こころがかるくなる心理カウンセラーかきかわのブログ

山口市で心療カウンセリングルームを営みながら日常のエピソードをまじえて泣いたり笑ったり感情を動かすお話を掲載しています。

人間関係で生じたトラウマの癒やし方

2013-11-04 16:36:25 | 日記
人間は記憶するという機能を授かったために、過去の出来事に関してとらわれ、罪悪感、恐怖、悲嘆など辛い状況から逃れられなくて苦しくなることがあります。

私たちは、普段、辛い出来事があったとしても、その都度対処しながら生活しています。愚痴を聞いてもらう。くよくよと考えてみる。気分転換で何かをするなど、それぞれのやり方があるでしょう。

そうした普段のやり方では解消しきれない、強い衝撃でできたこころの傷のことをトラウマと言います。

私たちが健康に暮らしていくためには、基本的信頼が必要です。まずは、自分自身、そして身近な人、地域社会などに対してです。

本来は、一瞬先のことは誰にもわかりません。今は大丈夫でも次の瞬間にどんな怖ろしいことがあるかはわからないのです。
と言って、次の瞬間のことを心配して、いつも身構えていては、健康的に暮らしていくことはできません。

中でも人間関係によってもたらされたトラウマは、事故や災害や犯罪や紛争などとは異なるところがあります。特に身近な人との関係によって起るトラウマの場合は、受けた人の人生に大きな意味をもたらせます。

「他人への信頼」が崩れるということは、信じていた自分の気持ち、「自分への信頼」にも影響します。親や恋人など近しい間柄では、「自分が上手く対処していれば回避できたのでは?」と罪悪感を持つこともあるでしょう。

人間関係のトラウマを癒やすためには、時間をかけて事態が「予測不能」なことであったことを認め、安心安全な環境で、「自分がどのようにその出来事を体験したのか」を少しずつ話すことが必要です。「情動処理」を行うということです。ただし、トラウマ記憶に向き合うこと自体が怖くて出来ない人、あるいは思い出すことが出来ない人には不向きです。

安心安全な環境で話すということは、実はなかなか難しいと言えます。たとえば、DVで傷つけられている人が誰かに相談したところ、「あなたの言い方にも問題があるんじゃないの」などと言われたり、性的な暴力を受けた人が「短いスカートを履くことはやめることだ」などと言われるなどで、さらに自責の念に陥り、傷を深めてしまうこともあるからです。

あるいは、「あなたに非はないのだから忘れてしまえばいい」というような助言も弊害になることがあります。確かに私たちは「忘れる」という能力があるから、救われていますが、これは意図的に操作するものではなく、自然のなりゆきです。強い衝撃に関して気持ちの整理がつかないままで無理に記憶から削除しようとしても、例えば酷いパワハラを受けていた人が、大きな声で話す男性がいるだけでも恐怖で体が硬直して動けなくなるといった状況が後遺症として残り、どうしてそうなるのかが分からなくて対処できないなど、結果的に長い間その人の人生に悪影響を及ぼすことにもつながりかねません。

トラウマを解決せず、「基本的な信頼感」を取り戻せないまま、過ごしていると、その人の思考=反応に影響を及ぼします。理不尽な怒りかたをするなど、いわば、脅威から身を守る自己防御反応なのですが、他人から見れば性格の問題として感じられることもあるでしょう。

他人のことに異常なほどに感情移入してしまう。「自分の問題」と「他人の問題」の境界線が見えなくなるということもあります。

整理すると、トラウマ記憶がはっきりとしていて、向き合う力がある場合は、安心安全な場所で(カウンセリング等の場で)話すことが、大きな助けになるでしょう。一方で、トラウマ記憶に向き合うことが怖い、思い出すことが出来ない場合は、現在の人間関係の問題について改善することを目指します。

後者の場合は、自分の思考=反応について、どういう時にどういう反応が起きるかを検討し、その反応を癒やす対策を考えていきます。人間の反応は複雑で、例えば、自分の幸せが壊されてしまいそうで怖いと感じると相手に干渉して怒鳴ってしまうなど、怖いのに怖いと言えず、怒りとして表すこともあります。

あるいは、怒っているのに泣いてしまったり、愛想笑いを浮かべることもあります。自分の気持ちに気付き、それをなるべく正確に相手に伝えることが出来れば、基本的な信頼関係を築く大きな力になります。

トラウマ解消に向けて、「自分は強い衝撃を受けたのだから、他人を信じられなくて当たり前」ではなく、「自分は強い衝撃を受けたことは事実であるが、現在は自分の本来の姿を取り戻した」という状況になることが理想です。

また、過去の強い衝撃は、予測不能であったことでも、どういう状況下でそのようなことが起きたのかを知ることが出来れば、今後に向けて気をつけるヒントが見いだせるでしょう。

トラウマを抱えているのは自分の問題。だから自分だけで解決するしかないと思いこまず、通常の対処法ではどうにも出来ないことだと認識され、早期にご相談ください。自分だけの目で見る主観の世界から、少しずつシフトチェンジしていきましょう。

ご相談に応じられる、周囲の皆様は、どうか、「感じている以上は、正しいのだ」と肯定的に聞いてあげてください。最も重要なことは、「感情の肯定」です。身近な人が肯定的に聞くことは、トラウマ記憶で信頼感を失っている当事者にとって、勇気づけになります。

「出来事がその人の人生にとってどういう意味を持つかはその人が決める」どうかこのことを覚えておいてください。

そして、「人間関係で起きたこころの傷は、人間関係によって癒される」これも事実です。

日増しに日照時間が短くなる今日この頃です。憂うつな気分が重症化する前に、こころのメンテナンスに取り組みましょう。

山口市緑ヶ丘(団地名グリーンヒルズ)の自宅で営む緑豊かなカウンセリングルーム

かきかわ統合医療相談室

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