ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新聞記事:産科医不足問題(島根・隠岐諸島、神奈川県、長野県)

2006年04月05日 | 地域周産期医療

**** 朝日新聞 2006/04/04
http://www.asahi.com/life/update/0404/005.html

産婦人科医が不在、分娩できず 島根・隠岐諸島
2006年04月04日21時26分

 島根・隠岐諸島にある唯一の総合病院、隠岐病院(島根県隠岐の島町)で16日以降、常勤の産婦人科医がいなくなり、隠岐地域での分娩(ぶんべん)が事実上できなくなる。県による病院への医師の派遣期限が15日で切れ、後任のめどが立っていないためだ。このままでは85キロ離れた対岸の松江市内などで出産するしかなく、妊婦や島民の間に「経済的にも精神的にも負担」との不安が広がっている。

 同病院は、県と隠岐諸島の4町村でつくる隠岐広域連合が運営。約2万4000人が住む隠岐地域でただ1カ所、分娩対応ができ、年間百数十件の出産に対処している。

 病院勤務の産婦人科医は従来、島根医大(現・島根大医学部)から派遣されてきたが、派遣できる医師が不足するなどして04年に途切れた。地元に助産師はいるが、原則として医師の指導の下で活動しており、単独での分娩には携わらないという。

 このため、県は04年10月から県立中央病院(同県出雲市)の勤務医を今年3月末までの期限付きで派遣。広域連合はこの間、医師探しに奔走し、昨夏になって関西の医師から赴任の内諾を得たが、家族の病気で急きょ、着任できなくなったという。

 広域連合は医師の派遣延長について県に要請したが、「中央病院でも産婦人科医が不足しており、これ以上延ばせば県東部にも影響が出かねない」(県医師確保対策室)との理由で15日までの延長にとどまった。今後は週に1回程度、中央病院の医師が定期検診に来島するが、分娩にはあたらない方針。

 隠岐諸島と松江市を結ぶ高速船は1日1往復、フェリーが1日2往復のみの運航。出雲空港行きの飛行機も1日1便しかない。広域連合は「出産間際になって船や飛行機で島外に出るのは危険」として当面の間、出産業務を中止することを決め、4日、隠岐病院で出産を予定していた妊婦58人を対象に説明会を開いた。今後も引き続き医師の確保に努める。

 8月に出産予定の20代の女性は説明会後、「島外での滞在費など経済的な負担だけでなく、留守の間、家族に負担をかける。陣痛が始まっても駆けつけてもらえない」と不安を訴えた。

 厚生労働省医政局指導課の担当者は「今回の事態は残念でならない。医療現場を離れた医師の再就業を支援するなど、医師不足解消への施策を進めていく」と話す。

**** 山陰中央新報 2006/04/05
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=527018006&from=top

隠岐病院、本土出産に経費支援

**** 神奈川新聞社 2006/03/29
http://www.kanalog.jp/news/local/entry_20413.html

3分の1が10年以内に「分娩中止へ」/県内産科

 過去三年間に分娩(ぶんべん)を行った実績がある県内百八十四の産科医療機関のうち、約三分の一が今後十年以内に分娩をやめる意向であることが、県産科婦人科医会(八十島唯一会長)の実態調査で分かった。同医会は医師不足の深刻化により、年間約一万件の分娩ができなくなると推計。限られた施設に分娩予約が殺到し、医療事故のリスクや身近でお産ができない"出産難民"の増加を危惧(きぐ)している。
 実態調査は二〇〇五年七月、医会加盟の病院・診療所計四百三十一施設を対象に実施。二百四十七施設は婦人科のみの診療か既に分娩を行っていないため、〇二~〇四年に分娩を行った百八十四施設に今後の意向を尋ねた。産科医の「分娩離れ」は全国的な問題だが、こうした調査は例がないという。
 医師一人か二人の診療所を中心に、六十二施設が分娩中止の意向を示した。中止時期は五年以内が四十六施設、十年以内が十六施設となっている。調査後、既に分娩をやめたところも出ているという。
 分娩中止後は、妊娠初期の検診や不妊治療のクリニックなどに転向するか、廃業するとみられる。
 医会副会長の平原史樹・横浜市大教授は「当直や緊急呼び出しが多い過酷な勤務条件と、出産時のトラブルに対する訴訟の増加が、産科医が分娩をやめる背景にある。開業医の高齢化が進む一方で、産科医を目指す若者も減っている」と指摘。新たに産科を開業しても、初めから分娩を行わないケースも多いという。
 県内医療機関の総分娩件数はここ数年、年間七万件前後で推移しているが、医会は実態調査でつかんだ各施設の分娩実績から、一〇年には約四千八百件、一五年は約一万八百件の分娩が不可能になると推計。とりわけ横須賀や小田原・足柄地域の影響が深刻とみている。
 医会は「分娩を行う産科は既にパンク状態で、横須賀市内の妊婦が横浜南部の医療機関で分娩を行うなどの影響が出始めている」と、全国的な傾向が県内にも表れている現状を説明。「県内の分娩受け入れの減少は少子化を上回るペースで進むため、医療機関の数で上回る都内などへお産の場所を求めざるを得ない人が増える」と危機感を強めている。

**** 毎日新聞 2006/04/05
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060405-00000047-mailo-l20

佐久市立浅間総合病院:県内初の院内助産所を検討 助産師が分娩介助 /長野

◇産科医不足で
 産婦人科の医師不足に対応するため佐久市の市立浅間総合病院は、助産師が産前産後のケアや産科医に代わって分娩(ぶんべん)介助を行う「院内助産所」の設置に向け検討を始めている。設置すれば、県内初の試みとなる。04年12月に同市内の産婦人科が分娩の扱いを中止したことから、同病院での出産数が急増。産婦人科医の負担を軽減するためと、赤ちゃんを取り上げるという助産師の本来の役割を見直し、医師と有機的な連携が取れる態勢作りを目指している。
 佐久圏域での新生児は年間1900~2000人で、分娩に対応できるのは佐久総合病院4人、浅間総合病院3人、小諸厚生総合病院2人、小諸市の個人病院2人の、4病院11医師。浅間病院の出産件数は04年度の11カ月間で324件だったが、05年度同期間は496件と53%増になった。医師3人で3日に1回の当直となり、負担に拍車がかかっている。3医師とも大学医局から派遣を受けており、大学病院自体が産科医確保で苦しい状態。将来にわたって派遣の保障がないのが実情だ。
 院内助産所は、産婦人科とは別に病院内に設置。専属の助産師がチームを組んで妊娠初期段階から妊婦のケアをしながら、正常分娩の場合に限り、医師に代わって赤ちゃんの出産を担当し、分娩後も新生児の育児指導までフォローする。家庭的な環境で出産が可能で、正常分娩に不安がある場合や、万一の時は、産科医や小児科医が直ちに駆けつけ対応できる。
 県内には同様な組織を持つ病院はなく、浅間病院では「助産師外来」を設けている埼玉県の深谷赤十字病院などの先進事例を研究しながら、現在いる13人の助産師とは別に、現場から遠ざかっている助産師有資格者をリストアップ。どのような態勢が可能か検討している。医師不足、高齢化対策は、医療機関、行政、医師会など地域全体で考えていかなければならない問題だが、根本的な対策は現時点では困難。同病院の佐々木茂夫事務長は「院内助産所の考えに『リスクはどうするのか』と懸念する医師もいるが、一つの手段として考えなければならない時にきている」と話している。【藤澤正和】

4月5日朝刊 (毎日新聞) - 4月5日11時1分更新

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長野県の分娩施設 5年間で20施設減少