井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

嬉遊笑覧

2009-12-28 22:24:18 | 琉球頌
 この曲を作るにあたって考えたことが二つある。
 一つ考えたことは、世の中のヴァイオリン曲のピアノ・パートは、音が多い曲が多すぎる、もう少し減らさないとヴァイオリンと対等になりにくい、だから世の中にはうるさい音で弾くピアニストが多いように見えるけれど、あれは作品に問題がある、という見解に立った作品を作りたかったということだ。

 二つめは、小学生でも弾けるように、ということも考えた。ヴァイオリン・ソナタはバロックのソナタ以外は、ほとんど全て大人の音楽になってしまい、二重奏を楽しめる、しかも技術的に困難の少ないものというのはないに等しい。

 それで、ピアノ・パートはほとんど7度以内の指の開きで弾けるようにし、ヴァイオリン・パートも高音域を控えめにした。けれど、やはりラヴェルの「マ・メール・ロワ」や「左手のための協奏曲」には遠く及ばなかったようだ。これについては次の機会に考えたい。

 曲は3楽章構成で、すべて、沖縄の旋律が基になって作られている。ちなみに「嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)」とは江戸時代の本の題名で、当時のわらべうたやこどもの遊びを集めた内容のものである。

 1998年3月に九州作曲家協会「スプリング・コンサート」でも披露した。その際ピアノを弾いてもらった作曲家の二宮毅氏から「5度の下方変位が多いですね」との指摘があった。それまで全く意識しなかったが,そう言われれば確かに多い。偏愛と言っても良い。(皆さんお好きだと思うのだが……そんなことはないか)

 この曲は井財野作品の中で演奏回数が最も多い。そして多くのピアニストから「小学生には弾けないよ」と断言された。しかしここで気づいたのは、彼等は「おもしろく」聞かせるために「速く」弾くのであった。私が考えた小学生用の「のんびりした」譜面は、専門のピアニストの手(目)にかかると、「速い」テンポの曲に見えるようである。私もその「速い」テンポに慣れてしまったので、今さら小学生向きのテンポに戻れなくなってしまった。という訳で、当初考えたことは変容してしまい、次の機会も来ることなく今にいたっている。

 引用した歌は「耳切り坊主の子守唄」「わーっくぁ/あみどーい/牛もーもー」「西武門(にしんじょう)節」「白浜節」。いずれも沖縄では割と有名なわらべうたと民謡。ぜひ聴いていただきたい。


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