この前は室町時代の授業をいたしました。
室町時代って、よく考えると難しいんですよね。
初期は南北朝の動乱、中期は文化が華やぎ、後期は戦国時代、
とレパートリーが豊富すぎ。
また、この室町時代は、食事が1日3回になった&お茶を飲むようになった、など私たち日本人の生活の基礎が出来上がった時代であり、また、生け花や能などの現代まで続く日本文化が誕生した時代でもあります。
私は室町時代を説明するにあたって、そのストーリーの軸を、
「初めて一般民衆が豊かになった時代~その恩恵と悲劇の始まり~」
としています。
そうすると、やっと、武士の政治が安定してきて、そして・・・
農業・商業の発達→農民・商人たちが、豊かになり力をつける→自分たちで自治を始めようとする(土一揆・国一揆の始まり)→お上の騒動(応仁の乱&守護大名・戦国大名の争い)もあり、武士・民衆のお互いがぐちゃぐちゃとした戦い始める戦国時代に突入
というようにお話できるんですよね。
そして政治的な流れを説明したあとで、文化の説明をしました。
そのときに、私がぽつりと一言。
「『お伽草子(おとぎぞうし)』て、室町時代をよく現した作品よね。」と。
生徒は、???な表情。そこで説明を続けます。
私 「お伽草子って、「浦島太郎」や「一寸法師」の話がある、おとぎ話が入っている
のは知っているよね。」
生徒 「うん。」
私 「じゃあ、たとえば浦島太郎って身分は何?」
生徒 「漁師。」
私 「漁師って貴族?武士?」
生徒 「ううん、一般庶民」
私 「だよね。貴族や武士とかの特権階級じゃない、身分のひくい一般庶民だよね。
そうそう!今まで習ってきた作品って、貴族か武士が主人公だったじゃん!
「源氏物語」「平家物語」とか。
でも、「御伽草子」には一般庶民が主人公のものがあるってことなんだよ!
「御伽草子」には貴族・武士が主人公の作品もあって、一般庶民の主人公の
作品とごっちゃになって入っているの。
つまり、この当時、一般庶民が主人公の作品が出てきたってこと
は、庶民がそれだけ生活の余裕が出てきて力が出てきたってこと。
さらに、貴族・武士・一般庶民の主人公の話が同じ作品におさめられていると
いうことは、身分の精神的な差が縮まっているとも読めるね。」
生徒 「それって、さっき先生が言っていたことだよね!(庶民の力が強くなり、一揆
がおこって、それが戦国時代につながっていく!と。)」
という会話ができました。
そのあとで、生徒が「こういう風に歴史って見ることができるんだ~!文化から政治や社会情勢を見ることができるんだね。」と感動してくれて嬉しかったです。
でも、このような内容で理解&感動できる生徒さんは、社会のセンスがあるな、と思います。
話しても、「でも、それテストに出ないじゃん」とか「何を感動するの?」という生徒も多くて・・・。
社会って、言葉は覚えなけばいけないけど、その言葉をわれわれが何故習うのかというと、そこから学ぶべき教訓や内容があるからなんですよね。
私の授業が良いかは別として、生徒に私の授業で楽しんで、社会に良いイメージを持ってもらえれば幸いです。
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「御伽草子」での「浦島太郎」は現代のように、亀に乗って竜宮城に行く形ではありませんが、彼が漁師をしていたのは確かです。「風土記」「日本書紀」「万葉集」での浦嶋子は豪族(一説には、浦嶋子は蘇我馬子を現しているとも言われています。)でしたが、時代が移って、室町時代には、漁師という身分になっていたそうです。