乳がんにかぎらず、がん患者は
初発が早期発見で最終的な治療から10数年経過すると
若年性でない限り
そこそこ「老いる」まで生きられる・・・ようだ。
初発年齢が若年だとわからない。
また新しいがんも出来てしまう可能性もあるし
油断はできないのだが・・・
がんの治療って短ければ3年位?
他のがんがどうなのかがわからないけれど。
乳がんの場合は早期でも5年位ホルモン治療はしなくてはいけない。
それで普通の生活に戻る人は多く
現代の医療はたいへん進んでいるから
がん=死 とはならない。
私のように再発転移をすると一生闘病。
飽きたってどうしたってがんと付き合っていかなくてはならない。
そして、薬がなかなか効かない場合もある。
急に悪変する可能性もある。
初発年齢が普通の40代~50代だと
「老いる」まで生きられるかどうか、ちょっとわからなくなってくる。
そして、遠隔転移(私の場合は肺だが)が見つかると
手引書みたいなものには
必ず「身辺整理を始めましょう」と書いてある。
これがね・・・・なかなか進まない。
一つタンスを開けると
その引き出しを開けると、色んな思い出が蘇って
それに浸って、一生のお別れをしなくてはいけない。
もちろん、さっさと捨てるタイプの人も多い。
最近はやっている「断捨離」というやつ。
実は私はあの言葉はあまり好きではない。
「半年使わないものは一生いらないもの」
じゃあ、写真とか本とか楽譜とかCDとか・・・
滅多に出しはしないけれど、必要じゃないのか?
人間関係も「半年会わないなら必要がない人」というが
そうだろうか?
会いたくでも会えない人もいるし
年に1回とか、数年に1回しか会わない友達だってたくさんいる。
調理器具だって年に一度登場するくらいの大きなおでん鍋とか持っているが
あれがなくては、家族全員が揃った時に
お土産に余りを期待している娘や息子に分けてあげられないし
一度プワーっと膨れる具材をちゃんと料理できない。
其の都度買うには高価だ。
まあ、そんなこんなを考えていると
本当に進まない。
でも、地味に少しずつやってはいる。
最近は手術痕や喘息で肋骨の近辺が痛くなるので
下着難民で、買ってはみるものの、やっぱりダメ、みたいなものが増えて
ちょっと下着入れを整理。
病気になった時に一度泣く泣くやったのだけど
やっぱり捨てられなかったものとかがあったりして・・・。
きれいなレースのキャミソール。
結構収集していたのよね。
それで思い出したことがあった。
7年前(あ、もうすぐ乳がん発覚記念日ですね)
乳がんと判って、色んな音楽の仕事もキャンセルして
1年から1年半くらいはステージには戻れないと思う、と挨拶に回った。
当時は色んなお店に出ていたし
トラを探したり、店長に挨拶をしたり
色んな事で正直に「乳がん、中期だそうでそんなに簡単には現場復帰できない」と。
そう言わない限り「元気にしてるのなら、今日の演奏頼める?」とか
そんな人が多かったし、ファンも多かったから
「出来ないんですよ」と言うしかなかった。
其の件について後輩ミュージシャンの間では
「自分だったら絶対病気のことは隠し通す」と非難を受けていいた。
抗がん剤で髪が抜けだした時
ちょっと気分の良い日にカツラでお店に遊びに行った。
「すごくいいカツラですよね。自分たちは貧乏だからそんなものは買えない。
だいたい医療用ってのじゃダメだったんですか?」と言われたことがある。
また、カツラの留め具が痛くてきれいな大判スカーフを買って
それを撒いていた時もあるが
「スカーフって高いですよね。たかだかハゲ隠しにそんなもの買わなくても」とか。
心無い人達の発言ではあるが
それまでステージに立っていた私にとって
脱毛は本当に悲しかったし、二度とステージに戻れないかも、と
そういう思いもあって、少しでも気分が良いように
家族が気遣ってくれたものだ。
それと、がん保険もしっかり入っていたから
「上等カツラ」も買って、高いスカーフも買って
治療費も十分出るくらいだったし。
何だか嫌だな、と思う日々の中のささやかな楽しみというか
本当に小さなお洒落だった。
当時は健康な人にそういうことを言われて
とても腹が立ったが
今はその人達にちゃんとアドバイスできる。
「まず、がん保険にできるだけ手厚く入りなさい。
そして、検診をマメに受けなさい。
闘病をしていたって女なのだから、おしゃれを楽しめるくらい
それくらいの金銭的にも精神的にも余裕をもっていなさい」
綺麗なキャミソールはスーパーの大きなレジ袋満タンくらい。
サヨナラ、レース。
(レースのものを付けられなくはないが、闘病生活でどんどん肌が弱くなってシンプルで面100%ってのしかダメになっちゃったのよ)