ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

妊婦健診と分娩の取り扱いを地域内で分担

2009年07月09日 | 地域周産期医療

全国的に分娩を取り扱う医療機関の数が激減し、一部の医療機関に患者さんが集中し、分娩を取り扱う医療機関の業務量が著しく増加しています。

地域の状況によっては、分娩取り扱いを休止した産科医療機関が妊婦健診を担当し、分娩を取り扱う医療機関とうまく連携するシステム(セミオープン・システム)を構築すれば、地域産科医療の崩壊をくい止める一助になるかもしれません。

松本地域は、分娩医療機関が6施設(信州大学、県立こども病院、丸の内病院、相沢病院、波田総合病院、わかばレディス&マタニティクリニック)、健診協力医療機関が15施設と、地方都市の中では産科医療機関の施設数が多いという特徴があり、セミオープン・システムを構築する意義は非常に大きいと思います。

飯田下伊那地域の場合、セミオープンシ・ステムのスタート時は、地域内に健診協力医療機関が3施設(下伊那赤十字病院、西沢病院、平岩ウイメンズクリニック)ありましたが、そのうちの2施設の常勤産婦人科医師が離職し、セミオープン・システムの継続が困難な状況となってきました。そのため、昨年4月より飯田市立病院の助産師外来を拡充し、助産師外来3診および産婦人科医による産科外来1診の妊婦健診を毎日実施し、専属の臨床検査技師2名による妊婦の超音波検査も開始しました。その結果、産婦人科医の外来診療の負担が軽減して、地域の周産期医療体制は何とか維持され現在に至ってます。

地域によって状況は全く異なるため、ある地域でうまくいったシステムであっても、他の地域には適用できない場合も少なくないと思われます。各地域で知恵をしぼって、それぞれの地域の現在の状況にマッチしたシステムを構築していく必要があります。

10年先も20年先も持続可能な地域周産期医療システムを構築していくために、次世代を担う多くの若い研修医達が安心してこの世界に参入できるように、充実した研修・指導体制、余裕のある勤務体制、楽しい職場の雰囲気、待遇面での十分な配慮、大学病院との密な連携など、魅力のある研修環境を地域の病院の中に創り上げていくことが大切だと思います。

****** 中日新聞、長野、2009年7月4日

分娩機関での健診が大幅減 松本地域の「出産・子育て制度」

 松本地域9市町村が取り組んでいる「出産・子育て安心ネットワーク制度」で、分娩(ぶんべん)を扱う医療機関の負担を減らす取り組みが広がってきた。妊娠当初から分娩医療機関で診てもらう妊婦は、導入した昨年7月以降は前年同期に比べ約4割減少。医療機関などからは「他の地域でも取り入れるべきだ」といった意見が上がっている。

 松本市内で2日夜にあった同制度の協議会で報告された。この制度は、分娩を扱わない地域の診療所や開業医が「健診協力医療機関」として妊婦健診を担当し、同市の信州大病院や波田町立波田総合病院など分娩医療機関の負担を軽減させる。妊婦は共通カルテ「共通診療ノート」を持ち、異なる医療機関でも情報を共有する仕組みだ。

 昨年7月から今年2月までに、分娩医療機関から妊娠証明を受けて妊婦健診を受けるなどした妊婦は846人で、前年同期比44・7%減少。その半面、健診協力医療機関で妊娠証明と妊婦健診を受けた人は1561人で、同比81・9%増加した。

 従来は、分娩医療機関で妊婦健診も受けていたケースがほとんどで、同健診は地域の診療所などにシフトしている状況だ。

(以下略)

(中日新聞、長野、2009年7月4日)