感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

侵襲性 Streptococcus anginosus群感染症

2017-03-16 | 感染症
前回の続きで脾膿瘍の症例では血液培養からStreptococcus intermediusが検出されました。臨床診断ありその後培養結果が出た場合はその菌の特徴と臨床状況が合うのかを振り返ると共に、他に予想される合併感染症を検討し検索しないといけません。anginosus群(SAG)の感染症についてまとめました。   まとめ     & . . . 本文を読む

脾膿瘍について

2017-03-09 | 感染症
左胸水、胸膜炎疑いにて当院呼吸器科に紹介され、CT検査にて脾膿瘍が疑われた例。外科に入院となり当科に診療相談ありました。背景基礎疾患の検索をどうするか、起炎菌はどんなものがあるか、治療方針は?   まとめ ・脾臓は微生物および粒子状物質の有効なフィルターであり、脾膿瘍の発生率が非常に低いことから分かるように、感染に対しては非常に強い。 ・脾膿瘍はまれな存在であり、報告頻度は0.0 . . . 本文を読む

両側性急性非閉塞性腎盂腎炎について

2017-03-04 | 感染症
背景にHCV感染とHCCのある方の、発熱、白血球増多、画像で両側腎の腫大あり両側性腎盂腎炎疑いとのことで当科に相談がありました。血液培養ではグラム陰性菌が生えつつあるとのこと。たいていは腎盂腎炎は片側なので両側性ということがあるのか文献で調べました。気腫性腎盂腎炎emphysematous pyelonephritis (EPN)でとりわけ糖尿病背景で発生し、両側性となる率もでてくるようですが、本 . . . 本文を読む

関節リウマチ薬と授乳

2017-03-02 | リウマチ
以前このブログで「関節リウマチと妊娠」として主に関節リウマチの薬と妊娠についてまとめました。 若い女性もかかる疾患ですので、リウマチ治療を続けながら無事出産され育児をされることもあります。たいていはすぐに断乳され人工ミルクで育てながらMTX内服等を再開することも多いのですが、最近、授乳を続けながらRA治療も続けたいとの希望がありました。現在はステロイドのみですが、どのようにしていけばいいのでしょ . . . 本文を読む

直接クームスで抗IgG陰性の温式自己免疫性溶血性貧血

2017-01-26 | 免疫
前回の続きです。寒冷凝集素の検査結果は4倍(正常256倍未満)と増加なく寒冷凝集素症はなさそうで、Donath-Landsteinerテストも院内で行いましたが結果は陰性で発作性寒冷血色素尿症も考えにくいようです。症例は直接クームステスト(DAT)では抗C3およびポリ特異的試薬で陽性、抗IgGで陰性でしたが、温式AIHAといえるのでしょうか。 自己免疫性溶血性貧血 診療の参照ガイド(H26年度改 . . . 本文を読む

寒冷凝集素症について

2017-01-24 | 免疫
前回の続きです。症例では過去に報告されたような溶血性貧血をきたしうる薬剤使用歴はなく、また直接クームステスト(DAT)が陽性の結果であり自己免疫性溶血性貧血が疑われました。さらに、抗C3およびポリ特異的試薬を用いたDAT陽性で、抗IgGを用いた試験では陰性で温式よりは冷式AIHAが疑われました。これには、CAS (寒冷赤血球凝集素症)と発作性寒冷血色素尿症(PCH)があります。PCHはほとんど小児 . . . 本文を読む

薬物誘発性溶血性貧血

2017-01-17 | 免疫
発熱や血尿などをきたし近医で感染症として治療されていた方が重度の貧血をきたし当院救急に紹介されました。消化管出血はなさそうであり、ビリルビン、LDH、ハプトグロビン値などから溶血性貧血が疑われました。原因の鑑別は、感染症、自己免疫疾患、血液疾患、薬剤と多岐にわたるため当科に相談されました。近医から胃腸薬や抗菌薬の処方歴もあり、溶血性貧血の鑑別診断を始めるにあたり諸文献から薬剤性の溶血性貧血について . . . 本文を読む

薬剤誘発性高血圧症

2016-11-10 | 内科
TAFRO症候群に対してステロイド単独療法では効果不十分で免疫抑制剤のシクロスポリンを併用開始したところ病態は改善しました。その後徐々に血圧が高くなり、これまでは高血圧の指摘もなかったことから、薬剤性を疑いました。ステロイドによる血圧上昇もよく知られていますが、そのタイミングからはシクロスポリンからの可能性が高そうです。これら薬剤による高血圧症の特徴はどうなのでしょうか。各文献からまとめました。 . . . 本文を読む

無菌性髄膜炎をきたす疾患

2016-11-02 | 免疫
総合内科入院の方で意識レベル低下、髄液細胞数増加あり検索中、基礎疾患に長年の関節リウマチがあったため当科に相談がありました。髄液は単核球優位で、グラム染色や培養で菌検出なく、無菌性髄膜炎疑いです。どんな鑑別リストになるのでしょうか。ごく稀なようですが‘リウマチ性髄膜炎‘というのもあるようです。   まとめ   ・用語「無菌性髄膜炎」とは脳脊髄液( . . . 本文を読む

ANCA関連血管炎の管理のためのEULAR / ERA-EDTAリコメンデーション2016

2016-10-27 | 免疫
当科でも、ANCA関連血管炎すなわち、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症をみる機会が増えてきました。これまでにもANCA関連血管炎についていろいろブログに取り上げてきました。 「ANCA関連血管炎への診断的アプローチ」では生検による病理診断を重視すること、「不明熱精査中にANCA検査陽性をみたとき」ではANCA検査の適正使用について、「ANCA値を血管炎の活動 . . . 本文を読む

キャッスルマン病とその周辺

2016-10-20 | 免疫
不明熱の診療をやっておりますと、ごくまれにキャッスルマン病にあたることがあります。原因不明の発熱・炎症の状態で、局所の腫脹リンパ節を生検して診断がついたり、またPOEMS症候群など臨床的に疑ったうえでリンパ節生検をしたりすることがパターンかと思います。今回は不明熱例で、肝脾腫、肝腎障害、血小板減少症、腹水、などからTAFRO症候群を疑い、リンパ節生検と骨髄生検を施行後診断確定にいたった例がありまし . . . 本文を読む

自己免疫疾患関連血球貪食症候群

2016-10-13 | 免疫
久々にブログの更新です。その間もいろいろ臨床的な疑問と興味深い知見はあったのですが、なかなかブログ記事が書けませんでした。家族に重大な病気が見つかり時間的にも心身的にも大変でした。また久しぶりの学会発表もあり準備にも追われました。 今回は自己免疫疾患関連血球貪食症候群についてまとめました。不明熱例の一部に血球減少や血清フェリチン値上昇などから血球貪食症候群を疑い骨髄穿刺検査をすることがあります。 . . . 本文を読む

白血球増加をきたす病態

2016-07-27 | 内科
総合内科からの相談例で、ALSにて長期人工呼吸中の方の、数日の食思不振/絶食後、アシドーシスの進行、白血球増多にて入院され、著明な白血球数の増加あり(WBC数3万台)その病態を検討しています。もともと糖尿病はなく入院後経過からもDKAは考えにくく、入院時血液ガスから乳酸値増加なく、しかしAG開大あり、飢餓によるケトアシドーシスが考えられました。発熱やCRP上昇伴わず、前後に感染症徴候なく感染症によ . . . 本文を読む

好酸球性膀胱炎の症例

2016-07-11 | 免疫
膀胱内腫瘤形成あり当院泌尿器科に通院検査中の方が、生検の病理で悪性所見なくなんらかの感染か炎症性疾患による反応ではないかと、当科に相談がありました。抗酸菌検査やANCA検査なども陰性のようです。よくみると末梢血白血球分画で好酸球の割合が増加していました。SRLでの抗寄生虫スクリーニング検査は陰性で、病理に再度組織の見直しをお願いし、膀胱壁に浸潤している炎症細胞は好酸球が主体であることが分かりました . . . 本文を読む

食中毒やその関連病態について

2016-06-30 | 感染症
週間日本医亊新報の最新号(No.4809. 2016年6月25日)は特集が「増加する食中毒の傾向と対策」で、その中で、高齢者・免疫不全者などでの食中毒への対応 について執筆いたしました。そのため相当数の文献を読んだのですが、膨大な量ですべて記事にならず割愛しています。今回は調べた文献より 高齢者や基礎疾患のある方の夏場の食中毒やその関連病態について情報提供します。   まとめ &n . . . 本文を読む