ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

性器クラミジア感染症

2006年01月15日 | 健康・病気

性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスという病原体による性感染症で、世界中で最も多い性感染症と考えられています。わが国でも性感染症の中で一番頻度の高い病原体です。

クラミジア・トラコマチスは、ウィルスよりやや大きい病原体で、ウィルスと同じように細胞内寄生体です。泌尿生殖器、眼、肺などに感染します。わが国の生殖年齢の婦人の子宮頚管からクラミジア・トラコマチスが分離される頻度は5~10%といわれ、血清抗体からみると20%前後の婦人が感染しています。

一般に女性では子宮頚管がクラミジアに感染しても無症状であることが多く、帯下感が唯一の症状で、時に子宮腟部が発赤し易出血性となることもあります。子宮頚管炎のみのときは症状は軽いことが多いのですが、ここよりクラミジアが上行し、卵管炎、骨盤内感染症、さらには肝周囲炎まで発症すると、激しい痛みの原因となります。若い女性で、急激な下腹部痛で救急車で運び込まれる人の中に、このクラミジア感染症の人が少なからずいらっしゃいます。卵管炎の後遺症として、不妊症や子宮外妊娠の原因ともなります。また、妊婦が感染していると、分娩時の産道感染によって児に結膜炎や肺炎を発症しますので、多くの産科施設で妊婦検診時にクラミジア検査を実施しています。

クラミジアの検査にはクラミジアそのものを検出する方法(PCR法など)と、血清抗体を検出する方法とがありますが、前者の方が直接的で診断的意義は高いとされています。

治療はクラミジアに対して感受性のある薬剤を服用します。例えば、尿道炎、子宮頸管炎に対して、成人にはアジスロマイシン(商品名:ジスロマック)として1000mg(力価)を1回経口投与します。腹膜炎などの場合は入院・点滴治療を要する場合もあります。性感染症なのでパートナーと同時に治療することが大切です。


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