
腹の立つことが多く、いちいち怒っていたら起きている間中ずっと腹を立てていなければいけないような具合。教育基本法の問題はむろんのこと、防衛庁・省昇格関連法案の衆院通過も、オギノフさん が「人間から『商品』へ」のエントリで怒っておられた労働ダンピング問題も、……そのうち怒るのに疲れて、世捨て人志願のモードに入るんじゃないかと本気で怯えるほどだ。まさか、不満を抱いた庶民が疲れるのを待っているのではないでしょうね……。
一昨日「造反議員復党……これも教育に悪い」というメモを書いたが、これも腹立たしいことのひとつ。今夜はちょっと、想像インタビューをしてみよう。インタビュー相手は復党議員のひとり(特定の誰かをイメージしているわけではない。根っこはみんな同じなのだから)。
――このたび、めでたく復党なさったそうで。おめでとうございますと言っていいのか、ご愁傷様と言っていいのかわかりませんが。
議員「いきなり変なことを言うね、君は。めでたいことに決まっているだろう。これで一層、国政に力を尽くせるようになったのだよ。わっはっは」
――(アナタにそう、張り切っていただかない方がいいんですがね……)
議員「ん? 何か言ったかね」
――いえ、ただの独り言で。ところでセンセイは「安倍総理に感謝している。足を向けて寝られない」みたいなことをおっしゃったそうで。
議員「当たり前だろ。人間、恩義を忘れちゃいけない。恩知らずというのは人間のクズだよ、キミ」
――なるほど。で、安倍総理に頭を向けて寝られるとすれば、足は選挙民の方にお向けになるわけで?
議員「な、何を言うのかね。足を向けてうんぬんというのは、言葉のアヤじゃないか。そのぐらいのこと、学校で習わなかったのかね。だから日本の戦後教育はダメだと言うんだ」
――(あなたよりは日本語の使い方は正しいと思いますけどね。)でも結局のところ、そういうことでしょ。ところでセンセイ、復党なさるにあたって、センセイに投票した国民全員にひとりひとり、「私は復党したいのじゃが、かまわんかね」とお聞きになりましたか。
議員「また、そういう馬鹿なことを言う。キミは投票に行ったことがないのかね? 投票ってのは無記名なんだよ。投票した人間が誰かということもわからないのに、聞けるわけないだろ」
――いえ、いくら何でもそのぐらいわかっています。一人一人に意見聞くのは、不可能ですよ確かに。でも、理屈から言えばそういうことではありませんか?
議員「キミは間違っている。国会議員っていうのはね、国民から委任状をもらって国政に携わっているのだよ。国民全員が集まって意見を出し合い、話し合うのは現実問題として無理だから、代表として議員を選出する。それが議会制民主主義だ。学校で習ったろうが」
――(学校学校ってうるせぇな、このオッサン。あんたよりは真面目だったと思うよ。)習いましたよ。でも白紙委任状を出すのだとは習いませんでしたね。自分の考え方や思想信条に出来る限り近い人を「代議員」として選び、代弁して貰う。議会制民主主義の基本はそういうことだと理解しています。
議員「私も白紙委任状を出せとは言っとらん。地元の後援会などを通して、国民の意見はよく聞いとるよ。それにだね、私に投票してくれた選挙民は、私のことをよく理解して、私なら国のために働けると信じて票を入れてくれたんだ。信頼関係というやつだよ」
――そうですか。信頼関係……ですか。水掛け論になるのでその話はやめますが、センセイは誓約書の中で「総理の所信表明を全面的に支持する」と書かれ、総理に忠誠を誓われたそうですね。これがどうにも納得いかないのですが、議員が忠誠を誓う相手は……忠誠って言葉は好きではないのですが、この際一応使うとしたら、相手は国民でしょう? もう少し狭めれば、自分に投票してくれた人々。忠誠誓う相手を間違えておられませんか。
議員「な、何を言うか。むろん私だって国民のことを第一に考えておるよ。当然だろ」
――(うわ、しらじらしい。)そうおっしゃるなら、そういうことにしておきましょう。ですがね、国民のことを考えるからこそ、総理の方針に対して反対するとか、苦言を呈するなどというのもアリじゃないんですか? たとえ安倍総理が戦後最高の素晴らしい首相であったとしても(自分で言ってて頭痛がしてきそうだな)ですよ、人間は間違いを犯すこともあるわけで。代議員が総理のイエスマンになってどうすんです?
議員「私は国民のことを考えるからこそ復党したんだし、国民のためを思えばこそ安倍総理を支持するんだ。私に投票した人達はわかってくれているはずだ」
――(わかってるはずって……ひとりひとりの意見なんか聞いてられないと言ったくせに。)要するに、ま、「自分を信頼せよ」ということですね。表面的には裏切ったように見えるけど、おまえ達のためにやってるんだから四の五の言わずに自分を信じなさいと。はぁぁ~。
議員「何だねキミ、ため息なんかついて失礼な。それに、裏切ったなどという剣呑な言葉を使って欲しくないね」
――私は日本は一応は民主主義国家だと思っていたんですがね、甘かったようですね。それともほそぼそと息づいてきた民主主義が、ついに殺害されたということですかね……。うわぁ、殺し屋~。
議員「日本は立派な民主主義国家じゃないか。成人は1人1票の権利を持ち、それによって政治に参加している。何処やらの国のような独裁国家ではない。そのぐらいのこともわからんのかね」
――でも、持っているのは投票する権利だけ。投票だけすればいい、後は任せておけ、時には考え方が大幅に変わったり、強引なことをするかも知れないが、庶民は黙っておとなしくしておれ、と。そりゃあ江戸時代なんかとは違っていますが、「議員が変節しようと何をしようと、国民は文句をつける筋合いはない」というのは「殿様が変なことをしても、お代官様が言うことをころころ変えても、民は文句付けられなかった」時代とそんなに変わらないような気が……。お任せ民主主義なんて、そんなのは「豚肉抜き豚汁」みたいなもんで。
議員「キ、キミは私ら国会議員を侮辱しに来たのかね!?」
――(ブジョクって、どっちが。主権者を舐めちゃあ、いけまへんで)
◇◇◇◇
その時、秘書が入室。低い声で「先生、○○新聞(とある全国紙の名前)の方が来られて、もしお時間があったらお話し伺いたいと……」。
議員「おっ、そうか。じゃ、キミ、私は忙しいからこれで」
――え? 最初に約束いただいた時間の、まだ半分も経っておりませんが。
議員「忙しいと言ってるだろ」(と、席を立つ)
秘書「(慇懃無礼な声と態度で)先生はお忙しいので……ではどうぞお引き取り下さい」(おまえがインタビュー載せる弱小雑誌より、全国紙の方が大切なんだよという表情がありあり)
◇◇◇◇
余談――最後の蛇足的エピソードは実体験である。政治家、官僚、企業のエライサンなどの取材の場合、前もってきっちりアポイントメントをとって行ったにもかかわらず、大手新聞社やテレビ関係の飛び込み取材のために20分30分待たされたことも何度かあった(名もないフリーは辛いのだ)。言ってみれば私怨だが、これもやっぱり怒っていることの一つだったりする……。