こころがかるくなる心理カウンセラーかきかわのブログ

山口市で心療カウンセリングルームを営みながら日常のエピソードをまじえて泣いたり笑ったり感情を動かすお話を掲載しています。

退屈という病

2017-03-31 10:40:10 | 日記
私にとって最も怖いのは、退屈することです。
このことに気づいたのは、つい最近のことでした。

忙しく働く毎日で、何もしないで暮らせる日を夢みているときは、気づけない感覚なのです。

日本人の多くが抱えている感覚でもあります。

ここからはプライバシーに配慮して個人を特定できないよう、架空のことで描いています。

ある男性は60歳の定年退職を迎えるまで、40年余りをひとつの会社で過ごし、定年退職前の彼の口癖は、

「あと少しで定年退職。長年働いてきたから、当分は何もしたくない。毎日、昼飯の時にビールを飲むぞ。それが今から楽しみです仕方がない」

ところが晴れて定年退職を迎えて、わずか1カ月も経つと、お昼にビールどころか晩酌さえも欲しくないと感じるようになりました。

現役時代は週末ごとに夫婦で飲みに行くことも好きで、お酒そのものが好きと言うよりも酒場の雰囲気がお気に入りのようで、実際には酒場で過ごす半分以上の時間は居眠っていたとしても、それはそれで幸せだったと言います。

酒と煙草で家が一軒建つほどは十分に浪費してきていて、社会では、とうに高度成長期は過ぎ去っているのに精神的なところでは、終わっていなかったのです。

そして、あれだけ憧れていた何もしない生活も、半年と経たないうちに、かつて感じたことがないほどの苦痛にかわり、アルバイトを始めることにしました。

さらに10年が経過し、今は働けなくなることが怖いと感じるそうです。

私も彼と似ているところがあって、家に居ることが好きで、暇が出来たらいつか読もうと思って買い集めていた本と撮り溜めた映画、それさえあれば一生幸せに過ごせると思い込んでいた時期がありました。

「暇が出来たら、、、」

そんなのは幻想でしかなかったのです。
本当に読みたい本ならば、観たい映画ならば、どんなに忙しくても時間を作っていたでしょうし、

「いつかは、、、」

と思うことは大抵幻想に終わります。

本を読むのも映画を観るのも根気が要ります。好奇心も必要です。ストーリーを追っていくには記憶力も要りますね。個人差はありますが加齢とともに衰えることもあります。

かと言って、

「あの頃はよかった」

と後悔しても時は戻って来ません。そして懐古的になり過ぎると、現在の自分のことに集中できず、ただ過去の自分と対話するだけで日々を過ごしてしまうようになり、脳に刺激がいかなくなり、さらに脳年齢が衰え気力を失っていく悪循環にはまります。

これは高齢者に限った話ではなく、若年層にも起こりうることなのです。

忙し過ぎても、ストレス。退屈もストレスなのです。

では、どう対処すればいいのか?

「自分は自分」

と割り切ることです。

「お隣の専業主婦の奥さんのように、、、
悠々自適な暮らしを満喫する同じ会社で勤めたOB達のように、、、」

とモデルを作って自分をその型にはめようとするのではなく、自分にとって退屈を感じずに過ごす方法が何なのかを、自分の頭で考えることです。

生き方は千差万別なのですから答えは自分しかわからないのです。

専業主婦をしているよりもフルタイムで働いている方が家事がはかどる人もいる。趣味には生き甲斐が見出せず、生涯働き続けいる方がいい人もいる。

同じメーカーの同じ食パンを一年365日食べ続けても飽きない人もいれば、新商品には目がない人もいる。

それはそれでいいと割り切れれば少し楽になれると思います。

もっとも、それが景気のいい時だと、同じ車種を乗り続ける人と、2年ごとに違う車種の新車を乗り継ぐ人というふうに、使う金額には雲泥の差がありますが。(笑)

人生は、自分に与えられた時間をどう使うかを考え続ける旅です。

さて、今日で72歳の誕生日を迎える彼ですが、今日という瞬間が今を含むこれからの人生で最も若いことに気づいてくれているでしょうか?

かきかわ統合医療相談室


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