井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

ツァウベルかツァウバーか

2016-12-31 17:11:28 | 音楽
FMでフルトヴェングラーの第九、二種の録音を聴いた。

私が中学生の時に初めて買った第九のLPがフルトヴェングラーのバイロイト版で、この演奏については、良く知っているつもりだった。ちなみに、CDも持っている。私にとっては、フルトヴェングラー以外の第九を持っている必然性がなかったので、他の盤は一つあったかな、という程度。

当然、その録音が流れると思いきや、同じメンバー、同じ日付で、もう一つの録音がバイエルン放送協会から近年見つかったのだそうで、そちらが放送された。

同じ日付で二種の録音がある理由はわからないという。放送用と演奏会用、あるいはリハーサルと本番…

いろいろ考えられるが、確かに聞きこんでいた、あのバイロイト版とはコーダの演奏法が違った。フルトヴェングラーは、最後のプレスティッシモが異常に速いのが特徴的だが、新発見版はアッチェレランドして、あの速さに至る。
そこから推測すると、新発見版がその日の一回目、世に昔から出ていたのが二回目、の演奏のような気がする。

そしてもう一つの驚きが、1942年のベルリンフィル版。
・戦争中に、こんなに素晴らしいことができていたこと
・いつの間にか、かなり音質が良い状態で聴けるようになっていたこと(昔、この演奏は音質が悪いということで評判が悪く、私は聞かず嫌いであった)
・ツァウベルではなくツァウバーと発音していたこと

最後のは、演奏する側しか問題にしないのだが、外国人にとってはちょっとした問題である。

ドイツ語では舞台語の発音といって、歌や演劇においてzauber, wieder, はツァウベル、ヴィーデルと発音せよ、と学習するのだ。
これは、古い発音に由来するものらしく、現代口語ではツァウバー、ヴィーダーと発音するが、舞台でははっきりさせるために、erをエルと言え、ということだ。

現在の演奏はほぼその舞台語でやっている。だからフルトヴェングラーのバイロイト版をよく聴いたらツァウバーになっていて、少々驚いたものだ。

察するに、二次大戦後の新しい時代にふさわしく、発音も口語体にしようではないか、と提唱していた時代だったのだろう…と勝手に思っていた。

ところが、戦時中もそうしていたということを今日知った。そうなると、私の推測はさらに修正を余儀なくさせる。

いずれにしてもフルトヴェングラーの意思でそうなったのだろうが、その真意はどこにあるのか。

また10年くらいしたら新事実が出てくるかな。

などということを考えた2016年。

お読みくださった皆様、ありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。

来年、もう少し書けるように頑張ります。

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