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ヤエドクダミ・1~総苞片

 宮部みゆき著の『孤宿の人』(新潮文庫)を読んだ。物語は11代将軍徳川家斉の時代、四国の丸海藩(丸亀藩がモデル)で捨て子同然に置き去りにされた6歳の少女“ほう”が主人公。少女の名の由来は“阿呆”の“ほう”で、幼い頃から親に何も教えられず下働きをして育ってきた。丸海藩では流罪になった幕府要人の加賀殿を預かることになり、それと同時に領内では不審な毒死や凶事が続く。領民はこれは加賀殿が持ち込んだ災厄で加賀殿を悪霊として恐れるようになる。“ほう”は加賀殿が幽閉された屋敷に下女として住み込むことになり、少しずつ心を開いていった加賀殿は“ほう”に読み書きやそろばんなどの手習いをさせるようになる。そして加賀殿は“ほう”の名前は“阿呆”ではなく、自ら生きる方向を見つけるという意味の“方”だと教え、更に死を悟った加賀殿は、最後に“ほう”の意味は“宝”だと伝えて壮絶な死を遂げる。
 “ほう”を助ける人々が次々に死んでいき、その先はどうなっていくのかというストーリーに引き込まれ、読みだしたら止まらない。そして読後には大きな感動をもらえる歴史ミステリー小説でお薦めではある。
 写真は堀之内地区の農道に咲く「ヤエドクダミ(八重毒溜)」。ドクダミ科ドクダミ属の多年草で、花弁のように見える“苞(総苞片)”が八重咲きのように変化したもの。下方の苞は緑色の葉に先祖返りしていて、ミドリドクダミとも呼べそうだ。
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ホシギキョウ

 堀之内地区をランニングしていて民家の庭先で紫色の花を見掛けた。そこはそのまま通り過ぎたが、しばらく走っているとまた同じ花を見た。これはきっと名前を調べろということだと思い、花の写真を撮って帰ってきた。調べてみるとこれはキキョウ科ホタルブクロ属の「カンパニュラ・ポシャルスキアナ(Campanula posharskyana)」の園芸種で“アルペンブルー(Alpen Blue)”と呼ばれるもの。原産地はクロアチアで、園芸家のグスタフ・ポシャルスキー(Gustav Poscharsky)が生み出したようだ。花径は3センチほどで「ホシギキョウ(星桔梗)」の和名がある。
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センダン・3~開花

 私は落語が好きで、それも聞くだけではなく読むことも多い。高校生の頃、興津要編の『古典落語(全6巻)』(講談社文庫)や、落語協会編の『古典落語(全11巻)』(角川文庫)が受験参考書と共に本棚に並んでいた。今年1月に発刊された山本一力著の『落語小説集 芝浜』(小学館文庫)の中に“百年目”があるが、その話に栴檀と南縁草のくだりがあるので紹介しておこう。
 芸者遊びを見つかった大店の番頭にその店の旦那(主人)が優しく話す。
 『五天竺のひとつの南天竺には栴檀という立派な木が植わっている。その周りには南縁草(なんえんそう)という名の汚い草が生えている。高貴な香りを放つ栴檀とはまるで釣り合わない。そう思った者が南縁草をすべて刈り取ってしまった。南縁草が無くなると栴檀も枯れた。汚く見えていた南縁草は実は栴檀にとってかけがえのない相手だった。栴檀は葉に溜まった雨水を垂らし南縁草を潤し、南縁草はそのお返しに養分を栴檀の根に送り込んでいたのだ。
 無駄に見えるものでも実は大切な役割がある。持ちつ持たれつの間柄が上手くいってこそ初めて繁栄という果実が稔る。うちで言えば私が栴檀でお前が南縁草だ。店で言えば今度はお前が栴檀で、手代、小僧が南縁草ということだ。栴檀と南縁草はどちらが欠けても繁栄は無くなる。その間柄の大切さを常に忘れないために、栴檀の檀と南縁草の南を合わせて、檀南(だんなん)と呼んでいた。それがいつしか短く詰められて“旦那”と呼ばれるようになった(諸説あります)。云々』
となってサゲに続く。 
 写真は長池公園の尾根幹線口付近で見られる「センダン(栴檀)」。センダン科センダン属の落葉高木だが、話に出てくる香りの良い“栴檀”は“白檀”のことでこの樹ではない。また上記の“南縁草”が何の草かは調べたがわからなかった。
 落語ついでに、以前、私が創作した落語『ナガバノスミレサイシン』をリンクしておこう。お好きな方でお時間があればお付き合いのほどを。
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ナワシロイチゴ

 バラ科キイチゴ属の「ナワシロイチゴ(苗代苺)」。草本のように思えるが、茎が木質化するので落葉低木に分類されている。花が開くのはこれが精一杯で、先端には多数の雌蕊の柱頭が見える。左側の花は既に終わった花だが、雌蕊の周りに役目を終えた雄蕊が確認できる。果実は7月上旬に熟す
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コアジサイ・4~小花

 長沼公園“野猿の尾根道”で見られる「コアジサイ(小紫陽花)」。アジサイ科(←ユキノシタ科)アジサイ属の落葉低木で、先日は株全体の様子を撮影したが、今回は小さな花に注目した。花径はわずか3~4ミリで雌蕊の柱頭は3~4裂している。雄蕊は10本で花弁よりも長く、花糸は淡青色をしている。アジサイの仲間は香りが無いが、コアジサイだけは爽やかな微香がある。先日の記事のコメント欄で、園芸家の故柳生真吾さん(NHK『趣味の園芸』の元キャスター)がコアジサイについて記述されているサイトをご紹介いただいたが、それによると、コアジサイは、他のアジサイの仲間が持つ装飾花が無く受粉の手助けをする昆虫には目立たない存在だが、装飾花の代わりに香りを出すことで昆虫を呼んでいるとのこと。なるほどと納得させられる。
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