こころがかるくなる心理カウンセラーかきかわのブログ

山口市で心療カウンセリングルームを営みながら日常のエピソードをまじえて泣いたり笑ったり感情を動かすお話を掲載しています。

治ると回復の違い

2017-09-13 09:14:01 | 日記
治ると回復は同義語とされているかもしれませんが、私はカウンセリングの中で回復という表現を使うことが多いです。

医療で、「治癒」という表現は治療中の病気や怪我が完全に治る状態を示していて、それは本人が感じる「治る」状態とはギャップのある場合があります。

例えば、癌が発覚して手術ですべて取り除けて癌が再発する懸念もなくなれば、それは「治癒」とされますが、手術の影響で便秘が起こりやすい、リンパの影響で足がむくんで辛い、大きな病気にかかる不安でちょっとした体の異変にも敏感になり過ぎてしまうなど、実生活では支障が残ることがあります。

特にメンタル(うつなどの精神疾患)の場合は、医療的な治療が終結することと本人が感じる「治る」感覚とは開きがあることが多いです。

他の病気や怪我では検査である程度状況がわかるものの、メンタルの場合は、わかりやすい形で見えないため、身体症状や診察中の訴え、日常生活の適応状況などで判断されていることが多いでしょう。

ところが、身体症状、日常生活での状況、感じ方や思考というものは日々異なることですし、病院での治療が終結しても、すぐには安定しないため、不安に陥ることは致し方ないと思います。

また、自分のことでなくても大切な家族の病後はナーバスになるのも無理もないことです。

カウンセリングでは、このナーバスな状態も含めてカバーしていく役割を担っています。

ナーバスな状態は、一定の期間を過ぎても人生の大きな変化がある度に、数十年経っても出現するかもしれません。

極端に言えば、一生を通じてその人の求めがある限り関わることが、治るではなく回復をはかるカウンセリング的関わり方だと思います。

ナーバスな状態は、良くも悪くも人生に変化が生じるところには付き物なのです。

それは病気だけでなく、離別、死別、退職、転職、異動、結婚、妊娠、出産、家族が家から離れる、家族が増えるなど変化のすべてが対象です。

「元気な時は忘れてくれて結構です。必要な時はいつでも連絡くださいね」

というスタンスで一生支えていく、常に回復をフォローする存在でありたいと考えています。

✳︎なお、これは私の個人的意見ですので、見解が異なる専門職の方もおられるかと思います。

かきかわ統合医療相談室

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苦しい時話すことの意味

2017-09-10 14:38:41 | 日記
「そこは(カウンセリング)話を聞いて貰えるんですよね」
「聞いて導いて貰えるんですか?」
「それで治るんですか?」

これは、カウンセリングについて初めて問い合わせて来られる方の質問で最も多いものです。

まず、今の感情をお尋ねします。このブログを縁あって読んでくださっている方は、何かに悩んでいますか?もし悩んでいたり困っていたりする場合、それをイメージするとどんな感情になりますか?

悩み事があるとすれば、それは解決可能なことでしょうか?

可能だとすれば難易度はどの程度でしょうか?

このように自問自答していくと、たとえば

「最近やる気が出ないんだよね。なぜなら上司は分からず屋で聞く耳持たないし、部下は使えないやつばかり。私がどんなに頑張っても事態は大して変わらない。どうしようもないだろう。頑張ったって全部無駄なんだよ。」

こんなふうに思ったとします。

こういう感じ、いわゆる自己効力感が得られない。努力しても報われない感覚に覆われていると、人生全般について同様に見えてきてしまう。それが長期的に続き、体の不調や無理が祟るなど重なると、うつ病を発症するリスクが高くなります。

少なくとも自分の身に起きたことを「悩みごと」として浮かんだとするならば、あなたは疲れている状態だと言えるでしょう。

えっ?と思われたら、元気な時の自分ならどう感じるか、考えてみてください。

元気であろうと疲れていようと、事態が変わるわけじゃないと思われるかもしれませんね。確かに周りの状況は同じかもしれませんが、全部無駄という結論付けは、元気な時のあなたなら、そう思わなかったのではありませんか?

話すことが癒しに繋がる理由は2つあります。1つは話したいという欲求を満たすことです。2つ目がカウンセリングで聴く意味ですが、分かってもらえたという欲求を満たすことです。

この2つの欲求を満たすことで、ある程度感情が悪い方へと暴走することを食い止められます。

最近ではネットで何でも調べられる時代になり、便利ですが、自分が何かに対してマイナスイメージを持っているとマイナスなこと書いてあるのが目にとまります。

苦しいので、マイナスイメージを打ち消したくて次々と調べるわけですが、元々強烈な効力があるマイナスイメージを減らすことは容易ではありません。

それが強くなると、100パーセント大丈夫という確証が得られない限りは不安がぬぐえないという心理状態になることもあります。(強迫観念)

これまでに全国からカウンセリングについてのお問い合わせをいただき、電話、テレビ電話、メールでカウンセリングの依頼を受けますが、それにお応えできない理由は、分かってもらえたという感覚を持ってもらうことが、面談以外の方法では難しいからです。

人は見た目が9割とも表現されるようにメラビアンの法則では、第一印象に与える影響は

 ◆視覚情報55%
 ◆聴覚情報38%
 ◆言語情報7%

だと言われています。つまり、「大丈夫です」と言われた言葉の意味から捉えるところが7%、その時の表情や仕草など見た感じが55%、声の調子など耳でとらえるのが38%です。

実際の場面で想像してみてください。顔面蒼白で声もかすれていて元気がない、そんな感じで、「大丈夫です」と言われたとして、相手が大丈夫だと思えますか?

また、重要な打ち明け話をする時、ただでさえ「わかってもらえるのかなあ、こんなこと言って変なやつだと思われないかなあ」と相手の反応を気にしているのに、例えばラインで既読になったのに返事がなかなか来ない。声は聞こえるけど表情が見えないとどんな気分になるでしょうか?

特に既読が長い間つかないとか既読スルーで悪い妄想をしたことは多くの人が経験されていると思います。

元々は、気にしないタイプの人でも、相手との関係性に不安があるときは気になるのではありませんか。

カウンセラーがカウンセリングの中で聴くいう行為は、自分の偏見という色眼鏡を外して(こうあるべきといった固定観念)ありのままの相手を受けいれて聴くということです。

導くとか助言するという行為は、まず脇に置いて聴く。その結果、必要な援助を行っていきます。

したがって、お会いするまえに、どんなことをしてもらえるかと問われれば「お聴きします」としか表現できないのです。

療法としては、認知行動療法、マインドフルネス、自律訓練法などさまざまですが、クライエントさんが充分に話すことが出来て、なおかつカウンセラーに分かってもらえたと感じられてとき、ケースによってはそれでカウンセリングは終結しても良いことさえあるのです。

逆に言えば誰にもわかってもらえないという感覚は、辛いものなのです。

事情によっては当事者が来られない場合は、家族やパートナーがアクティブリスニングといって、聴き方のトレーニングを行うことも出来ますし、家族療法といって、ご家族のストレスを和らげることで状況が好転することもあります。

大切なことほど答えがないのが人生、でもカウンセラーとして客観的に見守り続ける役割は担えます。

かきかわ統合医療相談室

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うつとどう向き合うか

2017-09-01 21:23:20 | 日記
うつを経験した人、家族など周りにうつの人がいた人は、うつという病は別人のようにしてしまうと感じていらっしゃるでしょう。

カウンセリングには、うつ病、あるいは他の気分障害と呼ばれる状況の人だけでなく、ご家族がご相談にみえることもあります。

うつ病への対処について、どうしたらいいですか?という質問には、なかなか答えにくいです。なぜならば、個人差があるため、例えば、「頑張れ」と言ってはいけないという一般的な知識も、状況によっては言ってもいいタイミングもあるのです。

また、病歴が長い人の場合は、ある程度の期間関わっていかないと見えてこないこともあります。

最近注目されている心理療法のひとつで認知行動療法は、ものの見方に注目して考え方を変えていく方法ですが、これも専門家がしっかりとサポートしていたとしても効果が上がらない場合があります。

うつは、脳が疲れている状況ですから、元々の病前性格が真面目で几帳面な人ほど、認知行動療法の課題を示した時、完璧にこなして一日も早く回復しようとする。

その結果、かえって追い詰められてしまうこともあるのです。

では、やらないほうが良いのか?
それは、違います。

今ではネットで調べれば自習できるものが数多く見つかりますが、元気な時に思考のトレーニングとして取り組まれるならお一人でされて良いのですが、うつのようにエネルギーが下がっている状況では、専門家(医師やカウンセラー)に相談していただきたいのです。

私が関わる場合は、状況に応じて、細かく書いてきてもらうのがいいのか、軽くメモしてもらうことから始めるのか、いいこと探しや、からだの声に耳を傾けてもらうのがいいのか、お会いするたびにその人に合わせた方法をお伝えしていきます。

それは、スポーツでいうところのパーソナルトレーナーと同様にカウンセラーはメンタルのパーソナルトレーナーです。

傾聴メインのカウンセリングが癒しだとすれば、そこから先の療法はトレーニングですから、一晩眠ればあら不思議?治りましたというわけにはいきません。

これは薬物療法も同様だと思います。

うつは、別人のように変えてしまうと表現しましたが、うつの状態では、一つだけの原因で起きているのではなく、複数のことが絡まり合い、とりわけ不安、怒り、悲嘆といった感情が一気に押し寄せてきて、自分でも止められなくなります。

したがってなんで怒っているの?
何が不安なの?
何が悲しいの?

と尋ねられても戸惑うことでしょう。

ただ一つ言えるのは、通常の疲労(休養取れば回復する程度)とは異なる、酷い疲労で休むことは必要なのに、強い緊張感から眠ることも難しく、ゆっくりと休むことさえも困難な状態。それが、うつの状態だと言えるでしょう。

その時の言動は、例えば急に怒り狂う、泣き出す、不安でジッとしていられないなど、時に周囲の人も巻き込み大騒動になることもあり、悪態をつくことに留まらず暴力に発展したり浪費が酷くて離婚に至ることもある程です。

このように病気は家族の生活、心身の健康も損ねることがあるため、ご家族にも関わり方を知っていただきたいのです。

支え合うことは病気の回復に不可欠ですが、病気の人を支える人が一人で抱え込んでしまうと共倒れしてしまうこともありますし、自分の考えの中だけでは客観視出来ないものです。

ちょっと一息入れてみませんか?

かきかわ統合医療相談室


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