我々は寛解ターゲットの無批判な使用は過剰治療と高価で潜在的に危険な生物学的療法による不適切な治療につながるかもしれないことを懸念

・非薬物療法的な考慮: 疾患、自己管理能力の病態生理学的特性に関する患者の教育、関節保護の原則は 改善された健康と身体機能につながる。作業療法は、特に、福祉用具の関節保護と処方についての指示のために有益であり、装具、副木splintsは大幅に機能を改善し、痛みを軽減することができる。活動的な関節リウマチやコントロール不良の炎症の期間中、十分な休養が病気の症状を軽減する。
・有酸素運動と、フィットネスや強度を向上させるレジスタンス・トレーニング・プログレッシブの両方を組み込んだ動的な運動プログラムは、脂肪体重減に有益な利点を持っており、安全

・関節リウマチのMTXの単剤療法のための強力な根拠がある
・米国で行われたTEAR(アーリーアグレッシブ関節リウマチの治療)試験では、TNF阻害薬(エタネルセプト)対従来のDMARDsによる治療も比較しており、初期併用療法にエタネルセプト取り入れの利点をサポートしていません、 なぜならMTX単独療法は不十分な反応の6ヵ月の時点で併用療法にステップアップしているから。MTXに起こりそうな将来の応答性を確実に現在の臨床評価に基づいて予測することはできません。

・我々のアプローチは1 mg /日の葉酸と一緒に、15mg/週の用量でMTXを開始する
・多くの臨床試験では、早期関節リウマチにおいて、高用量プレドニゾン療法の有益な利点を報告している。
・COBRAとBeSt試験ではDMARDsとの併用で、高用量の経口プレドニゾン療法(60 mg開始、6週で7.5 mgまでに減量、12週後に停止)で大幅に画像上の関節破壊進行を抑制し、この効果は長年にわたって持続した
・低用量経口プレドニゾン療法(5-10 mg /日)の疾患修飾性と骨びらん進行抑制の証拠によって支持されているプレドニゾンの使用法という私たちのアプローチは、最小限のコルチコステロイド関連の副作用で、少なくとも2年間持続します。私たちの推薦は6ヶ月~1年は5mg/ dでプレドニゾンを継続させること、そして徐々に2~4週間毎に1mgの漸減をする。 2年を超えての使用継続は白内障や骨粗鬆症などリスクが上回るので中止されるべきである。

・TICORAやBeST試験の知見に基づいて、低疾患活動は、早期関節リウマチにおける重要な治療標的として確立されている。 3ヶ月目で低疾患活動性または寛解にある患者の75%以上が、 1年目で寛解の状態にある。1年目で達成する臨床的寛解の確率を評価するために、治療開始3ヶ月が最も有用な時期であるというのが私たちの見解である。

・私たちは3ヶ月で中等度・高度疾患活動性を有する患者に対して別の治療勧告をする。
・BeSTとSWEFOT試験の結果は、これらではスルファサラジン(SSZ)とヒドロキシクロロキン(HCQ)を使用したステップアップ治療は、TNF阻害剤の添加よりも劣っていることを示している。 対照的に、TEAR試験の結果は、SSZとHCQの使用のステップアップ治療は臨床反応および放射線成果の両方でステップアップ・エタネルセプト療法に匹敵する効果があることを示唆
・私たちは3ヶ月で、このグループ内のより保守的な治療法の変更を提唱する。オプションとしては、25mg/週に経口MTXの投与量を増加、または 皮下注MTXに切り替えさらにSSZとHCQを追加(3剤併用療法)、 と あまり一般的ではないが、レフルノミドを追加
・3ヶ月で高度疾患活動性の患者では(SDAI> 26またはCDAI> 22)、ステップアップ治療のための生物学的製剤(TNF阻害薬やアバタセプト)の修飾をお勧めする

・1年で寛解を達成しなかったFIN-RACO試験に参加した患者は寛解を達成した患者よりも、その後の十年間の骨びらんの進行の実質的に高い割合を経験した
・我々のやり方では、6~12ヵ月の時点でSDAI>11(CDAI> 10)を有する患者において治療が増強される
・MTX単剤療法の患者では、トリプルDMARD療法のSSZとHCQを加えるか、またはTNF阻害薬かアバタセプトを添加、と治療が増強されるべき
・すでにMTXに生物学的療法(TNF阻害剤またはアバタセプトのいずれか)の併用が投与されている患者では、代替の生物学的製剤にて治療をする必要がある。TNF阻害薬から別のTNF阻害薬へ切り替えるより別機序の生物学的製剤に切り替えるほうが有益。
・2年目になっても中等度から高活動性の患者は、治療強化への継続的努力を勧める。この時点では、MTXの投与量は20~25mg/週または最大耐用用量に増やす必要があり、その後、皮下、非経口投与に切り替える。単一の孤立した関節の炎症活性を有する患者は、局所関節内グルココルチコイド注射を受ける必要がある。


参考
Mayo Clin Proc 87(7):659-73 2012


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。