ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

妊娠中の尖圭コンジローマ(性器疣贅)

2011年02月09日 | 周産期医学

尖圭コンジローマ:condylomata acuminata(性器疣贅:genital warts)は、外陰部、腟壁、子宮頸部、会陰、肛門周囲などにできる疣贅(イボ)で、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染により発症します。子宮頸癌を引き起こさない低リスク型HPV の型は約12 種類あり、これらの型のHPV は性器疣贅や、問題とはならない程度の子宮頸部細胞診所見の変化(koilocytosis)を引き起こします。低リスク型HPV には、6型、11型、40型、42型、43型、44型、54型、61型、70型、72型、81型、CP6108があります。最も代表的な低リスク型HPV は、性器疣贅の原因の約90%を占める6 型と11 型です。

参考:画像1 画像2 画像3 画像4 画像5 画像6

免疫能が正常の人において、性器疣贅は治療しなくても自然消失することも多いです。しかし、疣贅が増殖して大きさと数をどんどん増していく場合もあります。 今ある疣贅がこれから増殖するのか、消失するのか、を予測することはできません。

妊娠中の免疫能の変化により、妊娠中はしばしば性器疣贅の大きさと数が増えますが、妊娠終了とともに疣贅が消失することも多く、妊娠中は治療をせずに経過を見る場合もあります。

時には、性器疣贅が大きくなりすぎて、膣内や会陰が完全に疣贅で覆われ、経腟分娩が困難となる場合もあり得ます。

妊娠中の性器疣贅は、ほとんどの場合、児に悪影響を及ぼしません。時に、HPVの産道感染により乳幼児の喉頭乳頭腫や性器疣贅を発症する場合もありますが、これは非常にまれなので、性器疣贅がよほど大きくない限りは帝王切開の適応とはなりません。

性器疣贅の治療方法はいろいろありますが、完全に満足できる治療法はありません。疣贅はしばしば再発し再治療が必要となることも多いです。妊娠中の性器疣贅の治療法はいろいろ実施されてますが、現時点ではどの治療法が最良か?という問いに答えるエビデンスはまだ存在しないようです。

性器疣贅は、液体窒素による凍結療法、電気焼灼、レーザー治療、外科的切除などによって除去できます。薬での治療は、DNAの生成を阻害する塗布薬(抗がん剤)を使うことがあります(5-FU軟膏、ブレオS軟膏、これらは保険適応外、妊婦には使えない)。また、2007年12月10日には、保険適応の尖圭コンジローマ治療薬としてベセルナクリーム5%(一般名:イミキモド)が発売されました。ベセルナクリームの添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と記載されているので、主治医が必要と判断すれば妊婦にも使用できます。薬の治療では、通常、数週間から数カ月にわたって何度も塗布する必要があり、治療後にたびたび再発します。


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