ピアノの発表会の最後に、先生が演奏する時間をとることがある。そこでソロ演奏のみならず、ヴァイオリンとの二重奏をやるという先生も時々いらっしゃって、たまに呼ばれて弾くことがある。通常、ピアノの発表会との関わりは、その程度だろう。
北九州市八幡西区に「アプレシオ・アラ・ムジカ音楽スタジオ」という音楽教室がある。そこの取り組みはユニークだ。
プロの演奏家を招いて、幼稚園児から高校生にいたるまで、大半の生徒に弦楽器とのアンサンブルをさせるのである。
連弾や二台ピアノのアンサンブルならば、特に珍しくはない。だが、弦楽器とのアンサンブルとなるとそうそうない。なぜならば、まず楽譜がないからだ。
それが可能なのは、この教室を主宰している熊本陵平・美由紀ご夫妻のうち、陵平氏が作曲家だからである。毎年せっせと子供たちのために編曲を施して、アンサンブルさせているのであった。
それはすばらしい、と、言うだけは簡単なのだが、実際はかなり大変である。
ヴァイオリンでもそうだけれど、アンサンブルというのは、すっとできる人とそうでない人がいる。なぜか、初めてやるときから、すでにできる人とできない人がいる。できる人は問題ないのだが、できない人はものすごい苦労をするハメになる。
なので、極力易しい譜面を作るのだが、それでもできない人はできない。ピアノがもともと弾けないから、という人もいるけれど、一人ならかなり弾けるのにアンサンブルだとタジタジ、という人も少なからずいる。
弾けなくなるパターンとして、一人だと間違えたら弾き直して先に進む癖がついているため、アンサンブルになると、それができなくてパニックになる、という場合がある。
これはヴァイオリンでもあることだ。初めてオーケストラに入ると全く弾けなくなるという人はざらにいる。そういうことを体験的に弦楽器奏者は知っているから、弦楽器関係は比較的早くからアンサンブルを取り入れたりする。
それがピアノだと、なかなか難しい。演奏者のつてがない、楽譜がない、先生もやったことがない等々。
そこを度胸と実行力でクリアしての熊本陵平氏であった。
だからと言って、生徒さん達の演奏が全てうまくいく訳ではなく、最後まで苦労の連続なのだが、これはきっと何年も続けていくと、どこかで花が咲くはずだ、と確信している。それに、成功してないかも、という演奏でも、子供たちと一緒に演奏するというのは、結構楽しいところがある。
このような試みは、ぜひ続けてほしいし、全国で行われることを希望するものだ。
今年は井財野友人も一部、編曲者に加わった。比較的うまくいったものを二つほどご紹介しよう。
ドビュッシー作曲、「子供の領分」から「ゴリウォーグのケークウォーク」
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サティ作曲、君が欲しい Je te veux.
楽譜等の問い合わせは、アプレシオ・アラ・ムジカ音楽スタジオまで。
Tel. 093-981-8520
E-mail: aprecio_m@izm.bbiq.jp
サティの子、いい感じ。ドビュッシーの子は、ちょっと緊張しちゃったかな?脳みその40%以下くらいで演奏して、あとの60%以上はアンサンブル的な要素にあたまを使う、というのが基本ですよね。
うちの子は、オケの前で初めてドッペルのセカンドを弾かせてもらったとき、途中で落ちてしまって、超緊張した~~!と言っていました。小3、それもいい経験。娘の教室でも、室内楽の授業を数年前から始めているそうです。ソロばかりギリギリやって根を詰めて練習して、という時代ではない、子供たちには、もっと総合的な音楽力を身に付けてもらいたいものです。
カメラのセッティングが悪くてごめんなさい。カメラマンを手配していたら当日になり都合がつかず,目見当で設置したところ,このようにヴィオラが半身になってしまいました。