ぶらっとJAPAN

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足の向くまま、気の向くまま。プチ放浪の日々。

超絶刺繍II ~ 神戸ファッション美術館 ~

2015-06-29 22:50:30 | アート

 六甲アイランドには3つの美術館があります。1つ目は昨日ご紹介した小磯記念美術館、それから神戸ゆかりの美術館と今日ご紹介する神戸ファッション美術館です。3館とも歩いて移動できる距離で、半券提示で相互割引が受けられます。(ファッション美術館と神戸ゆかりの美術館は併設)。という訳で、小磯記念美術館と同じ日、神戸ファッション美術館の「超絶刺繍II」展にも行ってまいりました。

宇宙船みたいな美術館。

 いくつかにパートが分かれていて、一番最初はインドや中近東の王族のシャツやスカートといった衣服です。とにかく細かい模様の刺繍がびっしり。あんまり細かすぎて刺繍じゃなくて染物に見えちゃう(^^;)ビーズもびっしり。 王様のシャツなんて、糸が細すぎてどうやって織ったかわからないそうです。はっきり言って、もう見栄と執念しかないわけですよ。熟練した「大量の」技術者と、財力と根気がなければできないし、しかもそんな人たちを自分が着る一着の洋服のためにだけ働かせるっていう、相当な権力者じゃなきゃムリです。解説にも「現代では作成不可能」って書いてありました。

 第二のコーナーは日本の着物。こちらも負けていません。一針一針みっしり鶴やらお花やらが刺繍されていました。友禅と組み合わせてというのがありましたが、はんなりとしてとても日本的な美です。帯も素敵でした。一幅の絵みたいです。葵のご紋がはいった絽の着物がありましたが、徳川家ゆかりのものなのでしょうね。やはり対外的に「見せる」(美しさだけでなく、権力も)ことが必要だったのでしょうか。

 ここまででも十分ため息ものなのですが、今回の目玉は実はこの後の祇園祭りの山鉾と長崎くんちの傘鉾に使われる幕の刺繍です。もちろん大きいのもありますが、なによりその意気込みがすさまじいです。下絵の時点で、彩色からデッサンからすでに力が入ってる。前二つのパートは、最終的に個人の嗜好を楽しませるものだったのに対して、こちらは神に捧げる供物ですから、心構えが違うのです。色味と言い、躍動感と言い、超ど級です。日本人のこの感覚はなんなのでしょうね。宗教と言うのともちょっと違う。でも、自分を超える何かに全精力を持って対峙するこの心持は自然の脅威を身近に感じてきたからなのでしょうか。

超絶刺?Ⅱ-神に捧げるわざ、人に捧げるわざ-

【1】万屋町傘鉾垂 蛸  塩屋熊吉 1848年復元 万屋通り町会蔵 【2】万屋町傘鉾垂 海老 嘉勢照太 2004年復元新調 万屋通り町会蔵 【3】万屋町傘鉾垂 ふぐ 塩屋熊吉 1848年復元 万屋通り町会蔵 【4】長刀鉾下水引「緋羅紗地 五彩雲麒麟図 刺繡」 2008年復元新調  公益財団法人長刀鉾保存会蔵 【5】レティキュール 1830-40年頃 イギリスあるいはフランス 神戸ファッション美術館蔵 1967年 神戸ファッション美術館蔵 【6】女性用スカート(ガガラ)生地 19世紀末-20世紀初頭 インド グジャラート州あるいはラージャスターン州 神戸ファッション美術館蔵【7】イヴニング・ドレス キャロ姉妹店 1909年頃 神戸ファッション美術館蔵 【8】イヴニング・アンサンブル  エルザ・スキャパレリ 1937年頃 神戸ファッション美術館蔵 【9】コート ANREALAGE 2008-09A/W COLLECTION 「夢中」 株式会社アンリアレイジ蔵 【10】松竹梅鶴亀吉祥に蓬菜山文様総刺繍打掛 江戸中期 株式会社キーワーク蔵(ファッション美術館ホームページより転載)

 続く長崎くんちも圧巻でした。浅学で、「長崎くんちって長崎君の家がどうしたの?」とか思ってましたが(笑)、大きなお祭りなんですね。

 金糸銀糸だけでなくビードロや鼈甲など舶来ものを惜しげもなく使ったリアルな魚の刺繍とかなんですが、江戸時代のビードロで作った目玉だけ残っていたりして、とても怖い(^^; くんちは、幕だけでなく、帷子とか前掛けとか人が着るものも見事にデコレーションされていて、これって発想はデコトラと同じだよなぁと思ってしまいました。精霊流しもそうですが、長崎って外国のものに触れる機会が多いせいか、行動がいちいち花火みたい。ぱーっといっとけみたいな、どこか大陸的です。派手じゃなければ、男がすたるぜぃっ。パラリラパラリラ。なんて(笑)。アフリカの鳥だって喧嘩するときは派手な色になったりしますもんね。パワーと派手さは一心同体ってところでしょうか。

 今回、傘鉾「魚尽くし」の復元ということで、現代作家さんが造った魚の長崎刺繍が展示されてましたが、すべての製作に10年近くかかったそうです。現在継承者はおひとりしかいらっしゃらないので、時間かかってしまったんでしょうね。消えゆく技術なんでしょうか。もったいないことです。生活の糧とするには、労力がかかりすぎるということなんでしょう。

 日本の二大祭を見た後は、がらりと変わってヨーロッパの宮廷服の刺繍でしたが、すでにお腹いっぱいの私はほぼ素通りでした。「ベルサイユのばら」にはまっているころなら目が星になって食いつきまくったでしょうが、今はもう「こんなの来ても疲れるだけよね」と夢のないコメントしか浮かばない・・・。あ、でもナポレオンとジョセフィーヌの戴冠式の正装を復元したマントはよかったです。ホントにマンガの世界でした。しかし、縁取りに使われたテンの毛皮の分量の多さにちょっとひきました。これのためにどれだけのテンたちがお星さまになったやら。人間て罪深い。

 結果、日本の祭りは凄い! というところに落ち着きました。祇園祭は来月ですね。ぜひ行ってみたいと思います。

六甲ライナーの車窓。乗るだけでテンション上がります!


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