ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

女性の年齢と妊孕能(にんようのう)

2020年06月25日 | 生殖内分泌

妊孕能 妊孕性 fertility

妊孕能とは妊娠する能力を意味する用語です。

女性は年齢とともに卵胞数が減少します。出生時に200万個あった原始卵胞は年齢とともに減少し、思春期には5~10万個となり、35歳以上から減少率は加速し、閉経で0となります。女性の一生で排卵する卵子数は約400個です。また、一部の女性では子宮内膜症や卵巣腫瘍などを発症し、卵巣機能が低下することがあります。いったん低下した卵巣予備能は回復することはありません。卵巣内に残っている卵子の数は、血清抗ミュラー管ホルモン(AMH)値でその目安が確認でき、卵巣予備能を評価することができます。

加齢による卵胞数の減少


一方、卵子の質は、AMHでは測定できず、年齢に相関します。卵子の質を正確に表す指標は、現在のところありません。卵子の妊孕能は、おおむね37歳から44歳の間のどこかの時点で消失します。いったん卵子が加齢により妊孕能を消失すると、現在の不妊治療では妊孕性を回復することは不可能であり、治療不能(絶対不妊)となってしまいます。そのため、そうなる前に治療を開始することが唯一の対処法となります。

受精卵の着床率は、原則として年齢の影響を受けませんが、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの子宮疾患により影響を受けます。子宮内膜症、子宮筋腫、子宮頸がん、卵巣悪性腫瘍など、女性の不妊の原因となる病気は年齢とともに増加します。

女性の年齢別出生率をみると、30歳を超えるころから徐々に減少し、35歳を過ぎるとその傾向は顕著になり、40歳からは急激に減少します。その一方で、女性の平均初産年齢は年々上がってます(30.7歳・2017年)。従って、女性が出産できる期間は短くなっています。挙児を希望する場合は、年齢に応じてライフプランを考えておくことが大切です。

女性の年齢別出生率


不妊症診療における基本的考え方

参考文献:
データから考える不妊症・不育症治療、竹田省ら編、メディカルビュー社、2017

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