● 染色体とは?
細胞の核内にあり、細胞分裂の際に棒状の構造体として観察される遺伝情報の担い手で、塩基性色素に濃く染まるところから染色体の名がある。
分裂期以外は、核内に一様に分散し染色質という構造をとる。ヒストンと呼ばれるたんぱく質のまわりにDNAの二重らせんが巻き付いたヌクレオソームを基本単位として、これにほかのたんぱく質も加わって何段階にも連結して染色体をつくる。
真核生物の体細胞は、同じ形をした2つ1対の常染色体を何組かと1組の性染色体をもつが、その形と数は生物の種類によって決まっている。
たとえばヒトでは、常染色体22組44本と性染色体2本( XXまたはXY )の計46本をもつ。
● 減数分裂の意義
精子や卵など生殖細胞には、染色体数が通常の体細胞(2n)の半数(n)しか含まれていない。これは生殖細胞が形成される過程で、染色体数の半減が起こるからである。この特別な細胞分裂のことを減数分裂(成熟分裂)という。
減数分裂の結果できた生殖細胞(n)は,受精により2個が合一して受精卵となると、染色体数は元の2nとなる。このような減数分裂のしくみによって、生物は種による一定の染色体数が保持され、親→子→孫へと代々受け継がれるのである。
● 卵の成熟と排卵
①女性(XX)の原始生殖細胞は、胎生16週(妊娠18週)頃に卵祖細胞へと分化する。
②卵祖細胞は複数回の体細胞分裂を起こし、第一次卵母細胞となる。
③胎生期に第一次卵母細胞は減数第一分裂を開始し、前期でいったん休止する。
④思春期になると、排卵周期のLHサージによって減数第一分裂が再開する。
⑤排卵の直前に第一減数分裂が完了して第二次卵母細胞と第一極体になり、排卵される。
⑥第二次卵母細胞ではすぐに減数第二分裂が始まるが、中期で再び休止する。
⑦第二次卵母細胞では精子の進入(受精開始)によって減数第二分裂が再開する。
⑧第二次卵母細胞は、1個の卵子と1個の第二極体になり、第一極体は2個の第二極体になる(第二極体:計3個)。
⑨受精の完了とともに、第二次卵母細胞の減数第二分裂は終了し、受精卵となる。
⑩第二極体は退化する。
● 減数第一分裂
①第一分裂は胎児期に始まる。
②排卵する直前に終了する。
③減数分裂(46, XX → 23, X)
● 減数第二分裂
①受精は第二分裂の途中に起こる。
②受精の直後に第二分裂が終了する
③当数分裂(23, X → 23, X)
● 卵母細胞の分類
①第一次卵母細胞(46, XX) 排卵前
②第二次卵母細胞(23, X) 排卵後
● 極体の数
①排卵直前に第一極体が、受精直後に第二極体が放出される。
②排卵後~受精直前には極体が1個ある。
③受精後に認められる極体は3個である
● 卵胞発育
①原始卵胞(primordial follicle)
第一次卵母細胞とそれを囲む一層の扁平上皮様細胞とからなる。
初期の卵胞発育は卵胞刺激ホルモン(FSH)ではなく卵巣内の細胞間の局所的な相互作用によって制御されている。
②一次卵胞(primary follicle)
第一次卵母細胞が増大し、それを囲む一層の顆粒膜細胞層は扁平から立方~円柱状へと形態変化する。
顆粒膜細胞層の立方化に伴って核分裂が増加、FSHへの反応性が増強し卵胞発育が促進される。
③二次卵胞(secondary follicle)
卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用で顆粒膜細胞層は2~5層へと多層化する。
卵胞は直径50~400μmとなって血管の豊富な卵巣髄質へ移動する。
④成熟卵胞 mature (Graafian) follicle
二次卵胞の顆粒膜細胞層に小さな隙間ができ次第に融合拡張して液体の貯留した卵胞腔を形成する。
卵胞が成熟するにつれて卵母細胞は片隅に偏在し顆粒細胞層に取り囲まれた卵丘の形で卵胞腔内に突出する。
排卵直前には卵胞径は2cmに達する。
⑤黄体
排卵後、卵胞壁に残存した顆粒膜細胞と莢膜細胞が肥大・増殖したもの。排卵後1~4日で完成し、プロゲステロン、エストロゲンを分泌する。
卵子が受精していなければ、黄体はプロゲステロンの分泌を止め減衰する(黄体の寿命:約14日)。その時それは繊維の瘢痕組織である白体へと縮退する。
卵子が受精した場合、絨毛よりhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌される。hCGは黄体へプロゲステロン分泌を続けるよう信号を送り、それにより肥厚した子宮内膜が保持される。 妊娠黄体は妊娠10週頃まで黄体ホルモンを産生し、その後徐々に退縮、消失する。
・ 先体反応と透明帯反応
先体反応: 精子が卵丘に接した時、表面の原形質膜と先体外膜が融合し、これが破れて先体内酵素(ヒアルロニダーゼ、アクロシンなど)が放出あるいは露出される。
透明帯反応: 先体反応により、透明帯の性質変化を起こし、他精子の進入を妨げる。
卵の透明帯は糖蛋白から構成されており、その働きは多精子受精の防止、卵の保護にあると考えられている。
・ 受精(fertilization)
排卵はLHサージの16~24時間後に起こる。
受精は卵管膨大部で起こる。
精子の二次卵母細胞内への進入により、第二減数分裂は再開される。第二極体が放出され、二次卵母細胞は卵子となる。
卵子の核は雌性前核となり、精子の核は雄性前核となる。雌性前核と雄性前核が融合して全核となり、受精が終了する。
受精が終了すると、卵割が始まる。
卵の輸送は卵管の蠕動運動と卵管上皮の線毛運動による。
受精後4~5日(桑実胚期)で子宮内膜に達し、6日目(胞胚期)にハッチングを起こし着床を開始する。
胞胚(胚盤胞)となった受精卵は、内細胞塊側が子宮内膜に接着し侵入する。
ハッチング:受精卵が、内圧の上昇と酵素的融解により、透明帯から脱出する現象。