感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

マイコプラズマ感染と関節炎

2012-12-06 | 免疫
中年女性で、2週間以上続く右足関節痛と足背に紅斑(圧痛伴う)が出現し、近医より当科へご紹介いただきました。期間中特に感冒症状や熱はなかったとのこと。急性の単関節炎と紅斑であり、感染関連も考慮し各種検査をしました。 血清マイコプラズマ迅速検査が陽性で、一応この疾患を考えAZMで治療中です。 (ペア抗体変化など確認はこれから)

文献的考察を行いました。

教科書では、
多関節痛は、M.pneumoniaでは一般的だが、単関節痛や回帰性関節炎は稀。免疫メカニズムが仮定されているが、関節液からM. pneumoniaeの分離の報告は少ない。報告例のいくつかは低ガンマグロブリン血症の患者で報告。
(Goldman's Cecil Medicine, 24th ed.)

医中誌検索では近年でも、マイコプラズマ感染と単関節炎・結節性紅斑発生の報告あり。

・左足関節炎と両側下肢の結節性紅斑(生検でseptal panniculitis)の6歳男児例(日本小児科学会雑誌114(10):1557-61:2010)の報告あり。M抗体価のペアでの上昇で診断、CAMで症状は軽快。

・マイコプラズマ感染に関連した反応性股関節炎の12歳男児例(旭川厚生病院医誌 18(1):30-33:2008) 、M迅速抗体陽性、間接凝集反応で抗体価の上昇で診断、CAMで症状は軽快。

・マイコプラズマ感染によると思われる関節炎4症例の検討報告(Pediatrics International 50(4):511-3:2008) M迅速検査陽性のうち関節炎4例、うち関節US検査で2症例で所見あり。4例中肺炎例は1例のみ。

・マイコプラズマ感染によると思われる関節炎5症例の検討報告(日本マイコプラズマ学会雑誌 32:31-3:2005)

どうもM. pneumoniaeの感染例でも肺炎像を伴わず、単関節炎のみの例もあるようだ。やはりCAMなどの抗菌薬が奏効し関節炎はよくなる。

感染症に伴う関節炎は反応性関節炎ReAや感染症後関節炎post-infectious arthritis などがいわれている。
M. pneumoniaeのRNA遺伝子がリウマチや非リウマチ関節炎患者の関節滑液から証明されたとする報告も(J Clin Microbiol. 2007 March; 45(3): 953–957.)結構あり、関節腔内に病原体が証明されるのが感染症後関節炎とされているから、M. pneumoniae関連関節炎はこのタイプということか。 また慢性関節炎やRA発症などにもマイコプラズマが関わるとする説もある。

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