ぜひ観てほしい給仕人映画 『英国王給仕人に乾杯!』

最初、題名を聞いただけで観ようと決めたこの映画。
だって英国王だもん、給仕人だもの、と。

あとで〈チェコ映画〉と聞いて「ん?」
さらに〈監督は『スイート・スイート・ビレッジ』の…〉と知って「んん?」
脳内シナプスがつながって、過去に観たフィルムが蘇った。

『スイート・スイート・ビレッジ』の、あの監督(※イジー・メンツェル)かぁー!
あー、観る観る! 観にいく!

20年くらい前にビデオで観た『スイート・スイート・ビレッジ』
物語の細かい内容は忘れたが、なんだかあったかくて、クスッと笑うことが多かった映画…という印象が残っている。

今度の『英国王給仕人に乾杯!』は、メンツェル監督、久しぶりの新作とのこと。

舞台がチェコで、あの監督で、給仕人、英国王? (クスッ?)

いったいどんな映画なんだろう…。

で、昨年末に銀座・有楽町のシャンテシネへ観に行きました。


映画「英国王給仕人に乾杯!」公式サイト

よかった…すばらしかった!
見どころがありすぎる。でもネタばれになるから言えない。
うーあー、もどかしいっ!

ともかく、このブログの趣旨として言いたいのは、
「ホテル・パリの給仕長の神業を見よ!」


※以下、ややネタばれの内容になります。
「まったく知らずに映画を観たいです!」という方はご注意あれ。



※※※※※※



映画の主人公ヤンはさまざま経緯を経て、プラハで最高級の「ホテル・パリ」の給仕人として雇われますが、そこで給仕長(スクシーヴァネク)のみごとな接客業におどろき、彼を尊敬します。

世界各国の要人やお金持ちを、威厳をもってお迎えする給仕長。
あらゆる国のことばでさまざまなお客と会話し、はじめてのお客でも一目みただけで、そのお客どんな注文をするのかを瞬時に当ててしまう。
給仕長は、すべてお見通しなのだ。

ヤンは不思議でたまらず興奮して「なぜすべて分かるんです? どうしてです?」
給仕長、答えて曰く「私は英国王に給仕した」

このときの給仕長のアルカイック・スマイルが、んもぅ!
さらに感動したヤンのリアクションときたら! 
わたくし、このシーンで「くはっ!」吹き出しちゃいました。

このシーンだけでも、映画をもう一回観る価値ある…と思っていたら、先ほどの公式サイト内の「予告編」ここの場面が一部だけ映像で紹介されていました。

ご覧になりたい方は、こちらをどうぞ。
「英国王給仕人に乾杯!」 予告編


このスクシーヴァネクの台詞「私は英国王に給仕した」は、原作の題名であり、映画の原題でもあります(英語だと I served the King of England )。

公式サイトや劇場用パンフレットにも記されてますが、「私は英国王に給仕した」というのは言葉通りの意味ではないそうです。
(そーだったんだ、とこれを読んで知りました)

乞うご注意、チェコ人が英国王に給仕するなどありえない……ことを承知の上での、寓意的な題名だ。(中略)この言葉はまた、物語が展開するナチス占領下の時代において、そして、原作が書かれたソ連支配下の時代において、ドイツであれソ連であれ、支配者が激怒する不埒な抵抗精神の表明だった。(劇場用パンフレットより引用)


この物語が見事だなぁと思ったのは、主人公ヤンの給仕人としての人生と、チェコの現代史が、より合わせた一本の糸のように、交差しながら展開していくところです。

「自分もお金持ちになって、いつかホテル王になる」と夢見ながらも、目の前の雇い主であるお金持ちたちの栄枯盛衰に人生を左右されてしまうヤン。
チェコ人としての矜持を抱きながらも、コロコロ変わる政権支配者にふりまわされるチェコ人…。

他国による支配、共和国の分裂など、複雑で重~い物語としていくらだって語れるのに、なんでしょう、この映画の軽やかさは(笑)

私は映画館で映画を見るときは客席の反応を眺めるのも好きでして(だからたいてい後ろの席に座る)、この映画は、いわゆるハリウッド映画のようにワッと笑いが起きるのではなく、
「くくっ」「ぷっ、ふふ」「「ほほっ」
といった吐息のような笑いが、よせてはかえすさざ波のように切れ目なく続いてました。

素晴らしい映画です。おススメ!
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