心理学オヤジの、アサでもヒルでもヨルダン日誌 (ヒマラヤ日誌、改め)

開発途上国で生きる人々や被災した人々に真に役立つ支援と愉快なエコライフに渾身投入と息抜きとを繰り返す独立開業心理士のメモ

千葉望「共に在りてー陸前高田・正徳寺、避難所となった我が家の140日」講談社

2012-03-15 01:55:52 | 
3月8日(印刷された日付)に出たばかりの、ホヤホヤの本。
予約注文していて、届いたのは実は12日。
11日のアニバーサリーまでには出なかったようだ。

陸前高田本という意味では、市長の新書=
「被災地の本当の話をしよう ~陸前高田市長が綴るあの日とこれから~ (ワニブックスPLUS新書)
戸羽 太 (著)」
に続いて2冊目と思う。

著者は避難所となったお寺の住職の姉である、ライター。
そういう意味では直接的な被災者ではない。
しかし「実家」への想い、家族への想いなどは読みごたえがある。

知り合いもでてくる。
ただ、ぼくが知っているのとは異なる部分の紹介だと気付く。

また住職が避難所閉鎖の折、ぼくに「もう会えないんですよ、檀家さんじゃないから」と言われていたことは印象的だった。
檀家・非檀家ということで関係が切れるのか、目の前に仮設住宅ができているのに、と。
対人支援の形式論で言えば、面接室で待っているタイプであって、アウトリーチ・タイプではないんだな・・・

この避難所へは5月から7月と、小集団で行う心理社会ケアで隔週、通っていた。
今も、この避難所から移った人たちが住んでいる仮設住宅へのかかわりが続いている。

p134に、
「メンタルヘルステストで、うつ症状4つ」という言及があった。
質問項目や結果の理解など紹介されているところは事実とは異なるところはあるが、被験者に受け止められた内的事実としては興味深い。
「落ち込まない人間っているのかね」
そのとおり、この構造的インタビューは、支援の対象者が被災後に「落ち込んでいる」状態の客観的な「PTSDやうつ」の程度を海外のドナー対策として知る必要があり、現状をテスト次元で掴みたかったのだ。

現状把握だけでは被験者は満足できないわけで、もっと深い理解に助けになるものや、解決の示唆などを期待していたのかもしれない。
被験者には結果説明を行うようには心がけてきたけど、うつの説明は届いていないし、役立てなかったことは確かだ・・・

さて本書は今日の仏教あるいは仏教者についてこの震災を契機に考察している内容が中心。

P209に、
家や墓が流され、生きる力を失い、一人きりで鍋に酒を注ぎ温める高齢の女性に対して、
「必要なのは、科学的な知識を持ち訓練を積んだ心理カウンセラーではなく、仏教者」と述べているところは、心理職に対する誤解である。
心理職と出会う機会が少ない現実からはしようがないのかもしれない・・・

心理職が民間資格ではなく、健保上に位置付けられて、そして配置されて、誰でもが利用できるように、その前段としては国家資格となるように、願っている。




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