佐久平に友人を訪ね、キャンプ生活のような数日間を過ごしました。
別荘ではなく、小屋を建てた……と伝えてきた友人。
その小屋は木の香りも芳しい豪邸でした。
しかし、外観は完成したものの、内装はこれからで、断熱材を壁面に入れるところからすべて業者さんに頼まずに友人の手により完成させるとのこと。
現時点では、台所なし、お風呂なし、部屋なしのひとつの箱としての家が佇んでいました。
都内から移り住んできた方たちとの小さな村が育まれ、収穫物の物々交換が行われていました。
外に引いた水道の蛇口が1個と、プロパンガスコンロがひとつ。
それですべての台所仕事をしている様子は、まるでキャンプ地に来たような感じでした。
長靴をはき、畑に行き、収穫したものをシンプルに調理していただく暮らしは、この上なく贅沢に見えました。
青いトマトときゅうりをベースにハーブをたくさん使ったかなり本格的なピクルス作りをしたり、そこら辺に転がったいるりんごやプルーンやぶどうをミックスして煮込み、ジャムを作ったりと材料を無駄にしない手際の良さには感嘆しました。
調理器具が揃わなくても、台所が無くても暮らせるものなんだという妙な納得をしながらも、周りを広々とした自然に囲まれているからこそできる暮らしでもあるのですね。
むかし、作家の中山あいこさんの講演を聞いた時、当時アパートの管理人をしながら作家生活をしているという中山さんの話の内容にはインパクトがありました。
「あなたねぇ、別荘なんて自分で持つものではないわよ。お金がかかってしようがないし、別荘を持っている友人をたくさん作って、都合のいいときに渡り歩くのが最高よ!」と。
なるほど、なるほど、その当時は私もまだ若かったけれど、だんだん当時の中山さんの年齢に近づいてきて、私の周辺にも、“お別荘”を持つ人たちが増えてきました。
私もどうやら中山あいこ流処世術が実践に役に立つときが来たようですね。
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