感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

抗TNF阻害剤と感染症:リスクプロファイルに基づく予想感染率の算出

2014-02-19 | 免疫
前回の続きで、生物学的製剤による重篤な感染症発生の危険性について。 ドイツの大規模な抗TNF製剤の臨床試験のレジスタを使用したもの。結果は感染症粗率は2-3年目よりBio使用初年に高かった。TNF阻害剤よりも高用量ステロイドのほうがリスクが高い。 リスクプロファイルに応じて、個々の患者のため重篤な感染症の予測される発生率の計算ができる。高年齢、慢性肺疾患または慢性腎疾患など合併症、または重篤な感染症歴の危険因子と、抗TNF、DMARD、グルココルチコイド投与量の薬剤情報により感染症発生率は分かる、というもの。リスク因子の相加的な追加で感染症発生率がどんどん増える様子がよく分かる。


Ann Rheum Dis. 2011 Nov;70(11):1914-20.

・従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)療法と比較して抗TNF療法による重篤な感染症の増加率は、RCTメタ分析や特許データ、観測データなどでみられた、しかし他ではこれと対照的な結果であった。TNF阻害剤で治療した患者の経時的な感染リスクの減少を報告した。そしてリスクが、治療の最初の数ヶ月間だけ増加されているのか否かの疑問が提議された。

・方法
・RA患者でTNFα阻害剤によっておこされる重篤な感染の危険性を調べるため
・データはドイツの生物製剤レジスタRABBITに登録されたRAを有する患者。2001年5月1日と2006年12月31日の間に治療開始。前向きコホート研究。

・結果
・5044人の患者がこの研究のための選択基準を満たした。平均追跡期間は2.6年。
・重篤な感染症の粗率は、TNF阻害剤で治療された患者では初年から、2年目および3年目に大幅に減少した(4.8→3.2→2.2 /100患者•年)。一方で、これらの率はDMARD治療患者コホートで一定していた。

・良好な身体機能状態はリスクを低減し、一方、高齢、慢性肺疾患、慢性腎疾患および以前の治療の失敗数が多い、はリスクを増加させた。リスクが有意で治療した患者で増加したのは、
≥ 15 mg /日のグルココルチコイド (IRR = 4.7) 
7.5-14mg/日のグルココルチコイド (IRR = 2.1)
 TNF阻害剤治療患者 (IRR= 1.8)
・より低用量のグルココルチコイド (IRR=1.1 (0.8; 1.7))治療、他の併存状態 (例えば、糖尿病、IRR=1.3 (0.8; 2.0))の患者では リスクの有意な増加は認められなかった
・ 感染率は、危険因子(高年齢、慢性肺疾患または慢性腎疾患など合併症、または重篤な感染症歴)の1つ、2つまたは3つを有する場合にリスクが増大する。
・感染の危険性は、抗TNF及びDMARD治療群の両方の危険因子の数およびグルココルチコイドの投与量で増加する。

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