〈最低の政治家による、最低の発言〉
喜八さんや、dr.stoneflyさん、luxemburgさん も怒っている。喜八さんは「正気の沙汰ではない」、dr.stoneflyさんは「心底頭悪いというか感性悪いというか」「真面目にコメントするのもアホらしい」、luxemburgさんは「いずれにしても政界から消えてくれ」と吐き捨てる。どちらのエントリからも、あきれてモノが言えないという思いがストレートに伝わってきた。そう……柳沢伯夫厚生労働大臣の、「女性は産む機械、装置」発言の話である。
(他の大勢のブロガーも怒りの記事を書いておられると思うが、ここ3日ほどドタバタしていたためブログを読んでいない。ついさっき、TBいただいたブログや普段よく読むブログなどを覗き始めたところなのである)
私もこの発言について知った瞬間、最低だなと思った。今の内閣、今の国政を牛耳っている政治家の最低ぶりを証明する発言だと言ってもいい。
〈ゴメンですむ話ではない〉
安倍首相は「不適切な発言であるから、厳重に注意した」そうだし、柳沢厚労相も記者団に対して「不適切な発言だったことをお詫びする」と述べたというが、同時に野党や市民団体からの辞任要求に対して、辞める気はないと明言している。「ただちに発言を撤回してお詫びもした」から――だそうだが、ほとんど開き直りとしか聞こえない。何でも謝ればチャラになる、と思っているのだろうか。そりゃ甘いんでないの。
人間誰でも失敗するし、失言することもある。だが失敗にも失言にも、ゴメンですむものとすまないものがあるのだ。たとえば結婚式のスピーチで「新郎の勤め先は今、業績が悪化して大変だと聞きますが」などと言ってヒンシュクを買う類の失言(私の親戚に、これをやって後で周囲から叱られたオッサンがいる)。友人の新しいカノジョの前で、うっかり(友人がまだナイショにしていた)昔のカノジョの話をしてしまうとか。まあ、よほどのことがない限り謝れば許してもらえる。
ゴメンですまないのは、その発言が本人のトンデモナイ価値観や感性に由来している場合。厚労相の発言は、まさしくそれにあたる。女性は生む機械・装置であるの、男性は種馬であるのといった発言は、その人間の深層にそういう意識がない限り決して出てこない。(ちなみに我らが都知事も、その種の失言の多いヒトである)
〈言葉が不適切?!〉
首相も厚労相も、そして新聞等も、「不適切な発言」という。まるで「言葉の選び方を間違っただけだ」と言わんばかりに。
そうではないのだ。たとえ「生む機械・装置」を「生む性」とか、あるいはキレイげに「人類を未来へつなぐ存在」とか言い換えたとしても、同じことである。言葉そのものの問題ではない。
やっぱりね、というのが私の素朴な感想だった。あんたらは、国民を――というか「その他大勢の庶民」を、いくらでも取り替えのきく道具、部品だと(心の底で)思っているんだよね。半世紀以上も前、兵士は一銭五厘(※)で集められる道具であったそうだ。その意識が、今の為政者にも脈々と受け継がれている。
※当時のハガキ代。この値段でいくらでも徴兵できた。余談だが、知り合いに戦争中に「馬の軍医」だったという老獣医がいた(もう故人であるが)。彼によると、人間の兵士は一銭五厘で集められるが、馬はそれよりはるかに金がかかるということで、馬の軍医は人間の軍医よりはるかに大事にされたそうである……。
〈まったく……あんたら正気か〉
「美しい国」の実現のために、庶民は黙々と道具にならねばならないらしい。今は本当に21世紀か。まさか私は、タイムマシンで8世紀に連れて来られたわけじゃあないでしょうね? ルシャナ仏建立のために――それが国創り(たぶん美しい国創り)の一歩だと言われ、おまえ達も幸せになるのだと言われて、庶民が絞り上げられた時代に。
女性は生む機械・装置などという目の飛び出るような発言をする政治家達は、同じ口で国民は国を守る機械・装置と言いかねない。いくら何でもそこまで露骨な言い方は控えるかも知れないが(もっとも頭の程度を見ると、本当に言うかも知れん)、もうちょっとオブラートに包んだ言い方でしゃあしゃあと言うだろう。ちょっと目くじら立てられれば(という感覚のはずだ)、形だけはゴメンと謝り、舌の根も乾かぬうちに似たようなことを言うだろう。先頃「法案上程断念」されたホワイトカラー・エグゼンプションも、国民を(国を富ませるために! 国際競争力とやらをつけるために!)働く機械・装置としか見ていないものだった。
少子化が問題だというなら、国民が子供を生み育てたくなる、そして生み育てたくなる環境を整えるのが政治家の仕事。「公僕」たる政治家は、それ以上のことはしなくたってよろしい。それなのに勘違いして、自分達がご主人様だと思っている連中が多すぎる。自分達は命令する側であり、おまえたちが「自己責任で」もっと頑張れと。喜八さんではないけれど、ほんと「あんたら正気か」。