怒れる中年

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小出裕章さんの『この国は原発事故から何を学んだのか』を読んで

2012年11月05日 | 原発事故で何が変わったのか

2012年9月10日、幻冬舎から小出裕章さんの本が出されました。タイトルは表題のとおり。
福島原発事故までは、恥ずかしながら、小出さんのことを知りませんでした。
その後、何冊かの本を読んだりする中で、小出さんの主張だけでなく、その真っ正直さというか私利私欲のなさというか、そんなことを感じるようになりました。
今回は、この本に貫かれた信念に圧倒される思いでした。
    
P9240078  

「はじめに」で、小出さんは次のように書きだしています。
「反原発運動は、1人ひとりが自分の意思で立つことが何よりも大切だと思います。私は『人と何をするかではなく、自分が何をするか』というスタンスで生きてきましたし、これからもそうしたいと思います。」(p.6)

まず、この一言に驚かされます。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことの多い日本人についても、鋭く投げかけています。
「外部被曝」より、もっと危険なのが「内部被曝」だと説明しながら、政府が発表した食品の安全性を判断するための暫定基準値について、こう述べています。
「私は、この基準値が妥当かどうかということについて議論するつもりはありません。なぜなら、どんなに度合いが低くても、汚染された食品を食べれば間違いなく被曝してしまいますし、被曝すれば、どんなに少ない線量でも確実に人体を傷つけます。『ここまでは安全』、『ここからは危険』などと線引きすること自体が無意味なのです。…」(p.67-68)と。
   
「暫定基準値を上回るか、下回るかの二元論ではなく、より危険度の少ない食品を選ぶ『柔軟な取捨選択』こそ、今私たちに必要なことだと思います。」(p.68)
    
     
詳しく紹介するスペースはありませんが、随所に、現実を透徹した信念が現れています。
「自分であと始末ができないゴミを生む装置は、ただそれだけの理由で作ってはいけないのです。」(p.89)

「原発は即時廃棄すべきものと思います。2030年まではとても待てない。再稼働などすれば、いつ、どこで、どのような破滅的な事故が起きるか分からないというのに、『たかが電力』のために多くの人々の命を差し出すわけにはいかないと思うからです」(p.95)
   
爆発当時、枝野官房長官は、被曝の心配をする国民に対して、「ただちに健康に影響があるわけではない」と繰り返しました。
小出さんは、「なぜ、このようなことを言い続けたのか」、「それはなぜか」と疑問を投げかけ、「政府・東電が『原発事故をできるだけ小さくみせたかった』からだ」と断言しています。(p.131)
そして、「国民の命よりも、原発すなわち原子力ムラの利権と保身を優先させたという事実を、私たちは忘れてはいけない」と続けています。
   
さらに驚くべきは、「原子力ムラの犯罪」について、「第4章」全体を割り当てていることです。
今まで、どの学者も、ここまでは触れなかったのではないでしょうか。
それこそ、小出さんが「村八分」にされてしまうのではないでしょうか?
紙数が長くなっているので、1か所だけ取り上げますと、次の1節にはどきっとさせられました。
「(政府、東電、学者の)個人責任を厳しく問い、罪状が明らかになれば、刑務所に収監すべきです。・・・誰でも、『間違ったことをすれば罰せられる』ということになれば、今までのような無責任なことはできない。」(p.186)と。
   
ぜひ、小出さんの命がけのこの書を読んでください。
自分で読まなければ分かりません。
   
小出さんは「おわりに」で、こう述べています。
   
「私の人生は敗北の連続でしたし、福島第一原発事故によって私は決定的な敗北を喫しました。事故を防げなかった責任の重大さと、余りにも非力な自分を改めて思い知らされました。」
「先の戦争の時がそうだったように、巨大な流れに抵抗するには命を懸けねばならない時もありますし、一度決まった流れを変えるためには、一人ひとりの揺るがぬ決意も必要です。」(p.220-221)

小出さんのご健康を念じるばかりです。
    
(今、これを病院の中で書いています。みんな寝静まったようです。明日は朝一番に、大腸ポリープを採ります。ポリープが無くなれば、今まで以上に元気になれるでしょう。私は、見過ごされている巨大リスクの一つとして、この1年半、主にダムの問題を調べてきました。3.11でダムが決壊し、7人の人が殺され、今も1才の子どもが見つかっていないという。私の住む寒河江市には、頭の上に巨大ダムがあります。大丈夫か! これをライフワークの一つにする覚悟です。小出さんの後ろから、よちよちと歩いていきたいと思う。)

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