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執事たちの足音
帝国ホテルにクリーニングを頼んでみよう! その6 ― 最終章
皆さま、お待たせいたしました。
ついに、手元に戻ってまいりました。
帝国ホテルのクリーニング室で、職人さんの手によって仕上げられた、我がワイシャツが。
ここまでの経緯をご存じない方は、過去記事をどうぞ↓
その1 その2 その3 その4 その5
帝国ホテルに宿泊してクリーニングを頼んだのが27日の夕方。
その明けて28日。
わたしは正午12時に帝国ホテルをチェック・アウトしました。
クリーニングの受け取り予定は、午後6時。
それまで時間がたっぷりある。
まずは日比谷公園のベンチで噴水を見上げながら、テイクアウトのランチをパクつく。その後、シャンテ・シネで映画鑑賞。
シネ1では、使用人の息子とお嬢様が身分違いの恋をするイギリス映画『つぐない』がかかっていた。
(“息子”か…使用人本人だったらなあ)
言い訳して、シネ3の『ノー・カントリー』を選ぶ。
約二時間後、映画館を出ると、街は夕暮れ。
よし、帝国ホテルに戻るぞ。
アスファルトにヒール音を響かせる。
正面玄関から入って、受け取り場所のベル・キャプテン・デスクに直行する。
ベルボーイさんに名前を告げると、彼は取り出した受付名簿らしきヨレヨレの大学ノート(けっこうアナクロなのね…と思った)をチェックして「少々、お待ちくださいませ!」
あのシミは落ちたのだろうか…などと思いながら、言葉どおり、少々、待つ。
「お待たせしました」
ベルボーイさんが、抱いた赤子を手渡すようにやんわりと、白い薄紙の包みを差し出してきた。
「は、ども」
恐々うけとる。後ろ暗い計略を秘めた私にはベルボーイさんの笑顔が、ああ痛い。
クシャクシャにならないよう、ていねいに包みをバッグにしまって、帝国ホテルの玄関を出た。
息をつく。ふぅー…。
ああ、長い一日が、終わった。
いやいやいや? これからじゃないか! 実験検証は!
まっすぐ自宅に帰り、すぐさま白紙の包みをカサカサ開ける。
「IMPERIAL HOTEL TOKYO」と印字されたビニール袋で梱包されたワイシャツが現れた。おお、お帰り!
ビニールの端っこにハサミを入れて、そろりそろりと中のワイシャツを取り出す。
複雑極まる、再現不能にたたまれた(ように私には見える)ワイシャツを、ゆっくりと広げにかかる。
腫れ物に触れるように。そっと。
さて、気になるシミは…
あ、これはクリーニング前の写真です。
で、クリーニング後は…
ない!!
消えた! 落ちた! 目ン玉すりつけるようにして見たけど、跡形もない
はー、プロって、すごいや。三週間経ってたシミだったのに。うわー。
さて、検証事項はこれだけではない。
もうひとつ、「ボタン付け」が残っている。
「ボタンがついたシャツはすべてボタンを外してからクリーニングする」
「アイロンがけが終わった後に縫い付け直す」(Wikipediaの記事より)
はてさて、ボタンは一度取り外されて、新しい糸で縫い直されてきたのだろうか?
どうだ!?
あれ?
目ン玉すりつける。あれ? あれ…?
ピンクと黒の縞々の糸、そのまんまだよ!?
寒風に 吹かれココロの ボタン穴
あああ。動揺して一句詠んでしまったじゃないか!
しかもよく見てみると、「ちょうど切れかかった糸がヒョロと出ていた」隣りのボタンも、糸ヒョロのまんまじゃないですかっ!
と、言うことは、つまり…確実に…
はい。検証結果は、以下の通りとなりました。
● 帝国ホテルのクリーニングは…
(例 :キッコーマン醤油、デルモンテケチャップ、100円ショップの口紅)
―― 伝説は、崩れた。
あ、いや、そもそも都市伝説だったのかも?
というわけで、約一ヶ月かかった検証「帝国ホテル・クリーニング」シリーズ、
無事に最終章を迎えられました。
コメントを下さった方々、ありがとう!
これにて、当シリーズ、おしまい!
(…と言いつつ、次回は「番外編」として、帝国ホテルで私が見かけた、裏方スタッフの方々の働きについて、少しばかり述べようかなーと思っています)
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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ボタンは何となくそうなるんではないかとうすうす思っていましたが、本当に手付かずで帰ってくるとは。
さすがにボタン全てを取り外してやり直してはいませんか・・・ちょっと残念。
お疲れ様でした☆
次回のホテルでの様子も期待しております♪
ブログいつも楽しく拝見しています。
帝国ホテルはクリーニング部門も優秀で、私もスーツやシャツをお願いしたことがありますが、その時はボタンの付け直しをして頂きました。
ただしボタンは貝殻に細工をされたものや、磁器に絵付けをされたものでした。
クリーニングに出す前に確認は取りましたので、確かだと思います。
シミは落ちてほんっとに良かったです。借り物でしたので。
一度外してから付け直すボタンは、やはりクリーニング中に「損なわれる危険性のあるボタン」に限られているんでしょうね。「ボタンすべて」ではなく。
今回、自分で残念に思ったのは「職人仕上げと機械プレスの、仕上がりの違いがよく分からなかった」こと。
ふだんクリーニングをよく利用されている方であったら、アイロン仕上げの細かい部分や、身に着けた時の風合いなど「おおっ、やはり違う!」といっそう「手仕上げ」価値を理解出来たのでは…。
借り主に着てもらって、感想聞くかな。
>ももさん
はじめまして!
そうか!
手製の糸じゃなくて、オリジナルの手製ボタンを作って付けていたら、取り外し・付け直ししてくれたかも! って、それじゃ「ボタンがついたシャツはすべてボタンを外してから」の検証にはならないか(笑)
貴重な証言、ありがとうございます!
(「磁器に絵付け」のボタンのお召し物をお持ちですか…すばらしいですね)
みけと申します。
とても面白い記事ばかりで、一気に読んでしまいました(笑)。
帝国ホテルで検証されたとは!
スゴイです!
ミッション無事終了おめでとうございます(笑)
続きも楽しみにしています。
またお邪魔させていただきます♪
ボタンの付け替えですが、以前読んだ帝国ホテルの本に書いてあったのは、取れかかったボタンや、女性のスーツ他で飾りボタンの場合等されるようですよ。クリーニング中にボタンがなくなり、都内中のブティックを探したというエピソードが載っていました。
私もチャレンジしてみます!
どもども、みけさん。はじめまして!
たどり着いた先で出会えて、嬉しいです。コメントありがとうございます!
ミッション…!(笑)
「番外編」upしたので、よろしければそちらもお読みくださいませ。
うおおっ! お泊りになられるのですね!
(あ、はじめまして)
あのですね、お風呂のバスタブが最高でしたよ!
私の泊まった部屋は、一番安価(だと思う)ですが、ちゃんと本式の西洋バス(手足を伸ばして、寝そべってつかる型)がありました。
アメニティーに泡ジェルがあったので、それも入れてお湯立てて、泡風呂にして…
「お…おおっ…おお~…」
しばらく“お”しか声が出ませんでした(笑)
どうぞ、味わってください。
わたしゃ、ぜんぶ初めての経験でした。桃源郷かと思ったよ。
>ボタンの付け替えですが、以前読んだ帝国ホテルの本に書いてあったのは、取れかかったボタンや、女性のスーツ他で飾りボタンの場合等されるようですよ。
そうでしたかー!
下調べも無しに、体当たりだったようですね。わたしのミッション(笑)
ランドリーの方々は、とても親切な対応でしたよ。(電話での口調もやさしかった。言葉は丁寧そのものですが、フレンドリーな感じもあって、ホッとしました)
泊まった感想、ぜひ聞かせてくださいね!
ボタンの糸を洗うたびに外し縫っていたら・・生地が痛むから・・昔もないと思いますけれど・・・
色が落ちるとか・ボタンが特殊で貝ボタンなら 外すこともあります いや~楽しかったです どうもありがとうございました