私にとっての、もうひとつの特別な存在、Soul Asylum。
彼らの音楽を聴くことは生活の一部で、聴かない日は殆んどない。
Soul Asylumが一躍有名になって、やっと陽の目を浴びたのが、1993年にリリースしたシングル、「Runaway Train」だった。
アメリカで問題になっている少年少女の行方不明事件、“Missing Children”を題材にしたビデオ・クリップだった。
そして、その「Runaway Train」が収録されたアルバム 『Grave Dancer's Union』 は、マルチ・プラチナム・ヒットとなり、一躍スターダムにのし上がって行った。(写真下左)
「Runaway Train」はグラミー賞Best Rock Song賞に輝き、アメリカの人気TV番組“The David Letterman Show” や “MTV Unplugged” などにも出演し、イギリスのDonington Parkで開催されている有名なロック・フェス、“The Monsters of Rock” で、GUNS N' ROSESらと共にヘッド・ライナーを務めた。
Soul Asylumの誕生は、1981年、アメリカ・ミネソタ州Minneapolisで、ギター&Vo.Dan Murphy、ベースKarl Mueller、ドラムスDave Pirnerの3人で、Soul Asylumの前身、Loud Fast Rulesを結成。
パンク・バンドだった。
1984年、ドラムスにGrant Youngを迎え、Daveがリズム・ギターとVo.を担当。
バンド名をSoul Asylumとし、The ReplacementsやHusker Duなどと同じTwin Tone Recordsと契約。
その後、積極的なライヴ活動の末、カレッジ・チャート(CMJ)に徐々に顔を見せだし、1989年にメジャー・レーベルA&M Recordsと契約。CMJの常連となる。
その後Columbia Recordsに移籍し、1992年にリリースした7枚目のアルバム 『Grave Dancer's Union』 からシングル・カットされた「Runaway Train」が記録的大ヒットとなった。
そんな彼らを私が知ったのは、The Replacementsが好きだったからだった。
同郷(Minneapolis)のThe ReplacementsのPaul Westerbergが彼らのことを絶賛していて、どんなバンドなんだろうと興味が沸き、3rdアルバム 『While You Were Out』 を聴いた。
その時は、エネルギッシュでハスキーなDaveのヴォーカルが印象的で、パンキッシュな印象を受けただけだったのだが、その後リリースされた 『Hang Time』 を聴いて、私が本来好きなメロディアス&キャッチーなサウンドを彼らの中に見つけた。
そのアルバムに収録されている「Cartoon」という曲を聴いた時、久しぶりに夢中になれるバンドが現れたと思った。
それからは、過去に遡ってアルバムを購入。聴けば聴くほどいいではないか!
彼らにぐいぐいとハマって行くのに、さほど時間はかからなかった。
その内、ライヴに定評ある彼らのステージが見たくてたまらなくなった私は、来日などあるはずもないと思っていたので(後に「Runaway Train」があれほどヒットするとは誰が予想しただろう・・・)、いてもたってもいられなくなって、アメリカの雑誌を入手してツアー・スケジュールを調べた。
私とSoul Asylumとの初めての出会いは、1993年カリフォルニア州San DiegoのMontezuma Hallだった。
初めて触れる彼らのステージは、それはもう鳥肌ものだった。
熱い! とにかく熱かった。震えが止まらなかった。
既にアルバム 『Grave Dancer's Union』 はリリースされていたが、まだ「Runaway Train」がシングル・カットされてブレイクする前だったし、日本からわざわざライヴを見に来たと言う私のことが余程珍しかったらしく、メンバーもスタッフも皆、めちゃくちゃ驚いて歓迎してくれた。
その後もVenturaとLong Beachのカリフォルニア州立大学で行なわれたライヴを見たのだが、ライヴ前にキャンパス内を散歩していると、ビデオ・シューティングをしているDaveを発見。
「Runaway Train」のビデオ・クリップの撮影だった。今でもそのPVを見る度、その時のことを思い出す。
滅多に遭遇できない貴重な体験をした。
『Grave Dancer's Union』 1992
しかし、彼らの熱いステージが忘れられなかった私は、その年の夏、再びアメリカに発つ。
Spin DoctorとScreaming Treesとの “MTV Alternative Nation Tour” で、ツアー中の彼らに再び逢う。
バック・ステージにDaveを訪ねると、当時Daveと付き合っていた女優のWinona Ryderが、先にツアー・バスから出て来てビックリ!
Winonaのファンでもあった私は、目の前に立つ美しいハリウッド女優に見とれていた。
Daveから紹介された私は超緊張。でも、天下のハリウッド女優はとても気さくだった。
その時のステージは、大きな野外でのステージで席も決まっていたので、間近で見ることはできなかったけど、ジワジワと「Runaway Train」が話題になりつつあったので、まだ彼らのことをよく知らない客たちも、かなり盛り上がって楽しんでいた様子だった。
1994年1月、渋谷でのTeenage Fanclubのライヴを見に行った時にもらった1枚のチラシ。
そこには、“COMING SOON!! SOUL ASYLUM” の文字が!!
心高鳴り、胸躍った。まさか、来日するだなんて!
でもその頃既に「Runaway Train」が日本でも話題になっていて、来日してもおかしくない存在になっていた。
そして4月、日本での嬉しい再会。全公演最前列で、彼らの熱いステージに再び酔いしれることができた。
1995年秋も深まる頃、なんと彼らが再び来日するというニュースが飛び込んできた。
それも、『Let Your Dim Light Shine』 のプロモーションだと言うのだから驚いた。
熱い熱い彼らのステージに再び、こうも早くまた日本で再会できるなんて思ってもいなかったことだった。
大阪と東京でのみのシークレット・ギグ。
新しく加入したドラムスのSterling Campbellを従えての新生Soul Asylum。
アルバムからの曲を交え、聴きたかったナンバーもたくさんプレイしてくれた。
1998年に 『Candy From a Stranger』 をリリースし、その後もツアーを続けるが、2002年、DaveはNew Orleansに移り、ソロ・アルバム 『faces & names』 をリリース。
Jazzのメッカ、New Orleansならではのミュージシャンを従え、彼のルーツとも言える、ソウルフルなアルバムに仕上がっている。
2004年5月、ベースのKarlが咽喉癌で入院したというショッキングなニュースが公表され、10月にはThe ReplacementsのPaul WesterbergやHusker DuのBob Mouldらが参加したベネフィット・コンサートを行なう。
彼の治療が終わり次第、10枚目のアルバムの制作に取り掛かるとのことだが、未だ新しいニュースはなく、バンドは実質休止状態にある。
現在Daveはトレード・マークだったドレッド・ヘアもバッサリ切り、今では一児のパパになっている。
Karlの病気のニュースはショックが大きすぎて悲しかったけど、必死で病気と闘っていると聞く。
そして私は、またいつの日か彼らに再会できることを信じている。
去年、1997年に行なわれた “The Grand Forks Prom” のライヴ・アルバムがリリースされた。
Marvin Gayeの「Sexual Healing」や、“MTV Unplugged” でもプレイした映画 『いつも心に太陽を』 の主題歌「To Sir With Love」も収録されている。
Soul Asylumの曲は、本当に素晴らしい曲がたくさんたくさんある。
そして、私はDaveの声が心から好きで好きでたまらない。。。
『After The Flood : Live From The Grand Forks Prom, June 28, 1997』 2004