井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

クライスラー:前奏曲とアレグロ

2011-01-10 22:13:28 | ヴァイオリン

さて、そろそろ書かなければならない時がきたような気がする。曲の解説ではなくて難易度だ。

[前奏曲]

形式がABAの三部形式。A部分が、業界で言うところの「ミシミシ」の語源になったところになる。A部分は四分音符だけで作られ、冒頭6小節24拍を全部ミとシで通すのだから、大した作曲技術だ。

弾く時困るのは、最初だけアクセント記号がついていて、後が省略されているように見えること。A部分全部アクセントをつけて弾くことは、できなくはない。しかし、それを音楽的に聴かせるのは至難の技。パールマンだって、いつの間にかアクセントを止めている。いつ止めるのか、でも楽譜に書いてないのに止めていいのか、常に惑わせる楽譜である。まるでバロックの譜面のよう。

それもそのはず「プニャーニの様式で」と書いてある。何も指示がないバロックの譜面の書き方を踏襲しているのだ。では、プニャーニとは?

筆者も寡聞にしてプニャーニの作品は、偶然数曲を知るのみ。その様式と言っても、少なくとも筆者が知りえた作品とは、全く関連性がみつからなかった。よって、あまりヒントにはならない。

どう考えれば良いのか、あまりわからないので結局は感じたままに弾くことになりそうだ。感じない人にとっては甚だ難しい。

一方B部分はファンタジックだけれど規則性があるし、あまり高音も使われていないので、それほど難しくはないだろう。

[アレグロ]

難しさを感じるポイントは「スピッカート」と「変形バリオラージュ部分」の2点。

・スピッカート

分数楽器でスピッカートは無理なので、弓元に近い部分で短めにはっきり弾く、ということで対処する。スピッカートができるのであれば、この曲はそれほど難しいものではない。

・変形バリオラージュ部分

「バリオラージュ」とは、開放弦と「指を押さえた音」とを交互に弾く場合の呼び名だが、この曲では「指を押さえた音」が2音続いて開放弦が1音という、ユニークな弾き方があり、この名前を仮につけさせてもらった。

実際の音楽は16分の9拍子(16分音符3個の連音を1拍と数えた3拍子)でできているのに、譜面上はずっと4分の3拍子で書いてあること、これが譜読みを難しくしている。これは16分音符9個ごとに線を入れたり、3個単位の最初の音に印をつける等の作業をすれば、大分整理されるはずだ。ただし、最後の3,4小節、減七の和音になっているところは16分の12拍子なので要注意。

これを弾くのに重要な技術が二つ。<移弦>と<分散6度>。

<移弦>

これは左手を押さえないで、開放弦だけの練習(ラミミラミミ)をする。手首の先を動かすようにできればなお良い。

<分散6度>

重音の6度にして音階のように弾けると、困難さは減るだろう。

言いかえれば、6度の重音音階がまだ弾けないくらいの指の力だと、困難を極める。

あとはそれほど難しくはないと思う。

なので筆者の評価では「梅鶯林道1級」、モーツァルトの協奏曲4,5番、ヴィオッティの協奏曲22番と同程度、と見ている。ただ、上述の通り、指の力が弱いと結構難しい。モーツァルトやヴィオッティよりも難しいと思う。


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