感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

アトバコン(サムチレールR)

2013-04-21 | 感染症

関節リウマチ患者で急性の間質性肺炎像をきたして入院中の方、MTX肺炎もしくはニューモシスチス肺炎と考え検査治療中。血清βDグルカンが相当高値で後者を考えており、高容量ST合剤を開始したが発疹がでてアトバコンに切り替えたら徐々に血清Cre値上昇があった。切り替え前のST合剤によるものをまず考えているがアトバコンについておさらいした。


Antimicrob Agents Chemother. 2002 May; 46(5): 1163–1173.
Antiparasitic Agent Atovaquone
Aaron L. Baggish and David R. Hill


要約
・アトバコンは広域スペクトル抗原虫活性を持つ独特なナフトキノン
・ニューモシスチスカリニ肺炎(PCP)の治療および予防、マラリアの治療および予防(プログアニルとの併用で)、バベシア症の治療(アジスロマイシンと併用)のため有効である
・マラリア及びPCP治療などで既存薬での薬剤耐性や不耐性副作用、変動する効能などから、この薬の役割が見出されてきた
・この薬の抗菌活性は50年以上前に知られていたが、FDA指導の臨床試験の大部分と承認はここ10年に多くなされている

・アトバコン(566C80)、ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンは、抗原虫薬ユビキノンの構造類似体の、ミトコンドリアタンパク質で、電子伝達系に関与する
・アトバコンは、シトラス風味の液体懸濁液の中の黄色の結晶性固体で市販(アトバコン750 mg /5ml)
・有意な脂肪含有食品の摂取時、血液中アトバコン濃度は倍になり、 750~1,500 mgの用量で、15~30μg/ mlの定常状態濃度に達する
・相互作用では、リファンピンと同時投与でアトバコン濃度が40~50%減、テトラサイクリンと与えられたとき濃度の40%減あり(しかしテトラサイクリンとは、相乗効果、熱帯熱マラリアへの臨床効果の報告あり)。ジドブジンのAUCを約33%増(併用時のジドブジンの追加毒性に注意)。
・代謝は有意な肝代謝や腎排泄なく、94%以上が3週間に渡り便中排泄される

・単剤としてのアトバコンは、比較的良好な副作用プロファイルを有する。 一般に、ST合剤、ペンタミジン静注、またはダプソンよりもより少ない副作用。 頻繁に報告された副作用は、斑点状丘疹、吐き気や下痢、頭痛などで投与者の10-35%。肝臓酵素レベルの上昇も報告。 骨髄抑制は発生しない。腸管細菌叢に影響は与えない。

・PCPの予防および治療のための第一選択薬はST合剤であり他の薬剤より優れた効果が実証されているが、多くの患者で発疹、腎機能障害、肝炎、および骨髄抑制などをきたし治療を限定する。
・PCPへのSTの代替薬としては、 一次及び二次予防のために使用される薬剤はダプソン±ピリメタミン、エアロゾル化ペンタミジン、アトバコン、である。 治療に使用される薬剤は、静脈ペンタミジン、クリンダマイシン+プリマキン、 ダプソン+トリメトプリム、アトバコン、である

・Falloonらは、750㎎の経口アトバコン(錠剤)2~4回/日を21日間は、軽症から中等症PCP(動脈血酸素分圧≥60mmHg)の34名の成人エイズ患者の79%に治療成功を示した。忍容性は良好であった。1992年のFDA承認のあとの2件のランダム化比較試験でも有効性が実証された。 
・軽症-中等症PCPでST合剤との比較試験では、アトバコンはわずかに少ない効果(治療失敗 アトバコン20%、ST7%)しかし忍容性は良好(治療変更 アトバコン7%、ST20%)
・重要な発見は血液中アトバコン濃度と治療成功との相関で、濃度≥15μg/mlの98%、濃度<15μg/mlの66%、において治療成功と相関していた。
・軽症PCPへの静注ペンタミジンとの比較試験では、治療反応しなかった患者がやや多い(アトバコン29%、ペンタミジン17%)しかし治療を制限する副作用はペンタミジンで多かった(アトバコン4%、ペンタミジン36%)
・PCP予防での比較試験では、ダプソンとの比較、エアロゾルペンタミジンと比較、があり、同様の効果であった。後者ではアトバコンのほうが忍容性は良好でなかった。

・アトバコンは重症PCPで研究されていないので、それは軽度から中等度の患者に限定すべき(動脈血酸素分圧≤45mmHgまたは肺胞-動脈血酸素勾配≥60mmHg)。

・エイズ患者のCNSトキソプラズマ症の治療および予防でのアトバコンの役割は十分に定まっていない。 トキソプラズマ症の治療または予防のためのアトバコンを使用する際に一部の専門家はピリメタミンを追加する。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。