ラリトプールのラガンケルにあるネパール唯一の単科精神科病院には、FさんのOT研修会の日程に合わせて出かけた。
2年ぶりの訪問で、外来棟が新築工事中。
外来では3診体制で、医学生が先輩医師の診察に陪席してトレーニングを受けている最中だった。
入院は、男女別に各2室、計40床、夜間は閉鎖となる。
心理職は週1回のパートのみ。
古い建物は院長室や管理部門がある緑色の2階建てだけになっていた。
ネパールで初めてぼくが訪れた精神保健施設なので懐かしい。
同行したのは、JICA事務所でFさん担当の調整員のSさん、健康管理員のRさん、そして連れ合い。
研修は10回シリーズで毎週日曜日(土曜がネパールの休日なので、日曜は週の労働開始日。しかし外国人ボランティアは土日を休日にしている場合が多く、この日のこの日本人たちは休日出勤していることになる))に午後1時から1時間、医師・看護師・薬剤師・検査技師などの希望する人が対象で、この日は13名が参加。
Fさんは、自作の図などで作成したパワーポイントを使い、テキスト的な内容を整理して講義していて、努力のあとがうかがわれた。
彼女の出身S大学のOT科は、日本のOT創成期の前T教授によるところで、さすがに彼女はしっかり基礎から鍛えられている印象がある。
現地語習得の成果も驚くべき水準だ。
駐在中に日常会話を現地語でこなすのは、ある意味普通だし、活動的にも必須だけど、彼女のように専門的な内容の講義を現地語で行えるボランティアというのは実は多くはない。
ぼくの15年ほどの途上国生活で、3人目かな・・・
ちなみにぼくの仕事では英語だし、いつか行った西語のプレゼンでは作成原稿を読んでいた。
この日は最終講義日で、これまでの9回の総括とOT関連分野の紹介などが内容だった。
統合失調症の再発におけるEE Expressed Emotion 研究を紹介したときには、その内容に突っ込んだ質問があったし、ネパール人医師から的確な答えがあったのは印象的だった。
Fさんは、心理関連分野についてはぼくに同意を求めたけど、彼女の説明はしっかり的を得ている。
この講義は、この病院の若い医師がOT講義を要請したものだというが、Fさんによるとこの国にはないOTそのものの研修以外に、医師とそれ以外のスタッフとが集まって話し合う機会が稀有な状況をナントカしたいという、職場内連携作りも狙いなんだという。
ネパールを含めて、開発途上国の医師-医療職種間や医師-患者家族関係には、日本でも一世代前はそうだったように、明らかな上下関係がある。
ネパールではそれを動かそうという”兆し”が若き医師から始まっているのを感じた。