後ろの窓から

連休も終盤
今朝は家族中で養生中の父親に見舞いに行くことになった。

連日の薪運びと薪割りでちょっと疲れていたのを察してくれて
嫁が運転してくれるというので、久々にワゴン車の一番後ろに陣取った。

一番後ろで、ごろっと横になって窓から見える逆さの景色をぼーっと眺めていた。


子供の頃、我が家に初めて自動車がやってきた頃
後部座席で、背もたれに体を預けて首を後ろにそらすのが癖だった

リアウインドウから見える逆さの景色
車が進むにつれ、次々に変わっていく逆さの景色が
普段見慣れた場所でも新しい景色に見せてくれるから大好きだった。

いつの間にか自分でハンドルを握るようになってからは
知らない沢にでも行かない限りは
正面から見える景色はいつも固定されていて
目的地までの過程でしかなくなっていることが多くなって
逆さの景色のことなどすっかり忘れていた。

父親の見舞いの日に
前の席で騒ぐ子供たちの声をBGMに
久々に逆さの景色を眺めながら
父親のことやら子供の頃をふと思い出しているうちに
いつの間にか眠っていた。

病院に着いて目が覚めて
病室の父親に会いに行く

長い入院ですっかり色白になった父の顔
痩せたせいで、元々長い指は更に長く見える

帰り際に握手すると、手のひらはすっかり柔らかくなっていて
子供の頃に握ってくれたごつごつした手ではないので、分かっていても毎回はっとする。


帰り道も一番後ろに横になった。

いろんな思いを胸に抱えながら
また逆さの景色を眺める

綺麗だなあ　　沁みるなあ