今日は母の日です。
このまえ小手鞠萌さんから、こんなコメントを頂きました。>そういえば、そろそろ母の日ですね。
シムネルケーキの話はどーでしょーか?「しむねるけーき…?」
浅学にして初耳のわたくしは、さっそくネットで検索。カチャカチャ。
(あー、怖いくらい便利な時代だ…)
ヒットしたこちらの記事 (a+ discovery vol.2) で、シムネルケーキと母の日をつなぐエピソード読んで、すっ . . . 本文を読む
谷崎潤一郎の傑作女中さん列伝『台所太平記』
小手鞠萌さんが「日本文学の使用人」としてコメント欄でご紹介してくださった小説です。
読みました。ありがとうございます。ほんとに面白かった。あー。
次々と個性的な女中さんたちが登場して、彼女らの突飛なふるまいに「ふふ…」と笑い声を漏らすこと、たびたびでした。
が、今回はその面白さを伝えたいワケじゃない。
小説の中でカルチャーショックを受けた箇所があるん . . . 本文を読む
先日、桜井さんと仰る方からこんなコメントを頂きました。
>ところで、西洋には召使いが主役級で登場し、その生活描写の活き活きと詳しい文学作品や資料がたくさんあるようですが、日本の方でそのような作品等はご存じないでしょうか?
>私は日本の下男下女というと、樋口一葉の『大つごもり』のような奉公の身の辛さを一人嘆く姿が一番に思い浮かぶので、
もっと要領のいい、大胆な召使いが日本にはいないものか・・と . . . 本文を読む
御主人の呼んだ当人がその場に居ない時は誰も返事などせぬこと。お代りを勤めたりしていてはきりがない。呼ばれた当人が呼ばれた時に来ればそれで十分と御主人自身認めている。最初の1ページ目、のっけからこの調子です。
召使たちへの教えを説いたスウィフト作『奴婢訓』。
人を食ったような文章。皮肉まじりで、冷やか。
スウィフト節は、まだまだ続く。
自分が雇われている当面の仕事以外には指一本動かしてはならない。 . . . 本文を読む
『ブランディングズ城の夏の稲妻』
国書刊行会のウッドハウス本の新シリーズ第一弾ですね。
が“ジーヴスもの”なら、こちらはそれと並び称される“ブランディングズ城もの”
ブランディングズ城の城主・エムズワース卿のお頭のトロけっぷりが冴えわたっています。(←文法的に矛盾。が、意味的にはこの通りなのです)
たとえば、お茶の時間に現れたエムズワース卿のセリフ。
「あぁ、お茶? お茶か? へ? ほ、お茶じ . . . 本文を読む
こうして様々な作品の召使いたちの後を追っかけていると、
「19-20世紀の英国人の主人(とくに貴族)は、どうやって使用人の目からプライバシーを守るのかしらん?」と思うこともしばしば。
生れた時から大勢の召使いたちにかしずかれ、入浴時のすっぽんぽんを見られても平気、壁際のフットマンなんて装飾棚と同じ…だとしても、他人に知られたくない秘密ってのはあるでしょう、やっぱり。
ですが、他人の家庭の中で立 . . . 本文を読む
四回に分けて…と言いながら五回になってしまったこのシリーズ。
今回が最終章です。やっと本題に戻りました。
問題の、
「ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウンが、自身の破滅を招いてしまった原因とは?」
答えは…
「ジョン・ブラウンが厳格な召使の階級を無視してしまったから」
だと思います。私は。
映画『クイーン・ヴィクトリア 至上の恋』(原題:『Mrs. Brown』)には、
ジョン・ブラウンが召 . . . 本文を読む
さて前回ブログ
ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウン(2) 召使の階級②の続きです。
今回は召使たちの階級がひと目で判る食卓での席順について。
その前に、召使たちが食事をする部屋サーヴァント・ホール(servant hall)について簡単にご説明しましょう。
召使が一同に会するサーヴァント・ホール。
サーヴァント・ホールは屋内スタッフが食事をしたり、しばしの休憩を楽しむ(そんな暇があった . . . 本文を読む
さて前回ブログ、
ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウン 召使の階級①のつづきです。
今回は「ロワー・ファイヴ」「および屋外の召使い」の説明です。
繰り返しますが、下の召使階級組織図と照らし合わせながら読むと、分かりやすいかと思います。
また、★印のついた召使は「大規模な館で雇われた召使い」です。なので★印の召使いが居ない館では、その階級に近い召使が仕事を兼任しました。
召使いの階級組織図
. . . 本文を読む
さて、前回ブログ
ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウン(1) 無骨な従僕の続きです。
ジョン・ブラウンが身の破滅を招く原因ともなった、厳格なる召使の階級について。
召使社会の全盛期であった、19世紀のイギリス。
大勢の使用人を抱える館では、召使いたちの仕事は細分化され、各部署に課せられた分担業務に従事していました。
館の運営には、組織化された命令系統をもたなければ、一家の主人の命令をすべての使 . . . 本文を読む
英国貴族に仕える執事や従僕たちは、
貴族の敬称をとうぜん心得ておかなくてはなりません。
ディナーの訪問に来られたさる公爵のお出迎えに、“Sir(サー)”なんて呼びかけようものなら、召使の雇い主の品格さえ疑われてしまうことでしょう。
そうはいっても、これがまたややこしいのです。貴族の敬称というのは。
ひとくちに「貴族」といっても、その中には厳然たる階級があり、
呼びかけ方もそれぞれに違っているか . . . 本文を読む
前のブログで、俳優ロバート・デニーロ家のメイドが、
デニーロ夫人の宝石を盗んで解雇された記事を紹介しました。
その記事はこちら。
俳優ロバート・デニーロの執事、解雇される
この事件を知ったとき、とっても不謹慎なのですが、
ワクワクしてしまいました。
「へぇー、21世紀の現在でも、召使いって盗みをするんだなー!」
というのも、いまから200年ほど前、
19世紀が舞台の小説には
主人の持ち物を . . . 本文を読む
今回は、召使いを雇う側、女主人の視点を語ります。
取り上げる作品は『レベッカ』です。
ヒッチコック監督で映画化もされてますね。
郊外の カントリー・ハウス、マンダレイ館を舞台にしたサスペンス・ドラマ。
モンテカルロである夫人に仕えていた若い娘“わたし”は、英国紳士デ・ウィンター氏に見初められ、後妻としてマンダレイ館に入った。
優雅な生活を夢見ていた“わたし”であったが、美貌と才智で人々を魅 . . . 本文を読む