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ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウン(2) 召使の階級①

さて、前回ブログ
ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウン(1) 無骨な従僕の続きです。
ジョン・ブラウンが身の破滅を招く原因ともなった、厳格なる召使の階級について。

召使社会の全盛期であった、19世紀のイギリス。
大勢の使用人を抱える館では、召使いたちの仕事は細分化され、各部署に課せられた分担業務に従事していました。
館の運営には、組織化された命令系統をもたなければ、一家の主人の命令をすべての使用人に行き渡らせることが出来ません。
ゆえに召使いたちの間には、軍部の一連隊と言ってよいほどの厳格な序列が形作られていました。

 アパー・テンとロワー・ファイブ

会社でも「管理職」と「現場スタッフ」がいるように、召使い階級も「アパー・サーヴァント」と「ロワー・サーヴァント」の二種類に大別されます。
前者の通称をアパー・テン(シニア・スタッフ)、
後者をロワー・ファイヴ(ジュニア・スタッフ)と呼びます。
(実際の役職の数とは一致しませんが、そう呼びます)

アパー・テンは館内の管理・監督の仕事を受け持ち、技術や特別な訓練を習得した経験豊かな召使です。
ロワー・ファイヴは毎日の仕事や行動を管理され、指示を受けてさまざまな仕事を行う召使です。
また男性召使いと女性召使いとでは、仕事の分担がくっきりと分けられていました。

それでは、アパー・テン、ロワー・ファイヴそれぞれの仕事内容を順にご説明しましょう。
また、召使いの階級組織図も作成しましたので、そちらと照らし合わせながら読むと、分かりやすいかと思います。

召使いの階級組織図
(※別ウィンドウで開きます。圧縮されていますので、画像右下にポイントを置くと現れる「通常のイメージに戻す」ボタンで引き伸ばしてご覧下さい。)

なお、仕事内容の説明および召使の階級図は、以下の本を参考にいたしました。
「英国カントリー・ハウス物語 華麗なイギリス貴族の館」(杉恵惇宏著 彩流社1998年)
「ヴィクトリアン・サーヴァント 階下の世界」(パメラ・ホーン著 子守雅博訳 英宝社2005年)



 アパー・テン 上級の召使いたち

以下に列挙する召使いは19世紀から20世紀初頭にかけての平均的序列にそったものです。
★印のついた召使は「大規模な館で雇われた召使い」です。なので★印の召使いが居ない館では、その階級に近い召使が仕事を兼任しました。

まずはアパー・テンから。

【男性召使いのアパー・テン】
★ ハウス・スチュワード(家令)
召使の中の最高位。ヴァレット(従僕)を除くすべての男性使用人の雇用・解雇の責任者。館の近くに主人の領地があれば、農地の借地料の徴収、境界線の調査などの管理も行う。


 バトラー(執事) /  アンダー・バトラー
ワイン・セラー(貯蔵庫)や銀食器の管理が最も重要な仕事。ヴァレット(従僕)がいない館では主人の服装の世話もし、フットマンと一緒に給仕もする。主人のステイタスによって仕事は様々。
アンダー・バトラーはその名の通り、バトラーの次位。バトラーの仕事を助ける。



★ グルーム・オヴ・チェインバーズ(客室接待係)
主に客の送り迎えや部屋への案内を行う。すべてのリセプション・ルームの責任者で、一日に数回いくつかの部屋を回って整える。仕事があればフットマンを呼び、指示を与え、首尾を見届ける。


★ 男性コックまたはシェフ
一般的には女性のコックが料理するが、大きな館には男性シェフが雇われた。男性コックは女性スタッフに技術を教えるために短期間のみ雇われた。


ヴァレット(従僕)
もっぱら主人の身の回りのお世話を行う。服装から飲み物まで気を配る。バトラーやフットマンの仕事と重なる部分も多いが、主人とはより個人的な主従関係にあった。
館内だけでなく、主人が外出する際にもお供で随行する。



【女性召使いのアパー・テン】
ハウスキーパー
レディーズ・メイド(侍女)とナニー(乳母)をのぞくすべての女性使用人の最高責任者。下位の女性召使いを厳しく管理し、雇用・解雇の判断を委ねられている。メイド職の出世の頂点といえる。


レディーズ・メイド(侍女・小間使い)
「従僕」の女性版。女主人の身の回りのお世話を行う。雇用はハウス・キーパーを通さず、女主人から直接選ばれる。女主人との個人的な主従関係が強いので、他の館への転職が困難であった。(業務内容が独立しているので、メイド職の昇進のレールからも外れている) 針仕事と帽子作りの技術が必要とされた。


コック
アパー・テンの使用人の中では下位になるが、台所の領域内での事柄については上司のハウスキーパーにも口出しさせないほどの強い権限を持つ。複数のキッチンメイドとスカレリー(皿洗い)メイドを従え、料理の陣頭指揮を取る。


以上がアパー・テンの召使いです。
はっ。続けてロワー・ファイヴを列挙しようとしたら、字数制限を越えてしまった。

(次回ヴィクトリア女王の従僕ジョン・ブラウン 召使の階級②に続きます…)

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