ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

分娩取り扱う病院 激減

2007年11月10日 | 地域周産期医療

病院に勤務する産婦人科医師の数が予想以上のスピードで減少し続けているという現実がある以上、今後、分娩を取り扱う病院の数がさらに減少していくのは当然の帰結です。

絶滅の危機に瀕している近隣の病院間で、病院の生き残りを賭けて少ない医師を奪い合っていれば、共倒れの危険性が高くなっていくだけです。分娩を取り扱う病院の数を維持することにこだわっても、現場のスタッフがどんどん辞めてしまうような施設ばかりでは全く意味がありません。

現実を直視し、分娩を取り扱う病院の数を維持することよりも、まずは、『産婦人科医師数の減少をくい止めるためにはどうしたらいいのか?』を最優先に考えていく必要があります。

今は何よりもまず、現場で辞めずに必死に頑張っている産婦人科医、小児科医、麻酔科医などのトータルの数を維持することが最も重要だと思います。


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5 コメント

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胸が痛くなってしまいます(>_<)!!! (僻地の産科医)
2007-11-13 22:09:15
「僻地の産科医」を名乗っていますが、その方が通りがいいからで、最近異動(医局人事)して以降、「都会」しかも「大病院」の産科医です。
しかし、勤務人数は、昔、地方の基幹病院でいわゆる奴隷医労働をしていた頃よりも少ないです。

私の地方も、私の地方の中ではかなり中心的役割を果たしているというか、入局者は周辺の地方大学から新卒者をどんどん吸い取っているような、病院でした。全科あわせた大学医局全体では、毎年200人を超える入局者がいましたし。

しかし、そういった周辺に比べれば人数が潤沢にいた(他の科はいまでもいるのでしょうか?)大学でも、もうすでに産科医は大都市部で足りなくなってきています。

大学の教授は、すでに数年前から人数調整をややあきらめつつある感じが漂っています。
つまり「今いる人数の中で、どんどん脱退者を出した病院」から産婦人科撤退を決めている感じがあります。「維持できなくなったよ~(>_<)!!!」「当直が支えられません~」っていう負け負け病院から残りの人員を引き上げて、他の病院に送っている。
逆にそこに至るまで、補充もしてくれませんし、(実際にはしているのかもしれないけれど、周りを見渡しても、してくれている充足感はまったくなし)「自己責任」「下に抜けられたもの負け」「がんばってね~」という感じの無責任な感じが目に付きます。

教授はすでに投げているのかもしれません。。。。

産科に特化する、とか、
婦人科に特化する、とか。
産婦人科にとってはとても寂しくて、悲しいことです。
施設によって見られる疾患とか、輸血態勢とか、手術室の態勢とか、すっごく違いますし、今の勤務状態は施設としてはいろんなことができて、とってもその点では幸せなのですが、「誰かが抜けるっていわないか」「そもそも抜けなくっても維持が難しい~」ということを日々実感しています。
そういった意味では大病院間でも生き残りをかけて戦っている実感です。仕事を集めすぎてしまえば人員が倒れる。かといって縮小しすぎてしまえば、患者さんは移り気です。すぐに悪い噂が立ってしまい、そうはいっても良性手術とはいえ何ヶ月待ち。外来はあふれかえって処理し切れません。
(そのうえ、今の当直回数だってかなり厳しい。。。1年だって続けられるかどうか!)

できるところまではやろうと思っていますけれど、どうすでばいいのか。転職の決まった先生はあちこち噂とかでいっぱい聞きます。予想以上の速さでみんな辞めていきます。共倒れの日もそう遠くないでしょう。
とはいえ。私は生残りたいので、淡々と仕事をやっていこうと思っています。(もうとる物は取りましたし、辞める時には自分を高く売れるつもりでいます)

辞める方が「自分が大事」なら、私たちも「自分が大事」です。経験は買えません。今の症例を大事に、骨身にしていきたいです。(もうこんなことができる期間が、あと何年、補償されているかわかりません。まして何年後かにはまったくこんな医療はできなくなるでしょう。)

経験になる症例をつませてくれる病院がそれほどないのは、すでに地方勤務で身に染みました。産科に特化した施設に今からいけば、自分の知識と経験はこれから切売りするばかりで、身になることなんてほとんどありません。良性疾患でさえ防衛医療でできないところのほうが多くなってきました。危ない産科症例なんてもっての他。今でさえ癒着胎盤に手を出す病院なんて、もうあんまりみかけなくなりました。

自施設のことだけを考えて、生残りに励みたいと思っています。すくなくとも何ヶ月でもいいから、今の状態を先送りするしかありません。
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>一歩進んで産科医を増やすというぐらいの意気込... (KANCHAN)
2007-11-15 08:22:37
みなさんは個人的にどんな努力、行動をされてますか?
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 辞めることを決意した産科医です。自分が抜ける... (辞める産科医)
2007-11-17 22:13:57
 ハイリスクな業務を引き受けてがんばっておられる先生方がこの先も引き続きがんばれるように、常勤医の待遇が早く改善されることを祈っています。ただ、一家の大黒柱でもなく借金をかかえているわけでもない医師は、「高収入高待遇」ではつなぎとめられないと思います。若手の多くは女性であることを考えると、またその多くは医師同士の結婚であることも考えると、あえて過酷な環境で働き続けるには強い熱意や理由が必要です。本当に産婦人科医は減ってしまいます、どうすればいいのか本当に心配です。自分は辞めるくせにすみません。。。
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辞める産科医 様 (とっくに辞めた産科医)
2007-11-18 12:02:04
>借金をかかえているわけでもない医師は、「高収入好待遇」ではつなぎとめられない・・・

 面白い着眼点ですね。本当に産科医なんて、ヤミ金に多額の債務のある人がマグロ漁船に乗るのと同じ心境にならないとやれないと思います。いや、もっと条件は悪いかも知れません。訴訟されて逆に借金が増えたり逮捕されことも十分ありえますから。

 産科医をやめることについて罪悪感を感じる必要なんて全然ありません。今後も残留する先生たちだって、別に強制されているわけでもなく自らの意志で続けるだけですから。
 明日にでも医療事故に遭遇し、一生返済できない負債を負い、逮捕されて、家庭も崩壊するということもあり得ます。飛び込み出産の被害にあい致命的感染症をうつされるかも知れません。そうなっても病院も周囲の先生方もほとんど何の援助もできないでしょう。そうなってからどんなに後悔しても何もかも遅いのですから、自分でやめると決断した以上断固として遂行すべきです。

 辞めることについて後ろめたい気持ちを持つなんて人が良すぎるのではないでしょうか。だから医者はつけこまれるんですよ。そのスタンスが問題を先送りすることで却って医療を荒廃させているのだと思います。
 むしろ「自分がいままで産科を続けて来たことについてみんなもっと感謝してもらいたい」くらい言って下さい。
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現代の周産期医療では、産科医だけでなく、助産師... (管理人)
2007-11-18 14:42:19
万が一、ある病院で産科医の離職が続出し分娩の取り扱いを休止するような事態となれば、その病院の周産期医療チームはいったん解散ということになってしまいます。今のご時勢では、いったん解散したあとに一からまた人を集めなおして大きな周産期医療チームを再結成するのは、ほとんど不可能に近いと思います。

今は一見すると順調に運営されているように見える産婦人科であっても、常勤医の離職者が続出すれば、分娩の受け入れを休止せざるを得なくなって、その産婦人科はこの世に生き残っていくことができなくなります。

県内のどの産婦人科が最終的にこの世に生き残るのか?の予想は非常に難しいです。県内の産婦人科医は同じ周産期医療チームの仲間と考えて、残った仲間で力を合わせ、いかにして県の周産期医療システムを維持していくのか?を考えていくしかないと思います。
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