井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

あかいんこ

2009-12-28 22:20:14 | 琉球頌
 「あかいんこ(赤犬子)」とは、沖縄中世の楽聖と呼ばれた人物である。15世紀頃までの沖縄には、歌を作っては歌い、放浪する吟遊詩人のような人々が大勢いたという。そして15世紀末、三線を弾きながら巧みに歌う「あかいんこ」が現れたという。
 沖縄に行くと様々な「赤犬子伝説」が伝わっている。しかし、全てが本人のものではなく、様々な吟遊詩人の話が集大成されたもの、という見方が一般的である。
 さらに、この曲は特にその伝説に基づいたものではなく、あくまでも抽象的な絶対音楽のつもりである。室内楽編成のヴァイオリン協奏曲とでも言うべきスタイルをとっている。独奏ヴァイオリンにフルート(疋田美沙子さん),クラリネット(河端秀樹さん),ヴィオラ(増田喜代さん),チェロ(長明康郎さん),ピアノ(丸山滋さん)の6人で演奏する。長明さんは東京の仕事をいくつも断っての来福,昨日のフォーレでも大活躍。河端さんと丸山さんも東京からの参加で,気合いの入れ方が半端ではない。演奏準備は万端と言って良いだろう。
 内容を敢えて文学的に表現するならば、第1楽章は、「あかいんこ」のルーツはヤマトにあったというフィクション、第2楽章は沖縄の夜の海辺で「野遊び(もーあしび、即興の歌合戦)」における天才ぶりをクールに発揮する「あかいんこ」、第3楽章は現代に通じる「あかいんこ」の精神、活力、とでもいえるだろうか。
 作曲当初から、これはいつかオーケストラに書き直したいと思っていた。それが実現したのは2001年。ハンガリーのサヴァリア交響楽団定期演奏会(指揮:井崎正浩)に招かれた時にオーケストラ版を演奏した。また第2楽章だけ能舞と合わせて演奏する試みも何度か行った。そのような次第で比較的演奏回数の多い作品である。そして折を見て沖縄へ飛び、読谷村楚辺にある「赤犬子宮」に参拝し、霊前に報告することもしばしばである。


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