マーラーの交響曲の妙な特徴に,前後の交響曲のモチーフが出てくることがある。だから,という訳ではないと思うが,連日第5番を演奏するビータ(演奏旅行)の移動中に,この第3楽章を聞かせてくれた先輩がいた。1985年の秋である。
このビータで筆者はマーラーの5番を8回も弾いた。なのに,さっぱり頭にはいらない。ほとほとマーラーに嫌気がさしているところに,「聴いてみないか」とカセットテープレコーダーごと貸してくれたのだった。毎日マーラーで体力を消耗しているのに,聞きたいなんて思うやつの気がしれない。と,思わないでもなかったが,退屈していたから,それでもありがたく聞かせてもらった。
お陰さまで気付いたことがあった。「これかぁ!」
ウォルター・ピストンの「管弦楽法」という本があって,高校時代から熟読玩味していた。そのお陰で,掲載されている譜例は大抵覚えていた。で,その譜例と御対面?したのである。
一つはcampana in aria(英語で言うベル・アップ),ホルンの朝顔部分を高く持ち上げて吹くところ。
もう一つはティンパニの叩き方。通常,一つの楽器は一本のマレット(バチ)で叩くものだが,この楽章には2本のマレットを同時に使って叩くところがある。楽譜も重音の形で書かれている。
これがまた,バカでかい音がする箇所である。全曲中で一番大きな音がするところだ。実演の時は是非ティンパニに注目しながら,その大音量を楽しんでいただきたい。両腕を同時に打ち下ろすティンパニストの勇姿が目に焼き付くだろう。前後の時間経過を考えると全体の黄金分割点付近でもあり,ここが全曲中のクライマックスと言って良い。以来,筆者の中心楽章も第3楽章にシフトする。
しかし,読響定期の時も,この箇所は目にしていたはずで,なぜクライマックスに感じなかったのだろう?結局,1時間をきる第4番といえども,筆者の頭の中には入らなかった,としか言えない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます