SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

渡辺貞夫 「PARKER’S MOOD」

2008年12月11日 | Alto Saxophone

日本のジャズメンの中では、最も知名度の高い人に違いない。
ナベサダのコンサートはもう何回も行った。
何時どこで観ても会場は満席だった。しかもその顔ぶれを見ると老若男女が揃っており偏りがない。
因みに今年79歳になった私の母親もこのナベサダのファンだった。
彼がテレビに出る度に、「この人は日本にジャズなんていう言葉がなかった頃からジャズをやっていた」というのが母の口癖。
「んなわけないだろ」といっても取り合ってくれない。
彼はそれくらい日本にジャズを根付かせた功労者でもあるわけだ。

このアルバムは、大ヒットした「カリフォルニア・シャワー」からしばらく続いたフュージョンアルバムの後に突如出されたライヴ版である。時は1985年。もちろん内容はストレートアヘッド。彼が最も尊敬するチャーリー・パーカーの曲をタイトルに持ってきたアルバムだ。
フュージョン作品をつくるのに飽きたのか、はたまた自分の原点に戻ろうとしたのかはわからないが、私にはとても新鮮に感じられた。
演奏はというと、何といっても2曲目の「Everything Happens To Me」に痺れまくった。
ジェームス・ウィリアムスが弾く静かなピアノソロによるイントロの後で、ための効いたアルトがメロディを奏でる瞬間の快感がたまらない。この強さでこんなにも情感たっぷりに歌える人はそうそういない。こういうところが「世界のナベサダ」といわれる所以かもしれない。

ナベサダは実に笑顔が素敵な人だ。シワの付き方?がいい。
あの笑顔には彼の知性と人柄が浮き出ている。
そういえば彼が吹くアルトサックスからも同様の感情が沸き起こることがある。聴いているとあの笑顔が浮かんでくる時があるのだ。
そんな時、改めて彼の偉大さを知るのである。