ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

琉球大・助産師養成課程の必修授業にホメオパシー、来年度からは中止

2010年09月17日 | ホメオパシー関連

朝日新聞の記事によると、琉球大学医学部・保健学科では、6年前から助産師養成課程の必修授業の中でホメオパシーを教えていたそうです。山口市でホメオパシーを実践する助産師が女児にビタミンK2シロップを与えず頭蓋内出血により死亡させたとして、損害賠償を求める訴訟が起きたことが明らかになった後も、学内で授業内容に異論は出なかったようですが、8月26日に日本助産師会が発表した声明で、『ホメオパシーを使用したり、勧めたりしないよう会員に求めた』のを受けて、来年度からはホメオパシーを必修授業で教えることを中止する決定が下されたそうです。

助産所の助産師にホメオパシーが受け入れられやすいのは、一体なぜなんでしょうか? 助産所で取り扱える分娩は低リスク妊婦の正常分娩のみということになっていて、分娩が異常化した場合の医療介入はできません。しかし、低リスク妊婦であっても分娩が突然異常化することはまれでありませんし、突然の異常化がいつ誰に起こるのかは予測できません。もしも分娩経過中に急に胎児徐脈が発生したらどう対応するのか? 予想外の分娩時大出血の際はどう対応するのか? 大きな産道裂傷にどう対応するのか? 産まれた児が泣かなかったらどう対応するのか? 現代医療には頼らないで、これらの難題に一人で何の助けもなく立ち向かっていくのは本当に至難の業だと思います。今は昔と違って、結果が悪ければ、助産所の分娩であっても、訴訟の対象となり得ます。精神的なプレッシャーも非常に大きいと思います。『もしも、この世の中に現代医療に匹敵するような代替医療が存在するとすれば、それを信じて頼りたい』という心境になるのは十分に理解できます。しかし、いざという時に実際には何の効力もないものに頼って貴重な時間を浪費すれば、通常の医療に移行するタイミングが遅れてしまい、取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。

日本助産師会がホメオパシーを明確に否定する声明を発表

****** 朝日新聞、2010年9月17日
http://www.asahi.com/health/news/TKY201009160388.html

琉球大、必修授業にホメオパシー 来年度から取りやめ

 琉球大学医学部が6年前から、助産師の卵たちに民間療法「ホメオパシー」を必修授業の中で教えていた。日本ホメオパシー医学協会認定の療法家(49)が講師だった。ホメオパシーに傾倒する助産師が通常医療を拒否するトラブルも起きており、同大は来年度から取りやめることを決めた。今後は学生に「リスクがある」と伝えていくという。

 大学や担当した講師によると、ホメオパシーの授業は、代替療法の一つとして、保健学科の「助産診断・技術学」の中で年1回、3年生を対象に行われた。今年度も8月10~11日、学生10人を対象に、ホメオパシーの歴史やレメディーと呼ばれる砂糖玉が体に作用する仕組み、症状が緩和できる病気について、教えたという。講師が学生から「どうしたら(ホメオパシー療法家の)資格が取れるか」と聞かれたこともあるという。

 講師の療法家は助産師で、沖縄県内に日本ホメオパシー医学協会と提携する助産院を開設。2004年度に非常勤講師として採用された。この療法家は取材に「ホメオパシーは素晴らしい。症状が改善する」と話している。

 今夏、山口市でホメオパシーを実践する助産師が女児にビタミンK2シロップを与えず頭蓋(ずがい)内出血により死亡させたとして、損害賠償を求める訴訟が起きたことが明らかになった後も、学内で授業内容に異論は出なかったという。

 しかし、日本助産師会が8月下旬、ホメオパシーを使用したり、勧めたりしないよう会員に求めたのを受け、担当教員らが「適切ではない」と判断。来年度以降は中止することを、医学部教授会などを通じて決めることにした。

 ホメオパシーを取り入れている助産師は多く、日本助産師会の調査でも、1割弱の助産院が実践していた。

 担当の教授(母性看護・助産学)は「お母さん方から質問された時に、説明できるように取り入れた。今後はホメオパシーはリスクがあるものと伝えていく」と話している。【岡崎明子、長野剛】

(朝日新聞、2010年9月17日)


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1 コメント

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 20年前頃のドイツの街中には、ホメオパチー(Homoeo... (ホメオパスを養成しないでもらいたい)
2010-09-19 15:30:23
 しかし、ごく最近までホメオパチーを大真面目で教えていた大学があることに愕然としました。ここの記事では、琉球大学の今回の対応も、指摘されて初めて来年からやめる、とのことのようで、なんだか本気でないようにも聞こえます。全国を探すと、このような大学がほかにもあるのでしょうか? おそらく今回問題を起こした助産師は、独学でホメオパチーを学んだのではなく、上記のような大学で教育を受けたと考えて間違いはないのでしょう。
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