BRING UP

①子どもを育てる。養育する。しつける。②問題などを持ち出す。提起する。

一日一生

2008年11月10日 | Weblog
「一日一生」
酒井雄哉著  朝日新聞出版  700円

  一日が一生、と思って生きる

 行に入ると、毎朝毎朝、草鞋を履いて出て行く。登りが10キロ、わりと平坦な道が10キロ、下りが10キロの道を毎日ぐるぐる歩く。そうして一日山を歩き通して帰ってくると、草鞋がくたびれてボロボロになっている。翌日はまた、新しい草鞋を履いていかないといけない。
 それを、毎日毎日、繰り返していたら、ある時、草鞋が自分に見えてきたんだ。
 草鞋はボロボロになっちゃった。もし自分が草鞋だったら、今日でおしまいなんだなあって。明日になるとまた新しい草鞋を履く。それは、また生まれ変わるみたいだなあって。一日が終わって、また生まれ変わる。草履も人間も同じなんじゃないかなって。
 山をトットコトットコ歩いている時は、動きの世界。一日履いた草鞋を脱いで、お経を上げたり、横になったりしている時は、静かな世界だ。静かな世界が終わると、朝になり、また動きの世界が始まる。動と静っていうのは背中合わせ。動があるから、静があり、静があるから、動がある。
 人生で置き換えるなら、「動」というのは生きること。「静」というのは死の世界。生まれるから死んで、死ぬからまた生まれる。
 今日の自分は草鞋を脱いだ時におしまい。そこからは明日生まれ変わるために、一生懸命反省すればいい。復習するわけだな。今日はなぜこういう悪いことがあったのか。じゃあ明日は二度と再び同じことは起こさないように努力しましようって……。
 そしてまた、新しく蘇って出て行く。今日の自分は今日でおしまい。明日はまた新しい自分が生まれてくる。
 一日が一生、だな。今日失敗したからって、へなへなすることない、落ち込むこともない、明日はまた新しい人生が生まれてくるじゃない。
 それには、今日を大切にしなかったら、明日はありませんよっていうことでもある。今が一番大切だってことだよ。
 今自分がやってることを一生懸命、忠実にやることが一番いいんじゃないのかな。(以上、本文冒頭)

 何かを考え続けていると答えが出迎えてくれる。そのような印象をこの本を手に取ったとき感じた。本屋の新書コーナーで見つけた。作者の名に記憶はなかった。が、写真を見て驚いた。以前NHKスペシャルで見てぶったまげた阿闍梨だった。本になるとは思わなかった。これも時代か。
 一言一言が誰かに説教されるよりも沁みてくる。
 結局どう生きる、なんてグズグズ言う前に「今を一生懸命にやる」これが第一だとわかった。簡単なことだった。