感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

結節性多発動脈炎と腹部造影CT所見

2014-06-12 | 免疫

神経内科よりDropFoot症状の精査にて腓骨神経の単神経炎を疑われ血管炎の精査依頼にて当科に紹介がありました。血清ANCA検査は陰性、尿検査で異常所見は乏しく、足に凍瘡様病変はあったのですが、生検では異常が出ず診断に困っていました。しかし、造影CT検査で、腎臓や肝臓に微小動脈瘤所見がみられ、濃厚に結節性多発動脈炎(PN)が疑われました。もとよりPNは診断のしにくい疾患の一つです。PANの診断と画像所見についてまとめてみました。


まとめ

・結節性多発動脈炎(PN)は、中•小動脈の全身性壊死性血管炎である
・最も一般的な臨床症状は、持続性の発熱、体重減少、多関節痛で これらは非特異的である
・PNは任意の臓器器官に罹患しうるが、関節、筋肉、末梢神経、胃腸管、および皮膚におこしやすい。
・PNのさまざまな変化の兆候および症状は、血管炎症の拡散と結果としての罹患臓器の虚血に主に起因している
・診断は、理想的には関与する組織の生検によって行われる、しかし組織生検はしばしば診断確認に失敗する
・筋肉および皮膚が生検のための主要部位として提唱されてきたが、20%~35%の陽性結果が得られるのみ

・PNを診断するための血管造影の価値は、多くの研究で報告され、最もよく知られている血管造影特徴は中型または小動脈における微小動脈瘤の存在である。そのほかに分節性またはびまん性狭窄、動脈血栓症および閉塞を含む。

・腎臓は、最も一般的に関与する病変(80~100%)、次いで心臓(70%まで)、胃腸管(50~70%)、肝臓(50~60%)、脾臓(45%)、および膵臓(25~35%)
・PNにて記載される腎臓の2つの特徴的な病変は動脈炎と糸球体炎で、個別に、または一緒に発生しうる。
・腎動脈炎は、主に弓状動脈を含みフィブリノイド壊死や血管の血栓症で構成される。
・腎の造影CTで複数の小さな楔形のより造影の少ない領域が認められ、これらは葉間動脈と弓状動脈の血管炎による複数の両側腎皮質梗塞であると考えられている。
・Gerota’s筋膜のわずかな肥厚、 腎周囲脂肪線、 皮質と髄質の間のマージンの不明瞭は、 非特異的炎症性変化を反映しみられる
・PNでは微小動脈瘤が時々観察され、動脈瘤は、血管壁の巣状壊死の結果として形成される。時折動脈瘤は破裂させ腎周囲血腫や後腹膜出血を起こす。
・しかし動脈瘤を除いたこれらの腎臓所見は、腎盂腎炎にも類似して非特異的であり、誤診される可能性がある。
・Wongらは腎盂腎炎と区別する腎梗塞での最良の鑑別CTの所見は、皮質リムサインcortical rim signの所見だったと報告。しかし小梗塞では常に実証されるわけではない。
・微小動脈瘤がCTで検出された場合、PNは容易に疑われる。しかしより小さく、少ない微小動脈瘤はCTで立証することは困難である。またさらにMRイメージングは、空間分解能の点でCTに劣っている。CTは微小動脈瘤を実証するために推奨されるべき。
・3D-CTAの診断精度については、Korogiらは従来の血管造影法と3D-CTAとを比較し、3mm以上の直径を有する頭蓋内動脈瘤の検出のための感度は従来の血管造影法と比較して3D-CTAで83%以上であったことを報告。動脈瘤の直径が3mm未満である場合、従来の血管造影と比較して 3D-CTAでの検出感度は63%。
・一般的にPNに影響を受けた筋の中型動脈の直径が2mm以上とされる。3D-CTAはPNの血管炎病変の大部分を示すのに適切であると考えられる。
・血管造影では、結節性多発動脈炎の患者の典型的な動脈瘤は2~5mmであり、それは複数個(≥ 10)ある。多くの動脈瘤の存在(> 30)は、それ自体がほぼPNに診断的である。
・さらに肝臓に微小動脈瘤をみるなど他の内臓関与の場合は、PN診断は容易となる。

・しかし、腎臓の微小動脈瘤がPNに固有ではないことに留意するべき。他の全身性壊死性血管炎、薬物乱用、および細菌性心内膜炎にてもみられうる。
・またウェゲナー肉芽腫症および全身性エリテマトーデスなどの他の脈管炎もまた、結節性多発動脈炎と同様の複数の瘤を有することが文献に報告されている。
・さらに、複数の小動脈瘤は、外傷、感染性動脈炎、線維筋性異形成、およびウイルス感染後に肝臓で見られる
・線維筋性異形成Fibromuscular dysplasiaは、血管造影所見に動脈瘤がみられる疾患の一つとして重要な鑑別診断である(この疾患では
“string-of-beads数珠状”外観も特徴)

・よって小型の動脈瘤も含めて血管造影所見は結節性多発動脈炎に特異的なわけではない。
・一方、臨床基準の診断的収率は高い。ACRによって提案(Arthritis Rheum 1990;33:1088-93.)された10の臨床基準のうち3つ以上の存在は、82.2%の感度および86.6%の特異性を有している。臨床データがそれをサポートしている場合、動脈瘤の血管造影所見の特異性は非常に高くなる。 このような状況では、多くの臨床医は生検を控える。

・我々は常に、両側の腎臓における複数の小さなくさび形の弱造影領域の知見からPNも考慮する必要がある。
・また診断を行うために、臨床症状、検査データ、尿検査、および抗生物質の有効性を参照する必要がある。(腎盂腎炎を除外するため)
・未治療の場合、PNは進行性腎不全や消化管合併症の結果として、通常は致命的である



参考文献

Abdom Imaging. 2009 Mar-Apr;34(2):265-70.

Clin Rheumatol. 2005 Nov;24(6):628-31.

AJR Am J Roentgenol. 2000 Jun;174(6):1675-9.


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。