おたがいさま
S夫人が小間使いのブリジットに言った。
「ブリジット、あそこにいるのがゲイバー夫人だったら、私は入らないわ」
確かめに行ったブリジッドはもどってきて、
「やはりそうでした、奥さま。あのかたもそれを聞いてたいへん喜んでいらっしゃいました」
それは危険
ピエールが、ご機嫌で深夜の帰宅をした。女中のマリーが、まだ起きていて、
「旦那さま、シャツのえりに口紅のあとがついております」と教えた . . . 本文を読む
小説『ウッツ男爵』より。女中マルタは主人ウッツ男爵を「神のごとく」敬愛している。ふたりの主従関係には、主人と召使いである以上に「創造主と被創造物」のつながりがあった。 . . . 本文を読む
本日の召使 : さと(入江家の女中)
太宰 治 『ろまん燈籠』新潮文庫(平成10年発行)より
太宰治の描く登場人物は、どれも、どこかしら太宰本人に似ている。
「ろまん燈籠」の主人公である五人の兄妹は、それぞれまったく違う性格の持ち主。けれど読めばすぐに、作者の性格のさまざまな側面を、兄妹が分担して受け持っているのだと分かる。
―兄妹、五人あって、みんなロマンスが好きだった。
(「ろまん燈籠 . . . 本文を読む
さて、やっと小説『パミラ』のつづきです。
『パミラ』がイギリス小説の始祖であり、書簡体で書かれていて、
主人公が小間使いであることは、前回の記事でご紹介しました。
(もっと詳しく知りたい方はこちら↓をどうぞ。)
■過去記事イギリス小説は召使から始まった。
ここでちょっと、補足です。
『パミラ』に対する、18世紀当時の読者の反応について。
David Lodge著The Art of Fict . . . 本文を読む
引き続き、
『イギリスのある女中の生涯』より、
前回ブログの続きです。
予告のとおり今回は、
等身大の女中から見た、執事の姿がテーマです。
過酷な労働に耐える女中ウィニフレッドの目には、
上司である執事はどのように映ったのか?
まず初めにお答えしますと、彼女は、執事が大っ嫌いだったようです。
「いわゆる『偉い使用人』を、私は軽蔑していました。」
第一次世界大戦終結後、20歳になったウィ . . . 本文を読む
本日の召使 : ウィニフレッド(女中)
(『イギリスのある女中の生涯』シルヴィア・マーロウ著 徳岡孝夫訳 草思社 1994より)
現在の日本で「女中」は差別語です。
しかし、差別語だからといって、簡単に「お手伝い」や「メイド」などの言葉に置き換えてられるものでもありません。(とくに「メイドさん」においては、と強調してみる。)
「女中」には「女中」と呼ぶしかほかに当てはまらない、言葉のイメージが . . . 本文を読む
本日の召使 : お初(奥女中)
(『鏡山旧錦絵』歌舞伎オンステージ6 白水社 1996年より)
外国の召使が続いたので、たまには日本の召使をご紹介。
歌舞伎『『鏡山旧錦絵』(かがみやまこきょうのにしきえ)』に登場の
女中、お初です。
主人の敵を討つ女中!
『鏡山旧錦絵』は、大奥のいじめ社会とお家騒動を取り合わせた作品です。
まさにフジテレビのドラマ『大奥』の世界、
もしくは菊池寛原作の昼ド . . . 本文を読む
本日の召使 : モニカ・ディケンズ(コック・ジェネラル)
『なんとかしなくちゃ』(晶文社 文学のおくりもの24 1993年 原題:One Pair Of Hands)より
『なんとかしなくちゃ』
「私は退屈していた。」
「決まりきった生活から抜け出すためになんとかしなくちゃ。」
1937年イギリス。著者のモニカ・ディケンズは22才。
とくに暮らし向きに困っているわけでもないモニカが選 . . . 本文を読む
前回の映画「ゴスフォード・パーク」につづいて、
登場するメイドについて、すこし。
ゴスフォード・パークを訪れたトレンサム伯爵夫人の侍女(lady’s maid)
メアリーは、屋敷のメイド頭のエルシーと同室となります。
身支度を終えたメアリーの姿を見て、エルシーが訊きます。
「エプロンを着けるの?」
メアリーは、こう答えます。
「奥様が “以前使ってたフランス人メイドのように” と」
19世紀イ . . . 本文を読む
本日の召使 : ミセス・ウィルソン(ハウス・キーパー)
映画「ゴスフォード・パーク」より
「ゴスフォード・パーク」
召使い好きなら、この映画は避けて通れないでしょう。
階上(upstairs)の貴族たちと、階下(below stairs)の使用人たち。
この両極の社会がひとつ屋根のもと、
イギリス郊外のカントリー・ハウス「ゴスフォード・パーク」を舞台に
きめ細やかに描かれています。
監督 . . . 本文を読む
この間のブログに「執事の名前といえばセバスチャン」を書きました。
では、メイドの名前といえば?
メアリー? ベッキー?(あ、これは「小公女」)
とにかく短い名前でしょう。呼びやすいように。
とまあ、あれこれ思いをはせていたところ、こんなのを見つけました。
19世紀英国のサーヴァントservantの生活ついて書かれた、
Frank Dawes著 Not in Front of the Servant . . . 本文を読む
本日の召使 : グリート(メイド) 映画「真珠の耳飾りの少女」より
―あらすじ―
17世紀オランダ、バロック時代。
少女グリートは貧しさから画家フェルメールの家に奉公に出る。
天性の色彩感覚が主人フェルメールの目に止まり、やがて主人の仕事を手伝うことに。
主従の関係を保ちながら、しだいに心を通わせてゆくふたり。
そしてグリートは絵画「ターバンの娘」(「真珠の耳飾りの少女)のモデルとなる―
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