華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

ムル&トマの「国家あるいは集団」(3)――ウザイッ

2008-04-28 23:50:03 | ムルのコーナー

 くも膜下出血起こすんじゃないかと思うほど多忙で(私のオヤジは40歳を目前にして、くも膜下出血で死んだ。私は彼のように真面目な努力家ではないけれども、やむを得ず多忙になることはままあり、そんなときはふと、自分もオヤジと同じ死に方をするんじゃないかなぁと思ったりもする。それはそれで、ま、いいかって気もあるが)、ブログをほったらかしにしていた。もともと私のブログは単なる寝言だから、さまざまな意味で忙しければ平然とほったらかしにするのである。その程度の感覚でいた方がいい、というのが私のいわば基本的なスタンスだと言っても いい。

 ……というのはいいけれども、ひさしぷりに覗くと……驚きますわなぁ。開店休業なのに、TBをたくさん(そこそこに、と言う方が正確かも)戴いていて、それはホント涙が出るほど嬉しい。とむ丸さんほか……律儀にTB下さる方、ほんとに有り難う。長いことさぼり続けているので訪問してくださる方はごくわずかになっているけれど、その人達に、このブログを経てTB下さっているブログを読んでもらえればこれにまさる喜びはない。て言うか、その程度しかここの存在意義はない、のやけんど。

 いや、驚いたのは、TBいただいていることではない。わけわからないコメントが、ごちゃまんと入っていたことだ。ヒマですなあ……。うちみたいな過疎ブログにまで、律儀に攻撃コメント入れることないでしょうに(笑)。私は基本的にTBもコメントも削除しないことにしているが、記事の内容とまったく関係のないからかいコメントと、署名のないコメントは削除させてもらいました。悪しからず。

 えらく愚痴が長くなった。ちょっとだけ、ムルとトマシーナ(※)に登場してもらいましょうか。

◇◇◇◇◇

トマ:兄貴、おっひさ~。

ムル:何が「おひさ」だよっ。華氏の野郎、さぼりやがって(笑)。あいつ、生きてんのか?

トマ:うふっ。生きてるけどね、仕事忙しいし体調悪いしとかで、毎日「くも膜下出血で死ぬかも」ってギャアスカ言ってるよ。随分昔に、華氏のオヤジさんが、くも膜下出血で過労死してるんだっとさ。

ムル:ふん、過労死するほど働いてねーくせに。あいつは甘ったれの怠け者っていうだけなのさ。死んだら少し地球がすいて、結構みたいなもんさ。

トマ:うふ、言えてる……。まっ、それはいいじゃん。しばらく話してない間に、いろんなことがあったよね。

ムル:そうだなあ……目まぐるしいぐらいだよな。

トマ:たとえば、そう……聖火ランナーがどうとか。

ムル:ああ、あれか……。おいらは猫だかンね、オリンピックなんざ、ほんとのところどうでもいい。

トマ:きゃはっ、華氏みたいなこと言ってら~。華氏はオリンピックが大嫌いなんだってさ。いろんな国の国旗が翻るの見るだけで、蕁麻疹が出てくるって。ナイショだけどって声ひそめて、爆弾投げたいぐらいだとも言ってた。むろんあいつは小心な小市民だから、そんなこと絶対できっこないけどさ。

ムル:ばかやろ、あんな偏屈者と一緒にするないッ。……ま、それはそれとしてさ、おいらはオリンピックなんてぇものに何の興味もない。やりたきゃやれば?てなもんさ。でも、あの聖火リレーを巡る騒ぎだけは、何か居心地わりぃんだよなぁ。

トマ:チベット問題うんぬんで、中国に対する反感が……というやつだね。

ムル:おいらもさぁ、いわゆる「チベット問題」についての中国の態度が正しいとは思わねぇ。ちょっと待てよ、みたいな気は多分にあるさ。ただよぉ、人権とかに関わる問題を抱えているのは、中国だけじゃあねぇ。おいらはさ、あれが中国だから、やたらに問題になったんだと思う。たとえばさぁ、アメリカでオリンピックが開かれるとするだろ? ほかの、ヨーロッパの国でもいいけどさ、あんなふうに騒動が起きると思うかい?

トマ:うん……起きないかも。

ムル:中国って、「敵視」するのに格好な相手なんだとおいらは思う。ちょっと前はさ、その対象はソ連だった。でもソ連は崩壊しちゃったからさ、代わりにどっか無いかと探した結果が中国なんだよな。前のギョーザ騒動だって、その臭いがする。

トマ:何か巨大な「敵」を想定することの必要性……?

ムル:あのなぁ、おいらに難しいことは聞くなよな。何もわかんねぇんだからさ。おいらが喋ってるのは、「生き物のカン」にしか過ぎない。でも、生き物のカンって、そうバカにしたもんじゃあねぇんだぜ。

トマ:はいはいはいはい……。ゴタクはいいからさ、話を続けてよ。

ムル:集団がまとまるためには、「あいつはわりぃ奴だ」という敵が必要なんだ。敵が巨大であればあるほど、集団の結束は固まる。それって、すごく基本的なことじゃんか。でもさぁ、おいら達に必要なのは――そんなふうに集団の結束固めて、それが何なのさという白けた目線なんだと思うんだよな。大切なのは「個々の命」であって、決して「その命が集まった集団」じゃあねぇ。それさえわかってれば、誰もオリンピックなんていう単なるお祭りに熱くなったり、国を守るなんていう馬鹿げた幻想にめくらましされることはないと思うんだけどなぁ……。

ムル:眠くなっちゃった。続きは明日、ね。もしかすると明後日になるかもだけど。

◇◇◇◇◇

※ムル=都の東北を縄張りとするボス猫。華氏の代理であちこちに顔出しておりまする。  トマ=華氏宅の居候で、本名はトマシーナ(坊や猫だが、飼い主?の趣味で女性名をつけられた。ちなみにトマシーナの男性型はトマス)。ムルの腰巾着。

ムルとトマのどうでもいい雑談は、「ムルのコーナー」にまとめてありまする。

 

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ムル&トマの「国家あるいは集団」(2)――忠誠嫌い

2008-03-13 23:43:36 | ムルのコーナー

 

トマ:すっごく間が空いちゃったけど、兄貴、前回の話の続き、する?

ムル:まったく間が抜けてるよなぁ。何の話してたのか思い出せないぐらいだよな(笑)。ま、いいか。毒にも薬にもならない井戸端会議だしさ。ボチボチでも何か考えるってのは悪くねぇし。

トマ:井戸端じゃないよ。公園の池端、だけど?

ムル:あほーーー。井戸端会議ってのはそれ自体がひとつの言葉なのっ。ほんともう、ガキと話してると疲れるワ。

トマ:えへへ。冗談だよーだ。この間は愛国心は趣味みたいなものだとか、国家ってのは不必要善をするから困るんだ、とかって話をしてたんだよね。

ムル:不必要善の話というのは話し出すとどんどん枝葉に走りそうなんで、ちょっと置いといてさ、今夜は「忠誠心」のことでも喋ってみようか。

トマ:忠誠心……兄貴が一番嫌いなものみたい(笑)。

ムル:おまえんちの華氏だって、親のカタキみたいに嫌ってるだろーが。

トマ:うん、そういやあ華氏がね、もう1か月ぐらい前に「忠誠心って何だ」って寝言を並べたんだって。

ムル:ああ、あの屁みたいなブログで。

トマ:その時に、愚樵さんって人が、「忠というのは社会に対する忠誠心。だから現代における忠誠心は、民主主義の原則に対してのそれであるはず」っていう意味のコメントを書いてくれたんだって。それ読んで、華氏は「うううう~~」と唸ってた。「愚樵さんの言ってること、すごくわかる。すごくわかるんだけど、何処か、ちょっと待てよという感じもする。この微かな違和感は何だろう」って。

ムル:で、悩んでたってわけか? ひょっとして確定申告ほっぽり出して?

トマ:きゃははは、まっさかぁ。そんな生真面目な奴じゃないって兄貴も知ってるじゃん? 時々、思い出して首ひねってるだけさ。

ムル:まっ、それはそれとして。……「忠」ってのは、具体的な人間でも組織でも観念でも思想でも何でもいいけど、ともかく自分自身の外に厳然と存在するものに対して、それを仰ぎ見て、身も心も捧げますってことだろうなと……これはまあ、おいらの解釈だけどよぉ。フラットな関係じゃねえよなって気はするな。

トマ:あなたのためなら死んでもいいわ~~ってやつ?(笑)

ムル:ばーか、混ぜっ返すなよな。変な話だけどよ、「忠犬」って言葉があるだろ。

トマ:あっ、渋谷駅前に像ができてる「忠犬ハチ公」。僕はまだ見たことないけど。

ムル:ハチ公はどうでもいいけどさ、「忠犬」はあっても、「忠猫」ってのはねぇよな。

トマ:そういやぁ、そうだね。

ムル:おいらたち猫は、人間を仰ぎ見たりはしねぇもんな。「猫は三日で恩を忘れる」とかって悪口言われるけど、おいらはあれ、結構じゃねぇかと思ってるのさ。どんな生き物でも、「忠○○」なんかになることはねぇ。自己チューで生きてりゃいいのさ。自己チューだからこそ、見えてくるものがあるんじゃないのかな。

トマ:あっ、また兄貴、話がズレちゃってるよ。

ムル:へへ、わりぃわりぃ。ちょぃと話を直線コースに戻そうか。おいらだってさ、その愚樵さんて人の言ってることは、多分、間違ってないと思うんだ。まっとうに考えればそうなんだよなって、おいらも思う。たださあ、何つうか……何かキラキラしたものに対して純愛めいた感覚を持つ時って、そういう自分を嘲笑したほうがいいかもっておいらは思うのさ。

トマ:『目覚めたとき、夢を嘲笑せよ』

ムル:ばかやろ、華氏の口癖を真似すんじゃねぇ。第一その言葉だって、何とかいう詩人の言葉の剽窃じゃんか。ほんと、独創性に欠ける奴だよな、あいつも。

トマ:うふふ。伝えとくよ。

ムル:ともかくもだぜ、おいらは民主主義とか平和とか人権とか、そういうものに対しても「忠誠」を誓う必要はないと思うんだ。ていうか、「必要に迫られているわけでもないのに同じ生き物を殺す」とか、「同じ生き物の間で上下の関係を作る」とか、そういうことっておかしいに決まっているじゃんか。人権とか、そういうものは――あ、おいら達の場合は猫権だな――「当然じゃん」の一言ですむ話だろ。わざわざ忠誠を誓うまでのことはない、とおいらは思うんだよな。

トマ:兄貴って、ほんと忠誠嫌いだね……。華氏も忠義とかって聞くと気分悪くなるらしいけど。『忠臣蔵』なんて、タイトル聞くだけでジンマシンが出るって言ってたな~。

ムル:忠義、忠誠……何でもいいけど、その手の概念には「自分の感覚は置いといて」という匂いがプンプンするじゃんか。あなたさまに下駄預けます、っていう……。

トマ:う~ん。それは兄貴の偏見かもだよ。

ムル:偏見かも知れないさ。でもおいらは「ギリギリのところで、やっぱり『忠』は認められねぇ」って声を大にして言うぜ。民主主義でも人権でもいいけど、それに対して忠誠を誓っているうちは、人間、何度も同じ轍を踏むような気がするのさ。たとえば民主主義でも、「おいらはこれが正しいと思う。微力ながら守るために力を貸すぜ」っていうのと、「おいらはこれが正しいと思う。忠誠を誓います」っていうのとでは、だいぶニュアンスが違うと思わねぇか?

トマ:主体的な関わりかどうかっていうこと?

ムル:おいおい、トマよぉ。そういうウソ寒い観念語は使うなよなぁ。観念語ってさ、使えばそれだけで何か大したことを表現したような気になる。そりゃまあ、その言葉が血肉になってるなら使ってもいいけどさ、何かモノゴトをうまくまとめた気になるために使うなんて、最低だぜ。人間はどうしてもそういうふうに走るけどさ、せめておいらたち御意見無用の猫族は、血肉になった言葉以外は使わないようにしようよな。

(話は中断。ぼちぼち続く)

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ムル&トマの「国家あるいは集団」(1)――愛国心は趣味の範疇

2008-03-03 23:42:16 | ムルのコーナー

  

トマ:兄貴、おっひさしぶり~。

ムル:おんやぁ、トマじゃねぇか。おまえ、生きてたのかよ。

トマ:やなこと、言わないでよ~。華氏が出張とか続いてさ、しばらく、よそんちに居候してただけだよーだ。

ムル:ふ~ん。そっちの方が居心地よかったんじゃねぇの?

トマ:それは言える……でもさ、やっぱしヒトサマの家だからさ、少しは遠慮があるじゃん(笑)。

ムル:汚くても待遇悪くても我が家が一番、てか(笑)。

トマ:ご無沙汰してる間に、おもしろいことあった?

ムル:おもしろいことも、ヤなことも、日々いっぱいあらーな。それはそれとして、おいら最近、ちょいと考え込んでることがあるんだよな。

トマ:何を考えてんのさ? まさか、ナントカの考え休むに似たりってやつじゃーないよね?

ムル:おまえもロクでもない奴と一緒に住んでるせいで、ほんと、だんだん性格悪くなる一方だな……。

トマ:兄貴の影響も受けてるよ。

ムル:むむっ……。ま、いいや。トマ、おまえ「日本」でも「アメリカ」でも「中国」でも、「東京」でも「大阪」でもいいけどさ、好きか?

トマ:わっ、何か、いきなり本題って感じ。えへへ、兄貴が言いたいこと、わかる気がするな~。

ムル:この野郎、ガキの癖に生意気言うんじゃねーや。さっさと答えろって。

トマ:うーん。好きかか嫌いかとか聞かれると、マジで困っちまうんだよね。え? 何それ? って感じ。

ムル:そうそう、その感覚なんだよな。

トマ:兄貴はどうなのさ。

ムル:おいらも「好きでも嫌いでもない」ってやつさ。好きとか嫌いとかいう対象じゃあないんだよな。

トマ:日本もアメリカも中国も?

ムル:もっと言ってもいいぜ。フランスもフィンランドも韓国も北朝鮮もビルマもスリランカもコスタリカも……えーっと、それから……。

トマ:もういいよ、兄貴。夜が明けちゃうから。要するに兄貴は、「国家」というものはどんな国家でも、好きだとか嫌いだとかいう感情の対象じゃないって言いたいんでしょ? でも兄貴は、「国家は嫌い」なんじゃぁなかったっけ?

ムル:うん。強いて言うなら、国家なんていう必要悪的な装置は「嫌い」な範疇に入るけどさ。具体的に日本だのアメリカだのって姿をとって現れると、そうも言ってられないんだよな。で、その場合にどうなのかって考えたわけさ。

トマ:えへへ。兄貴はいつも、「ネコに国境はなーい」なんて豪語してるくせに、ね?

ムル:うっせー!! 国境なんて人間が勝手に自分達の都合で作ったもんだけどさぁ、何せ人間は地球上で一番パワフルな生きものじゃんか。おいら達も、ちょっとは振りまわされちまうわけだからよぉ。考えざるを得ないっつーとこかなぁ。

トマ:で、「好きでも嫌いでもない」っていう結論を出したわけ?

ムル:そう。ヘンッという感じで無視したり、おいらが生きていく上で、別にナンボのもんでもねぇよとちょいと冷たい眼で見る対象。いや、むろん「好きだ!」という人間がいてもいいよ。でも、それは「趣味」みたいなものさ。あくまでも趣味だから、他人に押しつけたりしちゃあいけない。っつーか、眼を吊り上げてぎゃあすか言ったり、他人に押しつけたりするのはヤボだよな。

トマ:愛国心は趣味……ってわけだね。ま、世間サマがちょいと眉ひそめるような変な趣味だって、別にハタが非難する筋合いはないもんね。必要悪に対しては、そういうスタンスでいた方がいいよってことだね?

ムル:必要悪で思い出したけどさ、華氏の好きな山田風太郎が、小説の中で「不必要善」という言葉を使っていたことがある。これって、すごくおもしろい言葉だよな。国家は必要悪だから、「存在していてスミマセン」と肩身狭くしておいて欲しい。それが大きな顔して不必要善をやりまくるってのが一番問題なんじゃねぇかと、おいらは最近思ったりするんだ。

(続く)

◇◇◇◇◇

蛇足:ムル=都の東北を縄張りとするご意見無用の野良猫。トマ(本名・トマシーナ)=華氏宅の居候猫で、ムルの弟分。このコンビのしょーもない掛け合いは「ムルのコーナー」にまとめて置いておりまする。

 

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守屋のオッサン、悪いに決まってるけど

2007-12-04 23:47:22 | ムルのコーナー

 ゴミ置き場の隅っこで野良猫ムルが丸まっているところに、トマシーナがひょっこり顔を覗かせた(※)。

トマ「兄貴、おっひさしぶりぃ~。」

ムル「ん? ああ、トマ公かよ……」

トマ「そんなとこで、なにしんみりしてるのさ。」

ムル「しんみりしてるわけじゃねぇよ。もう寒くて寒くて。せめて風を除けてるんじゃねぇか」

トマ「兄貴ったら、じじむさいなあ。そんな年じゃないでしょ?」

ムル「うるせぇやい。猫は寒がりなのっ。猫はコタツで丸くなる、って言うじゃんか」

トマ「コタツってなーに?」

ムル「げっ……最近のガキはコタツを知らねぇのかよ……。ま、いいや。ほんと久しぶりだよな。元気だったかい」

トマ「うん。まぁね。華氏がバタバタしてるもんで、ご飯食べたり食べなかったりだったけど。それはそれとしてさぁ、人間の世の中って、ほんとヘンだよね」

ムル「な、なんだよ、いきなり。人間の世界のケッタイさなんて、別に昨日今日始まったことじゃねぇだろうが」

トマ「そりゃそうかも知れないけどさ、変だなぁって思うことが、どんどん溜まってくるんだよね」

ムル「いっちょまえなこと言いやがるなぁ。で、いったいどういうことが変なんだよ、おまえから見てさ」

トマ「だからさ、いっぱいあるけど……たとえばさぁ、最近ていうか、ちょっと前から、新聞とか毎日『守屋、守屋』じゃん?」

ムル「ああ、防衛汚職ってやつか。で、それのどこが引っかかるってんだよ」

トマ「うーん。いや、もちろん守屋ってオッサンはひどいなあ、ろくでもない奴だなあ、って思うよ、僕だって。て言うか、人間て汚いことするんだなあという典型だよね。僕ら猫世界じゃあ、考えられないことじゃん?」

ムル「ま、そうだよな。猫に賄賂はねぇもんな。賄賂ってのは、権力ふるえる奴がいて、そいつに取り入ったらズルイことができる、っていう世界でしか成り立たねぇもんなあ」

トマ「でしょ? ああいう話が出てくるっていうのは、人間の世界がそういうズルが出来る構造になってるってことじゃん。その辺の……根本って言うの? オオモトのとこをダメじゃんって言わなきゃいけないのに、たまたま守屋っていう汚いオッサンがいて、山田洋行だっけ、ズルイことすうる会社があって、あいつら悪い奴ですよね~見たいなことで終わってるんじゃないかって、僕はそんな気がするの」

ムル「おまえの言ってることは混線してよくわかんねぇけどさあ……つまり、悪いのは守屋というオッサンと山田洋行っていう会社だけヨ、みたいな雰囲気が気にくわねぇってわけかい?」

トマ「気に食わないってのとも、ちょっと違うけど。そりゃさ、何度も言うけど、あのオッサンもあの会社も悪いのは確かだよ。弁護の余地ないよ。ただね、僕はさ、あのオッサンもあの会社も、『表に現れた汚いもの』なんだなって気がするわけ。やったことは徹底的にダメって言わなきゃいけないけど、個的な悪事で終わらせちゃいけないんじゃないかなあ」

ムル「おまえの言ってること、ますますわからなくなってきたぜ。……ほんともう、おまえは語彙が乏しいからなぁ」

トマ「ほっといてよ~~。モノゴトを自分の血肉になってもいないむつかしい高尚な言葉で説明してみせるなんざ、恥ずかしいことだって兄貴もいつも言ってるじゃんか。僕はこれで精一杯なのっ」

ムル「わかったわかった……続けろよ」

トマ「あのさ。悪い部分を切りました、だから残ったところは綺麗ですって、そういう話はよくあるじゃん? 全体が腐ってるんじゃないかって何となく感じたりする時って、特にそういうことがあると思わない?」 

ムル「うん……ま、変な言い方すれば、すごくいい事件だったかもな。ひでぇ役人がいたってのは政府にとってマイナスだけど、それをしっかり摘発しました、反省もしましたってことになれば、善男善女は安心するわな」

トマ「福田さん、いいヒトだね、って?」

ムル「おまえは単純だなあ……ま、そこまで単純じゃねぇだろうけどさ。マイナスをプラスに転化できるかどうかというのは、ひとつの勝負所だよな」

トマ「それにさぁ、今、すっごく気になることって、防衛汚職だけじゃないじゃん? 新テロ法案とか、人間が気にしたほうがいいことって、いっぱいあるじゃない。それが霞んじゃうんじゃないかなぁ、とかも僕は思うわけ」

ムル「新テロ法案とかに特別に敏感にならなきゃいけない、というわけでもないとおいらは思うがね。それこそ個別の課題に振りまわされることになっちまうだろ。何がよくて何が悪いのか、生きるってどういうことか、何を目指すのか、生き物のモラルって何だろ、……とかその他何でもいいけど、本質的なことというのは多分、どういう問題を通してでも考えられるとおいらは思う。防衛汚職も新テロ法案も知らなくても……いやまあ、知ってるほうがいいに決まってるけどよ、それはモノゴトを判断するには情報は多いにこしたことないっていう話でさ」

トマ「うん?……」

ムル「テレビ観ない新聞読まない、今の総理大臣の顔も名前も知らない、ケータイ持ってない、パソコン使えない、難しい本読むとすぐ眠くなるなんつーバアサンでもさ」

トマ「きゃはっ。華氏のおっかさんだ~」

ムル「バカ、話を逸らすなっての。ともかくそういう状態でも、日常のホントちっぽけなことから、本質を見通したりするのさ。今の日本の人間って、情報追うのでいっぱいいっぱいなんじゃないかなぁ、なんて気もすンだよなぁ……」

トマ「話の筋道が変わってきちゃったけど、たしかにその辺も考えちゃうよね。続きは明日」

ムル「ま、明日か明後日か……そのうちに、な」

※トマ=都の東北を縄張りとする年齢不詳のボス猫。トマシーナ=華氏宅の居候で、ムルの腰巾着。通称トマ。

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ビルマに雨の降るごとく――ムル&トマの対話

2007-09-29 23:47:54 | ムルのコーナー

 相も変わらず、野良猫ムルと腰巾着のトマの真夜中の会話などを――

トマ:ねぇ兄貴、兄貴は「みゃんまぁ」っていう国、知ってる?

ムル:みゃんまぁ? ああ、ビルマのことか……。

トマ:あ、そうそう。華氏もビルマとかって呼んでたけど……でも正式名称はみゃんまぁなんじゃないの?

ムル:あれは1989年に今の軍事政権が強引に呼称変更したものなんだぜ。ビルマの国民でも、認めていない人達、多いんだ。日本とかはミャンマー連邦っていう国名表記を認めてそれしか使ってないけどさ、ほかの国では、ビルマという国名で呼んだり、「ビルマ」と「ミャンマー」を併記するところも多いらしい。おいらはどうせ国境なき野良猫だから国名なんざどうだっていいみたいなもんだけどさ、でもやっぱし、感覚として「ミャンマー」は使いたくねぇなあ、という気がすンだよな。

トマ:ふうん……。

ムル:で、そのビルマが何だって言うんだよ。

トマ:うん。今さあ、すごく大変なことになってるみたいじゃん。僕にはよくわかんないけどさ、反政府デモを起こした市民とか坊さんとかに対して軍隊が武力行使をしたとか何とか。日本でも随分、抗議行動が起きてるじゃん? 全日本仏教会とかも、抗議声明を出したんだってね。

ムル:デモの参加者を警棒で殴り倒したりするだけじゃなくて、銃も向けたんだよな……。 

トマ:そういう話聞くだけで、僕なんかすっごく「怖い」という気がするの。なんで、国民に銃を向けなきゃいけないのさ? 人間はよく言うじゃない? 国を守るために軍隊が必要なんだ、武装が必要なんだって。その理屈も僕にはよくわかんないけど、国民に発砲するっていうのは、わからないなんて次元を通り越してるよ。

ムル:国を守ってるつもりなんだろうよ。たださぁ、そこでイメージされてる「国」は、その地に住み暮らしている人達、じゃねぇんだよ。国体とか政権とかのことなのさ。

トマ:国体……を守るために、国の中に住んでる人達に暴力をふるってもいいというわけ?

ムル:政権にとっては、反対する人間は「敵」なんだよ。そして、軍事政権というのは、要するに「武力」……というか、「力」による支配の形だからなぁ。敵は武力で制圧すべき、ということになって当然なのさ。あいつは敵だ。敵を殺せってやつさ。

トマ:なーんか昔々、一揆を起こしてお城に押しかけた人達を、銃を撃ちまくって殺したみたいな図……。

ムル:何をイメージしてるのか知らねぇけど、人間の歴史の中で、ウンザリするほど繰り返されてきたことなんだぜ。そうそう、村野瀬玲奈さんって人がさ……村野瀬さん、知ってるだろ?

トマ:うんっ! だいぶ前だけど、お嬢さまと一緒に遊びに来てくれた人だね~。

ムル:おまえなぁ……遊びに来たんじゃなくて、死刑廃止の話をしにきたんだけどな……。何聞いてたんだか。ま、いいや。村野瀬さんがブログでこう大書してる

【ビルマ(ミャンマー)の情勢を悲しみをもって見ながら、軍隊と独裁政権は民衆を守らずに自己の暴虐を隠そうとするものだとあらためて確信する。】

トマ:なるほど……。

ムル:軍隊ってのはさ、国家という概念に忠誠を誓う存在であって、個々に息づいている人間……国民と言っても民衆と言っても大衆と言ってもこのさい何でもいいけどよ、ともかくひとりひとりの人間に対して忠誠を誓ってるわけじゃあねえ。上のほうの連中はさぁ、そこんとこをあんまりはっきりさせるとまずいんで、どこの国でもいつの時代でも適当に誤魔化し続けてきたわけだけどさ。

トマ:「愛する者達を守るために~」なーんて言ったりしたわけだよね? ほんと不思議なんだよね……僕たち猫もさぁ、餌の取り合いで争ったりはするけどさ、僕らは軍隊とかって持たないからほんとわかんない。

ムル:ま、人間に猫の真似しろったって無理だけどよ。ともかく「国家」なんてものはもともと取扱注意の危険物だからさぁ、何重にも枷をはめて使わないとほんと危なくって仕方ねぇんだよ。ましてや武装なんかさせちゃあいけない。人間もだんだんそれに気がつき始めたんだと思うな。ミンシュシュギという考え方も、要するに国家を暴走させないために最もいい方法として選択されたんだとおいらは思ったりするんだ。

トマ:でも、まだまだ武装し、こわもてで通そうっていう国もある……。

ムル:日本だって、ヒトのことは言えねぇんだぜ。dr.stoneflyさんっていう人のブログに、こんな一文があった。

【ミャンマー軍事独裁政府は近い将来の日本政府の姿と重なる。】

トマ:兄貴もそう思うわけ?

ムル:ほんとに民主主義国家か、って聞かれるとさ、つい考え込んじゃうようなところがあるからなぁ。そりゃさ、カタチは一応、それらしくなってるさ。でもなぁ……ま、その話してると長くなるから、別の時にゆっくり話すけど。それに何よりさ、「こわもてになりたいよぉ」の政治家とか、競争や自己責任のだーい好きな政治家がうようよしてるじゃんか。「優しくなければ生きている資格がない」のは、何もハードボイルドの探偵だけじゃねえんだぜ。国家ってものこそ、「優しくなければ存在する資格がない」とおいらは思うんだよな~。

トマ:なんで急にフィリップ・マーロウが出てくんだか……。

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「看板」だけ替えて誤魔化すんじゃない!――安倍辞任劇

2007-09-12 23:48:24 | ムルのコーナー

 ようやく涼しくなってきた水曜の夜更け。古ぼけたマンションのベランダの隅で、野良猫のムルと、その弟分・トマシーナ(トマ)が喋っている。

(こいつら、何者だ?という方は、このエントリの最後のところを御覧下され)

ムル:やぁ、トマ。しばらくぶりだな。痩せたんじゃねぇか? 夏バテかよ。

トマ:うーん。ここんとこ2か月ぐらい、華氏の奴があんまり家にいなくてさぁ……2日ぐらいなんも食べてなかったり。ときどき華氏の友達ってのがご飯くれに来たりしたけど、それもアテにならなくてさぁ。

ムル:むっせきにんだなー。後足で砂かけて、家出しちゃえよ。どうせ住み心地のいい家じゃねぇんだしさ。

トマ:でもねー。一宿一飯以上の義理があるから、黙って消えちゃうのも悪いしね~。第一、これからだんだん寒い季節に向かうし……。春になってから考える。

ムル:ちぇっ、だらしねぇ野郎だな……。

トマ:そうそう、無責任って言えばさぁ、首相が辞めるんだってね。夕方、外を歩いているオジサンオバサンが、「無責任だよな」みたいな話してた。

ムル:大恥かいたって感じはあるよなぁ。参院選で負けて、それでも「辞めない」って大見得切って、所信表明演説だか何だかまでやって、いきなり「ボク、もうやってらんない」だからさ。誰だって「何だ、あいつ」と思うよな。

トマ:ねえ兄貴、安倍首相が辞めるっていうのは、いいことなんだろうか。

ムル:な、何だよ、いきなり「ムチャクチャ素朴な」質問するなよなー。

トマ:安倍首相ってさ、美しい国だとか戦後レジームからの脱却とか、聞いてる方がシラケるようなヘンテコなことばっかり言う人だったじゃん? 憲法改定にイノチ賭けるみたいなこと言ったりしてさ、自分はこの国のゆくえを決められる立場にあるんだみたいな勘違いしてる人間だったよね。だから辞めるって聞いて、一瞬、「あ、よかったじゃん」と思ったんだけど……でもよく考えてみたら、あのヒトが辞めたらそれで世の中OK、なわけじゃないんだよね。

ムル:そうそうそう。安倍晋三っていうグランパ・コンの坊ちゃんは、確かに問題多い政治家だとおいらも思うぜ。たださ、安倍だけがロクデモナイ奴、というわけじゃあない。前の小泉もそうだったけど、安倍にしても、おいらは「出てくるべくして出て来た政治家」だと思うんだよな。自民党の鬼っ子だったわけじゃあねぇ。

トマ:次の首相は誰か、とか賑やかだけれど、誰がなっても同じってところはあるよね。

ムル:むろん少しずつは違うだろうけど、所詮は「赤トラ猫」と「黒トラ猫」の違いぐらいだよな。でも、目先が変わると、つい「あ、世の中変わるかも」「あ、今度はいいかも」ってすぐ期待しちゃったりもする。

トマ:期待しちゃったりするって……誰がよ?

ムル:誰ってこたぁないさ。誰でもそういうところがあるっていう話。

トマ:そう言えば、安倍首相は辞任表明の記者会見で、「現政権の路線を推し進めるためには、自分が首相であることが障害になる。新しい首相のもとで継続してもらうべきだと思った」みたいなこと言ったんだってね。

ムル:看板だけ替えようってわけだな。魅力がなくて客にそっぽ向かれてる店が、品揃えどころか内装も替えないで、店の看板だけ目新しくしたり、店の前に置くマスコット人形だけ新しくしようっていうのと同じ。姑息なんだよな~。

トマ:それでも、期待する人が出てくるわけ?

ムル:多分、な。次の首相は、安倍政権の「過ち」とやらを――わかりやすくて、実はちっちゃなことだけ取り上げてさ、「安倍首相はこういうところがよくなかった。ワタクシはそういう過ちは繰り返さないように気持ちを引き締めて……」とか言うだろうさ。でも「路線そのものは間違ってませんでした」ってね。

トマ:変なの……。おかしいのは「路線」そのものなのにさぁ。

ムル:路線、なんてぇのはわかりにくいからね。たとえばだよ、「子供というのは家畜と一緒で、飼い馴らすべきである」という方針を持った学校があるとするだろ。で、生徒を殴ったり脅し上げたりして教育して、さすがに問題になって校長が辞任したとするだろ。次の校長はぐーんとソフトなイメージで、「体罰などは絶対許されることではありません」と言ったりする。でも「飼い馴らし」の方針は全く一緒で、殴ったりする代わりに、巧妙な洗脳教育を始めた……。おまえ、どう思う?

トマ:相変わらず、兄貴のたとえ話ってわかりにくいし、何となくピントもはずれてる気がするけど……ま、いいや。要するに「表面だけ変わったって、モトが同じなら一緒じゃん」って言いたいわけだネ。

ムル:なーんか、ヤな奴だな、おまえって……。

トマ:へへへ。兄貴が変なたとえばっかりするからだよーん。

ムル:もうひとつ、怖いのはな。「安倍さん、カワイソウ」ムードが出てくることだよな。

トマ:えっ??? そんなもん、出てくるの?

ムル:知らんよ、そんなもん。おいら予言者でも政治評論家でもねーもん。ただ、出て来たっておかしくはねぇ。日本人の特性……かどうかは知らねぇけど、すごすごと尻尾巻く相手を、何処までも追及できないんだよな。すぐ「カワイソウ」「そんなに責めなくても」になっちまう。そりゃさぁ、惻隠の情ってのはすごく大事だよ。おいらも好きさ。でも、誰に対してもズルズル惻隠の情をかけちゃうのがいいことだとは、おいらは思わねぇ。特に公的立場にある人間に対しては、とことん厳しくしないとダメだと思うんだよな。

トマ:惻隠の情、かぁ。「死者に鞭打たない」なんてのも、それと関係あるよね。

ムル:むやみに鞭打つのがいいとは言わねぇけどさ、打つ時、打つ相手に対しては、容赦をしちゃあいけないのさ。その辺を「ま、すんだことだし」って言ってると、いつまでもいつまでも同じことが繰り返されるとおいらは思うんだ。

◇◇◇

ムル=都の東北を縄張りとするボス猫。  トマ=華氏宅の居候で、ムルの腰巾着。

このコンビの思いつくままの対話は、「ムルのコーナー」の中におさめております。

 

 

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ああ、愛国教育――教育3法成立(2)

2007-06-23 23:44:58 | ムルのコーナー

 3日前のエントリの続き。「教育改革関連3法」に関する、野良猫ムルと弟分であるトマシーナとの会話――

トマ「兄貴、お帰りなさーい。教育3法の話でさ、さっき兄貴は教育委員会が『指導の不適切な教員の、認定や研修をおこなう』ってことになったのを、共謀罪と一緒だって言ったよね。ほかにもどういうとこが怖いの?」

ムル「だからさぁ、言ったじゃんか。全部怖いんだって。『ここはいい』『ここがダメ』っていう話じゃあないんだぜ。法律とか制度の話になると、よくそういう議論になるだろ? でもそいつはちょいと違うんじゃねぇか、とおいらは思うんだよな。そりゃあさあ、弁当でもこしらえようってんなら、シャケの切り身はもっと大きい方がいいとか、漬け物はナスの芥子漬けよりキュウリの柴漬けの方がいいんじゃないかとか、かまぼこも入れた方がいいんじゃないかとか、そういう話は成り立つだろうさ。だけどよ、法律とか制度とかは『何のために』『何を規定するのか』ってことが一番大事でさぁ、そこんとこがおかしければ、部分的に『ま、いいんじゃない?』みたいなものがあってもダメなのさ」

トマ「また兄貴、変なたとえをして~~。でもお弁当だって、目的かどうかはしらないけど、作る時はどういう弁当にするかっていう青写真みたいなものはあると思うよ」

ムル「あは、そう言われりゃそうだよな。洋風弁当にしようとか、中華弁当にしようとか。幼稚園児向けの弁当と、高血圧のオッサン向けの弁当とでは、コンセプトっつうのかね、どんなもの作るかが違うだろうし。法律とか制度の問題の場合は特に、そこの基本部分をよーく睨んでみねぇとな。ところがさ、実際には枝葉の部分ばっかり議論の対象にされちまう。随分前に出来て、もうすっかり定着した消費税でもさ、ほんとは消費税そのものの是非がずっと議論されるべきなのに――いや、議論はされてるんだろうけど、それよりもすぐ何%が適切か、なんて話になっちまうだろ」

トマ「兄貴はすぐ話が逸れるんだよな……。教育関連法に戻してよ。つまり、そのコンセプトがおかしいというわけだね?」

ムル「うーん。アブナイ、と言った方がいいだろうなぁ。ケンポーカイセーに血道あげるグランパ・コンの首相が、シャカリキになった法律だぜ、これも。安倍内閣は数を頼んで、重要な法案を次々とごり押しで通してるだろ。いったい何を狙ってるんだって、思わねぇほうが不思議さ。おいら猫だからむつかしいことはわかんねぇけど、危ねぇぜってビビッとくる。こういう『ビビッ』って、大事だと思うんだよなあ」

トマ「でもやっぱり、具体的にたとえばどういうところが、って話をしないと、わかりにくいじゃん。基本がダメということは別にしてさ」

ムル「うん、そりゃそうだ。枝葉の部分をひとつひとつチェックすることで、危なさがはっきり見えてくるってことはあるわな。じゃあもうひとつ、ゲゲッと思ったところを挙げとこうか。そうだな……たとえば『愛国心の表記』ってやつはどうだ?」

トマ「学校教育法に、『我が国と郷土を愛する態度を養う』と付け加えたってやつね」

ムル「愛国心教育については今までおまえとさんざん喋ったし、華氏も書いてるから、今さら付け加えることはないよ。たださ、日本の国民はどんどん押しまくられてるなぁという気はする……。あちらさんは着実に、駒を進めているんだなって。王手をかけられた時は遅いんだぜ。将棋と違って盤面がはっきり見えないから、戦局が切羽詰まってきているのもわかりにくいんだけど」

トマ「まだ、何かできることはあるの?」

ムル「一揆を起こせ、と言いたいとこだけど……まぁそれは猫の寝言。ひとまずは目の前の参院選……なんだろうなあ……」

 

◇◇◇◇◇◇「愛国心」関連エントリを幾つか

愛国心はなぜ危険か」、「法律以前の問題?」、「教育改革って何だ?」、「愛国心教育に反対する・その他」、「教育基本法改定にムカつきながら抗議する」、「あなたに守ってもらわない決意」、「態度を養う怖さ」、「忠誠って……相手が違うでしょうが」、「恩という言葉のまやかし

◇◇◇◇◇◇

 戸倉多香子さんを応援しています。

 

 

 

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「不適格」という脅し――教育3法成立(1)

2007-06-20 23:54:40 | ムルのコーナー

 自分でも何が何だかよくわからないほど忙しい。私はどちらかといえば寒さより暑さに弱い人間で、この時期になると本当は冬眠ならぬ夏眠に入りたいぐらいなのだが……。朝早く出て深夜に戻り、移動中に寝ているようなせわしない出張だのが続き、インターネットに繋いだのも数日ぶり。ついでに?自分のブログを開いて、更新していないとTBがわずかしか来ないことにやっと気付いた。考えてみれば、そりゃそうだ。TBというのは、こんな記事を書いたのでよかった覗いてくださいネ、というメッセージ。開店休業状態となれば「誰も立ち寄らない所に送ったってムダじゃん」的な気分になるだろう(そんななかで、律儀に送って下さるとむ丸さん、ありがとう。感謝でございます)。

 何もせずにTB下されと言っているのも、何かもの欲しげでヤなので……たまには簡単なメモでも。まとまってモノ考える気分的余裕はないんで、野良猫・ムルと、弟分のトマに喋らせることにしようか……。

◇◇◇◇◇

トマ「ねぇ兄貴、教育改革関連3法っていうのが成立したんだってね」

ムル「ああ、またしても強引に通しやがったみたいだな」

トマ「今の与党って、すごいよねえ。誰が反対しようと数の論理でどんどん通すんだもん。野党なんていちおう民主主義国家ですう、というアリバイのために置いてるというか、ものを言わせるだけじゃん、という気がしちゃう」

ムル「へへ。素朴な感想ってやつかい。でも今の国会見てたら、確かに野党の存在なんて所詮はアリバイじゃんという気分にもなるよなぁ。与党にあれだけの議席を与えた選挙民、つうの? 要するに日本人がツケを払わされ続けてるんだよな」

トマ「安倍内閣は、教育3法をこの国会の最重要課題だとか言ってたそうだね」

ムル「ある意味、そうなんだろうなあ。あの法律はさあ、教育と直接関わりのない国民はそんなに関心ないみたいなとこがあるけど、すっげー怖い法律なんだぜ。安倍内閣の体質がもろに出てる」

トマ「安倍内閣の体質?」

ムル「自民党の体質と言ったほうがいいかな。いや、それよりもっと端的に、時計の針を戻そうとしている連中の体質、と言うのかな」

トマ「どんなところが?」

ムル「うーん、どんなところがと言われても……怖さが山盛り、っていう感じなんだけどさ。ひとつふたつ例を挙げてみようか。たとえばさ、改正教員免許法で、教育委員会が『指導の不適切な教員の、認定や研修をおこなう』ってことになったろ? これって怖いことだと思わねぇかい」

トマ「うん」

ムル「今度、教員免許状の有効期間が10年、てことになったろ?」

トマ「うふふ、有効期間があるなんて、なんか運転免許みたいだねー」

ムル「免許の更新っていうのは、それ自体は悪いとは言い切れないさ。有効期間があったって別にかまわないとおいらは思う。たださぁ、その更新に、なんで国が介入してくるんだよ?という話さ。不適切だと認定された教師は免許状更新講習を受けられず、免許状が更新されないってことが起こり得る」

トマ「確かに『不適切』な教師っているかも知れないけど、上の方がそれを判断するのって怖いよね」

ムル「そうそう。不適切の基準がはなはだ曖昧だっていうのは、前々から言われてるけどさ。そりゃそうだよ。曖昧にしといた方が、いくらでも範囲を広げられてオカミには都合がいいもんな。そりゃ最初のうちはよ、誰が見ても『どうかと思うぜ』みたいな教師が槍玉に挙げられると思うよ。で、『普通の、真面目な教師には関係ないのね~』と思わせる。為政者がいつも使う手だな。共謀罪と同じさ」

トマ「で、そのうち上の方にとって都合の悪い教師に『不適切』の烙印が押されるっていうわけだね」

ムル「そんな乱暴なことが起きるはずがないっ、ていう意見もあるかも知れないけどよ。それは甘いと思うぜ。つい半世紀ちょっと前に日本でどんなことが起きてたか考えたら、ゾ~~ッとするじゃん。少なくとも『解釈次第でどうにでもなる可能性がある』というだけでも、大変なことだとおいらは思うな。為政者に『解釈権』なんか与えちゃあいけないんだ。為政者の権限なんてものはさ、出来るだけ小さくして、みんなで『監視』しとかなきゃ」

トマ「あは。国に監視されるなんて、話が逆だよねー」

ムル「人を見たら泥棒と思えなんてくだらねぇコトワザがあるけど、それを真似て言うなら、『為政者を見たらろくでもないことする奴だと思え』だな」

トマ「兄貴って性悪説のヒト、じゃない、ネコだね~」

ムル「人間含めて生き物については性善説、ただし権力握った連中については性悪説って言ってくれよな。権力は腐敗するなんていう言葉があるけど、確かにそうなんだよな~」

トマ「それにしても、解釈によってどうにでもなるっていうのは気持ち悪いよね」

ムル「そう。何が対象になるかわからなきゃわからないほど、萎縮するからな。朱元璋っていうオッサンがいてさ」

トマ「え? え? 誰それ。兄貴の友達イ?」

ムル「ばーか。600年以上も前の、明ていう国の皇帝。このオッサンが粛清に『文字の獄』を使ったんだ。文字の獄ってのは、いろいろな文書のなかにさりげなく体制批判が隠されているということで書き手を処罰する方法でさ。そういうのは何処の国でもあったし、特に中国は漢字の国だから昔よくあったそうだけど、このオッサンのは特にすさまじかったらしい。天に道あり、って文書を、道は盗と同じ音だから皇帝を盗賊扱いしたものだとか難癖つけたりしてさ」

トマ「ふ~ん。兄貴、ネコのくせにガッコ行って東洋史でもやったの~」

ムル「隠居ネコからの聞きかじりに決まってるじゃんか。だから詳しいことは知んねぇけどさ。ともかく何でもこじつけられちゃうというか、何が引っかかるかわかんないから、その頃の役人とかは完璧に萎縮しちゃったそうだ」

トマ「わかったわかった、知ったかぶりでむつかしいこと言わなくたっていいよ、兄貴。よーするに、オカミに解釈権持たせとくと、何がよくて何がいけないかわからないから、みんなおとなしーく上の顔色見るようになるんだって言いたいんだろ?」

ムル「やな奴だな、おまえ。何かどんどん華氏に似てきやがる。 ま、いいや。そーゆーこと」 

トマ「国はガッコの先生を、ハイハイということきく羊ちゃんにしたいんだねえ」

ムル「おいらは国民じゃねぇけど、他人事ながらだんだん不安がつのってくるぜ。……ちょっとその辺でメシあさってくるから、続きはその後で、な」

――続く

◇◇◇◇◇◇

 戸倉多香子さんを応援しています。

碧猫さん作成の護憲パンダ・バナー

 

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「息苦しさ」の一歩手前(UTSコラム再掲)

2007-05-29 23:51:18 | ムルのコーナー

 Under the Sun ではほぼ隔日の割合で、メンバー有志のコラムを載せております。ときどき更新があった方が覗いてもらいやすいから――という理由で始めたものですが、十人十色のコラムを楽しんでいただければ幸いです。今月のタイトルは「あつくるしいもの」。

 自分のブログのエントリ代わりに(さぼって)、そちらのコラムの冒頭部分を再掲しておきます。

◇◇◇◇◇

「トマよぉ、いるか?」
 築後20年以上経つらしい、かなりくたびれたマンションの1階の片隅。半ば開け放された窓から野良猫ムルが首を突っ込んで呼ぶと、トマシーナ(通称トマ)がすっ飛んで来た。
「あ、兄貴。こんばんは~。何か元気ないけど、どうしたの」
「今日は全然、食い物にありついてなくてさぁ。腹が減って腹が減って。シャケ弁の残りか何かあったら、ちょいと戴こうと思ってさ。華氏に聞いてみてくんない?」
「うーん。今はダメだと思うよ。机に向かって頭抱えちゃってるから。下手に近寄らない方がいい雰囲気」
「頭抱えてる? なーんでまた」
「Under the Sunのコラムの日だっていうこと、ころっと忘れてたんだって。で、慌てて唸ってるわけ」
「相変わらずバカだなぁ、おまえんちの華氏の奴。……頭抱えて唸ったって、何も出て来やしないから諦めろって言ってやんな。無から有は生じない。これ、天地開闢以来の真理だぜ」
「そんなこと言わないでよぉ。可哀想じゃん。できれば手伝ってやりたいけど、僕もなかなかアイデア湧かなくてさ」
「へえ……おまえも結構ヒトが……じゃないや、ネコがいいんだな」
「だってやっぱりさ、一応食わせてもらってる義理もあるしィ」
「へへへ、義理ときやがった。義理堅い猫なんて、何か『マルキシズムを信奉する王様』とか『老後の心配をする少年』みてぇだな。あるのかよそんなもん、てな感じ」
「いーじゃん。あ、そうだ。兄貴、考えてやってよ」
「げっ、なんでおいらが……」
「兄貴、ヒマでしょ? それにさ、兄貴のおかげでコラムが仕上がったら、喜んで何か食べるもの用意してくれると思うよ」
「うーん。ま、いいか。……ところであのコラム、お題ってやつがあるだろ。今月は何なんだい」
「あつくるしいもの、だってさ」
「きゃはははは。あつくるしきもの、無い知恵を絞ろうとして七転八倒する華氏。貧乏揺すりの膝が机の脚にぶつかる音、冷や汗で濡れた髪が額に貼り付くさまも、いとあつくるし」
「もう……少しは真面目にやってよぉ」
「わ、わかったわかった。ベソかくんじゃねぇよ」

……というわけで、今回は都の東北を闊歩する牡猫・ムルと、その腰巾着のトマがひねり出した「あつくるしいもの」でございます。え? そのコンビの方があつくるしいって? す、すみません……。

◇◇◇◇

 御用とお急ぎがなく、続きを読んでやってもいいぞ、という奇特な方がおられましたら、こちらへ。

 

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「うるさい、黙れ」がリーダーシップ?

2007-04-07 01:19:44 | ムルのコーナー

 久しぶりの登場。都の東北をうろつく野良猫・ムルと、その腰巾着で華氏宅の居候・トマシーナ(通称トマ)の会話でございます。(こいつら何だ?と気になる方は、エントリ末尾をご参照のほど)

トマ:ねえ兄貴、人間て「まぞひすと」なのかなぁ?

ムル:な、何だよ、いきなり。おまえ、マゾヒストなんて言葉の意味、わかってんのかよ。

トマ:だってさあ、これ見てよ(と言いながら、前足でしわくちゃになった新聞の切り抜きを広げる)。毎日新聞のさ、世論調査ってやつ。

ムル:ふ~ん。都知事選の世論調査か。なになに、現職の石原優勢……。

【(投票で最も重視する基準で)「公約やマニフェスト」を挙げた人が最も支持するのは、政策の数値目標や達成期限を示している浅野氏だった。これに対し石原氏は、「指導力」を重視する層から7割の支持を集め、依然として「強いリーダーシップ」が評価されている。「経歴や実績」「人柄やイメージ」「改革への意欲」を重視する人からも高い支持を得た。一方、新知事に最も取り組んでほしい課題は、福祉政策が44%でトップ、教育問題30%、雇用・景気対策17%と続いた。浅野氏は厚生官僚の経験から「福祉は私の本籍地」と訴えるが、福祉政策を望む人たちが最も支持するのは石原氏。教育問題に取り組んでほしい層では、学校式典での「日の丸・君が代」徹底を進める石原氏が6割弱の支持を集めた。】(毎日新聞記事より)

トマ:今の都知事を支持する人は、強いリーダーシップを評価してる、っていうけどさあ。……いや、リーダーシップっての、よくわかんないけどね。僕なんか、単に「えらそーな人」っていう印象しか持てないんだけどさ。

ムル:そっ。マッチョの典型だよな。てめぇら、文句あるか~!って人を怒鳴りつけるしか能が無い。自分の息子を「余人をもって代え難い」と言ったそうだけど、実のとこ、自分のことをそう思ってるんだろうなって気がするよな。「うるさい、黙れ」ってブチ切れたりしてさ。まっ、おいら達猫族から見れば、最も理解しがたい存在だよな。

トマ:何かもう、僕なんか素朴に疑問なんだよね。「ごちゃごちゃ言うな、オレの言うこと聞いてりゃいいんだ!」ってこわもてで押し通されて、それを「いいじゃ~ん」と思うなんてさ、やっぱりマゾヒストなんじゃない?

ムル:へっ。マゾヒストか何か知らねぇけどさ、そういうとこ、あるのかも知んねぇなあ。厚かましいほどの大きな声とデカイ態度を示されると、その自信たっぷり具合に思わず「はいはい」と言っちゃう。あ、コイツについてったらとりあえず食いっぱぐれないかも、と思っちゃう。おいら達猫族には信じられないけど、群れ動物にはそういうところがあるのかも知んねぇ。

トマ:人間て、群れ動物なの?

ムル:知んねぇや、そんなこと。おいら達にはどうでもいいことで、勝手にやってろてなもんだしさ。たださぁ、群れ動物じゃないおいら達だって、そういうとこがあるかも知んねぇ。よくわかんないけど自信たっぷりなボス猫が現れてさ、「オレの言うこと聞いてりゃ、エサに困ることねぇぞ」っと喚けばさ、つい「あ、ちょいとついてってみよーかな」と思うだろ? おいらも何度もそういうこと経験したさ(恥)。ま、究極的にはなーんも信じてないご意見無用動物だから、とことん引きずり込まれることはないにしてもよ。つい、ふらふらっとしたりさぁ。

トマ:えらそーに言われるとコロッとなびくって、すっごく悲しい……。

ムル:ふン。おまえも人間と一緒に暮らしてるうちに、妙にセンチメンタリストになりやがったなぁ。

トマ:福祉政策を望む人が石原支持、ってのも、僕はどうしてもわかんないんだよね。ほかの誰を支持するかってのは別として、少なくても現都知事は支持しないんじゃない? と思うんだけどなあ……。

ムル:だからさぁ、「福祉政策だから現都知事」っていうんじゃあねえんだってば。都知事にどんな政策を望むかってのと、誰を都知事に望むかってのは、別の問題なんだよ。世論調査ってのは項目ごとにぶつ切りに聞くし、聞かれた方も慌てて適当に答える面があるから、あんまり信用しちゃいけねぇぜ。設問によって、いくらでも誘導が可能だしよ。その辺のことは、前に華氏も何度か言ってたんじゃなかったっけ(「世論調査の陥穽ということ」、「世論調査のいかがわしさ」など)。ただ、それをきちっと考えた上でなら、世論調査からもいろんなことが見えてくるとおいらは思う。たとえばさあ、おまえが言ってるその新聞の世論調査で言えば、政策として何を重視するか何てのは付け足しなんだよなーとか。

トマ:付け足し?

ムル:だからさぁ、おまえも言ったじゃん。福祉が一番大切だと思うなら、今の都知事殿がベストだなんて誰が思うかよ? まじィ? うっそー、てなもんだよな。共産主義革命を志向するから安倍総理支持します、っていうぐらい、ムチャクチャけったいな話さ。政策の上で何を重視するんなんて、どーでもいいんだよ、ほんとは。

トマ:あ、兄貴もなんか滅茶苦茶になってる……。

ムル:いいじゃんか、猫だもん。都民でもないし国民でもないもん。要するにおいらが言いたいのはだよな、政策とかマニフェストとかはほんとはそんな大事じゃなくて、「強いアナタ」にすがりたいかどうかってことなんだよな。

トマ:だからさぁ、僕は人間てマゾヒストじゃないかって疑ってるわけなの……。

ムル:サディストかマゾヒストか、そんなこたぁ知らねえ。おいらにゃあ、どうでもいいさ。ぶん殴られてコケにされて、それでも「あなたについて行きます~」「捨てないで~」と言いたきゃ、お好きにどうぞってなもんさ。たださあ……そう言っちゃう、てか、言わされちゃう構図って、見るに見かねるよなあ、やっぱし。

トマ:なんでそんなことになるんだろうね、兄貴?

ムル:話してるとむっちゃ長くなりそうだな……。おいら眠くなったから、続きはまたにしようぜ。ともかくこれだけは言っとくけどよ。おまえんちの華氏だって、えらそーなことほざいてるけど、おいらから言わせりゃ完璧なアホだぜ。これだけは譲れないんだってことを、もっとシャキッと自分の中で確認しなきゃ負けるぜ。一生アホやってる気か、って言っとけよな。

◇◇◇◇◇

ムルとトマシーナに関わるエントリ(一部)

世の中、露骨になってきた……」、 「小泉から安倍へ」、 「あなたに守ってもらわない決意」、 「牡猫ムルの人生相談・1――総理大臣の巻」(人生相談は今のところ勝手に5まで続けています)などなど。そのほとんどは(時々間違えてるところもあるかもですが)「ムルのコーナー」に収録。 

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国民の大多数が「改憲」を望んでいるか?

2007-03-14 23:42:00 | ムルのコーナー

 野良猫のムルと華氏宅居候のトマシーナの、相も変わらぬ会話を立ち聞きしてみた。

トマ:ねえ兄貴、人間の世界では「こくみんとうひょうほうあん」とかいうものが騒がれてるみたいだね。

ムル:ああ、あれか。おまえも最近、結構「しゃかいもんだい」の話をするようになったなあ。

トマ:僕、ひとつ疑問なんだけどさ。憲法って、変えちゃいけないものなの?

ムル:そんなこたぁねえだろ。憲法だって人間が作った法律なんだからさ、未来永劫、絶対変えちゃいけないなんてことはあり得ねぇよ。

トマ:じゃあ、変える方法を決めておいたって別にかまわないんじゃない?

ムル:基本的にはね。ただ、いま人間の世界で出されている国民投票法案てやつは問題が多いのさ。

トマ:問題って、どんな?

ムル:細かく言やぁいろいろあるけど、おいらの見るところ、「憲法を簡単に変えられるようになる」ということだろうな。それについては、もう大勢の人が書いてるぜ。たとえばもう1週間ぐらい前だけど、お玉さんて人が「有権者の2割の意見で改憲されたらどうする?」って訴えてたぜ。

トマ:え? 国民投票法案って、2割の人が賛成したら変えてもいいっていう法律案なの?

ムル:まさか、そんな露骨じゃあねぇさ。ただ、自民党案ってやつは有効投票(白紙や無効票を除いたもの)の過半数でOKってことになってるんだ。しかも最低投票率の規定もないからね。投票率が低かったりすると、それこそ全有権者の20%ぐらいの賛成で憲法が変わるかも知れないという話さ。いや、20%以下で変わることだってあり得るな。

トマ:有効投票の過半数って、随分乱暴な気がするなあ。

ムル:だろ? 憲法ってやつはさ、その国の基本的な姿というのかな、方針というのかな、こういうふうにやっていきましょう、という一番根っこの部分を決めた法律なんだぜ。おいらは「変えちゃいけないわけじゃない」と言ったけど、でもさ、細かい法律みたいにひょいひょい変えるもんでもないだろうよ。

トマ:基本的な方針て……学校でいうと「建学の精神」みたいなもの?

ムル:うーん、少し違うけど、まあ似たような感じだと思ってもいいかもな。個人でも集団でもいいけどさ、こんなふうにやっていきたい、という「基本的な方針」があるわけじゃん。おいら達だって、あるだろ。

トマ:兄貴の場合は「ご意見無用の一匹狼、じゃなかった、一匹ノラネコとして生きる!」ってやつだね?

ムル:やかましい! そんなこたぁどうでもいいのっ。ともかくさあ、その方針は絶対変えちゃいけないわけじゃねぇけど、変えるのは「よっぽどの時」なわけさ。

トマ:憲法を変えるっていうのは、個人の場合で言うと生き方とか人生観とかを変えるようなものなんだね。

ムル:うん、まぁそう思っても間違いじゃないだろ。ともかくさ、そういう基本原則、根っこの部分にかかわる法律だから、変えるとしたら「よほどの場合」だけだとおいらは思う。その憲法のおかげでひどい目に遭ってる人達がいて、国民の大多数が「こんな憲法は嫌だ」と悲鳴を上げた時、とかさ。それから、国の体制が変わった時――天皇制がなくなったとか、クーデターが起きて軍事独裁政権が出来た時なんかも、憲法は変わるだろうけど。

トマ:今の憲法を、日本の人達は「不都合な憲法」だと思っているのかしらん。

ムル:思っている人もいるだろ。でも大多数が――じゃあないと、おいらは思うな。だから、「有効投票の過半数」なんてギョッとするような国民投票法を作ろうとしているのさ。そう言えばあの法案、「壊憲手続き簡略化法案」とも言うらしいぜ。

トマ:きゃは、ケッサクだねッ。でも、有効投票数じゃなくて、投票総数の過半数でも、やっぱりおかしいよね。投票率50%だったら、その投票総数の半分と言えば有権者のたった25%じゃないの。

ムル:そうそう。投票率50%だったら、有権者のだいたい4人に1人の賛成で「改憲案」が通るわけさ。「20%=5人に1人」よりはマシかも知んないけど、「国民の総意」じゃあねえよな、どう考えても。おいらはもしも憲法を変えるなら、投票率とは関係なく、「全有権者」の少なくとも3分の2、本当のところは4分の3ぐらいの賛成が必要だと思う。あ、この話は前にもしたことがあったかもな。

トマ:全有権者の3分の2の賛成がないと変えられないとしたら、投票率が60%ぐらいだったら、もうそれだけで「改憲不可」だよね。投票した人が全員賛成だったとしても、憲法は変えられない。条件が厳しすぎる、っていう人もいるんじゃないかなあ。

ムル:おい、トマ。おまえ何聞いてたんだよ。国がその「生き方」を変えようってんだぜ? どんなに厳しくしたって、厳しすぎることはねぇよ。憲法を変えるとか変えないとかいう大切な問題については、「主権者」の国民全員がちゃんと考えて答えを出すべきなんだぜ。与党はそんなこと、させたくないのさ。いや、与党だけじゃない。国民投票法案については民主党も同罪だな。民主党の案だって、「憲法を変えやすい」案であることは間違いねぇや。この法案が通ってみろ、憲法はその時の政府の意向でころころ変わる可能性が出てくるぜ。ごく普通のジョーシキ持った国民なら、危なっかしいと思うのが当たり前じゃねぇのかなあ。

トマ:それにしても、今の内閣はほんと、法案通すのをすごく急いでるみたいだね。なぜそんなに急ぐんだろ。

ムル:まあ、自民党はずーっと「改憲」したがってたし、特に今の総理大臣は「任期中に改憲する」とかって、しょうもないこと言ってる男だしな。ほかにやることが山積みだろうにさ。ともかく、その「急いでる」というところが、国民投票法案のもう一つの問題点つうか、危ない点だろうなあ。改憲推進派っていうのかな、憲法変えたいと言ってる連中は、「憲法を神聖なもののように祭り上げるべきではない。議論すべきだ」とよく言うけどさ、彼らの言う「議論」てのは、「変えた方がいいよね、の話」にしか過ぎないんだ。「憲法を守るべきか、変えた方がいいのか」という議論をしちゃいけない、なんてことはあり得ない。もっともっと大勢が憲法のことを知り、真面目に議論した方がいいに決まってる。でも本当はそれをされたくないのさ、改憲したい連中はね。

トマ:ふうん……。「庶民は何も知らなくてよろしい」ってわけかぁ。国民投票法案のことも、きっと細かく分析されたり議論されたくないんだね。……ハ、ハックショーン!

ムル:お、おい。おまえ風邪ひいたのかよ。

トマ:うん、華氏の風邪がうつったみたい……。

ムル:「ナントカは風邪ひかない」って猫仲間の長老が言ってたけど、嘘八百だったみたいだな……。あ、おまえのことじゃねぇよ、そう睨むなってぱ。

◇◇◇◇◇

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牡猫ムルの人生相談・5――文部科学大臣の巻

2007-03-02 23:48:00 | ムルのコーナー

 都の東北を縄張りとするノラ猫が皆さんの悩みに勝手に答える「牡猫ムルの人生相談」。某国総理憲法の話をしたい若いママ厚生労働大臣とむ丸さんちのトムちゃん――と続けてまいりました。好評、じゃなかった。悪評、ですらないな。完璧低評にもかかわらず……それはそれで気楽と開き直って、ますます勝手に続けてまいります。

 今回は某国・暴言垂れ流し内閣の若頭、じゃなかった、重鎮であらせられる文部科学大臣の悩みに答えます。

【質問】人権ばかり主張するなという意見の、何処がおかしいのでしょう。

 おほん。私は先日、自民党長与支部の大会で教育再生について話をしたのだ。その時に「権利と自由だけを振りまわしている社会はダメになる。今回の教育基本法改正の最大のポイントはそこである」と述べた。そしてわかりやすいように人権をバターにたとえてだな、「食べ過ぎれば人権メタボリック症候群になる」とも言ったのだが、この発言が問題だといって騒ぐ奴が出て来て、実のところ面食らっているのだ。

 総理も私に発言は全然問題ない、とおっしゃって、「権利には義務が付き物、自由には規律が大切ということを言っていると思う」と擁護してくださったよ。そうそう、そうなのだ。私は何も、人権を軽視しておるわけではない。非常に大切なものであることぐらい、わかっとるよ。だがね、そればっかりじゃいかんだろ。義務も果たさずに権利ばっかり主張するのは、我が儘だろ? そういう教育をせず、人権の方ばっかり教えるから馬鹿な人間が増えたのだ。人権メタボリック症候群、という言葉がいかんのかね。わかりやすいように言っただけじゃないか。揚げ足取りはせんで欲しい。

 

【回答】人権は徹底的に主張されるべきなんだぞ。

 げげ。華氏の奴、また変なの引っ張り出してきたな~。前回のとむちゃんとか、ホッとするような相手だけにしてほしいよなぁ……。

 ま、いいや。いろいろ言いたいことはあるけどさぁ。まず、揚げ足取りとしか感じないのは鈍感もいいところだとおいらは思うな。人権メタボリック症候群というのは随分さぶい珍語だと思うけど、そういうヘンテコな表現があろうとなかろうと、あんたの言ってることの根本がおかしいのッ。例の厚生労働大臣とか言う人の発言も、同じことだったけどさ。あんた達はいつも、「ちょっと言い方が不適当だったかな~」ですませてるだろ。だからいつもいつも、同じことを繰り返すんだよ。 

 そりゃさ、義務も大切だろうよ。それぐらいはさ、あんたの言葉を借りれば、おいらだってよくわかっとるよ。ただね、「人権」というのは人間の社会において最も大切なものなんじゃない? すべての人間の権利は侵されてはならないという、そこから社会はスタートし、ルールが作られていくんじゃないの? 義務というのは、みんなの人権を守るにはどうすればいいかと考えた時に、約束ごととして出てくるものじゃないの? 

 おいら猫だからよくわかんねぇけどさ、人間て、「人権」を獲得するために苦しみ抜いてきたんじゃあないの? ほんの少し前まで、多くの人間は権利なんかほとんどなかったり、権利に段階があったり、つまり不平等だったんだよね確か。そんな社会はおかしい、そうではない社会を実現したいと思って、時には血も流したんじゃないの? それが歴史の進歩発展、つーもんだろ。あんたはどうやら、今の日本は国民が自由と権利ばかり振りまわしすぎてる、と思ってるみたいだね。ほんとかよ~と目が点になるぜ。ちゃんちゃらおかしいや。そりゃま、あんたの周囲の人はそうかも知んないけどさ。基本的な人権すら脅かされている人が、全国にどれだけいると思う。ひとつだけ例を挙げると、華氏がこの前ちょっと書いていた「リハビリ難民」の人達とかさ。「自由と権利を振りまわしすぎると……」なんてセリフは、この国に住んでる人が例外なく基本的な人権を守られるようになってから言えよなー。

 義務とか規律とかいうものはさあ、嫌でも出てくんのッ。どんな国でも、どんな時代でも。昔の多くの国は……というより今でも幾つかの国は、自然発生的に出て来たものじゃなくて、おかみの都合で作られたものみたいだけどね。えらい人というか、上の方の人と言うか、何でもいいけどさ、ともかく「指示・命令する側」(だと自分で思っている)人達って、なぜか「権利」とか「自由」とかよりも、「義務」や「規律」の方が好きなんだねぇ。いや、なぜかってのはわかるよ。その方が指示・命令しやすいもん。「やるべきことをきちんとやってから、権利を主張しましょう」ということにした方が、みんな素直なイイコチャンになるもん。自由とか権利だとかって、指示・命令したい側にとってはウザイんだろうさ。まあ否定するとファシズム国家なんて非難されるから、一応、尊重する……というか、尊重してることにはしてもだよ、ほんとは大きな声で主張して欲しくないんだよな、きっと。でもそんなことハッキリ言えないからさ、じゃあどうするかというと、「義務」とか「規律」の大切さを喧伝することで、権利や義務の位置を相対的に下げていく。薄めていく、って言えばいいかな。

 だからさ、「権利と義務」「自由と規律」なんて、一緒に並べるのはほんとはおかしいとおいらは思う。まず権利があって、それを守るための義務がある。まず自由があって、他者の自由を自分の自由と同様に守るために規律――て言葉は好きじゃないな、決まり事、ぐらいの感じがいいな――が作られる。そこんとこを押さえてないと、モノゴトの発想が狂ってくると思うぜ。……って、あんたに言っても多分ダメだろうなぁ。あんたはイイコチャンの国民を作りたいんだろうから。

 そう言えばおたくは「大和民族がずっと日本の国を統治してきたのは歴史的に間違いのない事実。極めて同質的な国」とも言ったらしいね。これも驚き桃の木サンショの木みたいな発言だと思うけど、 A Tree at ease さんの「大和民族は恥の代名詞?」でも読んで、少しぐらい赤面してちょーだい。

 おいら考えるだけで頭痛くなるから、ムチャクチャ大雑把だけど今日はもう、ここまでッ(え? いつも大雑把? えへへへ)。

◇◇◇◇◇

 当ブログは戸倉多香子さんを応援しています。

  ←この主張にも賛同中。

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与党、国民投票法案成立強行を「共謀」す

2007-02-14 23:40:26 | ムルのコーナー


 野良猫のムルと華氏宅の居候トマシーナが、今夜も例によって公園の隅で――。

トマ:ねえ兄貴、こんなニュース知ってる?

【自民、公明両党の幹事長、国対委員長らは14日午前、都内で会談し、憲法改正の手続きを定める国民投票法案について、民主党が衆院憲法調査特別委員会での審議に応じない場合は、与党単独採決で臨む方針を確認した。また、自公両党は5月3日の憲法記念日までに同法案の成立を図ることで一致した。】(2月14日付、時事通信配信記事)

ムル:ふ~ん。おまえ、猫のくせに、しゃかいじょーせーとかに興味あるのかよ?

トマ:(何言ってんの。兄貴の影響じゃん。)興味とかって言うんじゃないけどさぁ、人間と暮らしてると、いろいろ耳に入るでしょ? で、人間の世の中って、僕らには理解できないことばっかりだなーって感心してるわけ。国民投票法案とかって、そんなに急いで無理矢理にでも通さなきゃいけないものなの?

ムル:な、わきゃねーだろ。

トマ:華氏はね、国民投票法なんか、全然必要ない法律だって言ってる。少なくとも今の日本には、って。そうなのかな。

ムル:そうなんだろうな。ま、その辺はちょっと譲って、「あった方がいい」「あってもいい」法律だとしてもだよ、そんな急ぐこたぁねえやなあ。5月3日までに成立させるって? 普通に考えてみろよな。それまでに成立しないと日本はニッチもサッチもいかなくなるとか、国民が困窮するとかっていう話じゃないだろ?

トマ:うん、そうだよね。それなのに、なぜ強引にでも通すって言うんだろ? 単独採決なんて、普通、やっちゃあいけないことなんじゃない?

ムル:そう。議会制民主主義、ってやつを掲げている国ならばね。今の与党ってのは、議会制民主主義に宣戦布告してるんだよなー。日本の国民って、完璧に馬鹿にされてるっていうか、舐められてるよなあ。そんなこと言っても国民はボーッとして気付かない、怒らない、と思われてるんだぜ? こんなにコケにされて怒り狂わないってのは、おいらたち猫なんかにゃ信じらんないことだよな。

トマ:怒ってる人も多いと思うけど……。

ムル:多いか少ないか、おいらは知らねぇさ。ま、いることはいるだろうね。それも多分、少なくない数で。あちこちで集会とかも開かれてるそうだしさ。でも、ここが正念場なんだぜっ、ともっと身にしみて思った方がいいんじゃねぇかなあ。華氏のバカにもよくよく言っとけよ。「私は反対しました」なんて後で言っても屁の突っ張りにもならねぇぜ、って。

トマ:な、なんか兄貴も怒ってない……? 

ムル:けへへ。ひとごとながら腹が立つ、ってやつかな? 共謀罪がどうとかっていう話もあるけど、「単独採決の宣言」なんて、ほんと与党の「共謀」だぜ。

トマ:何罪の共謀?

ムル:何罪かね。名称は何でもいいけど、主権者たる国民の権利を尊重する義務を放擲し、民主主義に敵対した罪。公僕にあんなことを言わせちゃ、絶対にいけないと思うぜ。1度舐められたらおしまいだよ。いや、もう1度どころか何度も舐められて……舐められっぱなしかも知んないけどさ、そろそろ本気で踏ん張らないと――いや、踏ん張ってきた人間が本気じゃなかったなんて言う気はねぇよ、むろん本気だったと思うけどさ――、マジでやばいんじゃねぇかなあ。

トマ:踏ん張るって、どんなふうに?

ムル:踏ん張り方のマニュアルなんかねぇさ。それぞれの場所で、それぞれにできることを、っていうしかねぇけど。華氏にもそう言っとけよな。 
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牡猫ムルの人生相談・4――とむちゃんの巻

2007-02-11 04:01:57 | ムルのコーナー

 都の東北を縄張りとするボス猫のムルが、皆さんの悩みに勝手に答える「牡猫ムルの人生相談」。第一回は某国総理、第二回は憲法の話をしたい若いママ、第三回は厚生労働大臣――と勝手にやってきて、全然ご好評を博してもいないのにまだまだヤケクソで勝手に続けております。今回は、とむ丸さんちのとむちゃんを、引っ張り出してまいりました。とむちゃんのママさん、怒らないでくださいまし……(え? おまえはもう出入り禁止だ? ま、まさか。泣)。

 

【質問】絆という言葉の怖さを、どんなふうに整理すればいいのかしらん。

 あのね、最近あたしのママさんが怒りまくっているの。うーん、昔からいろいろなことで「そんなことは許せないわっ」と怒る人ではあったけど、最近、特にもう、ムカツクことが無茶苦茶多いみたいなのね。で、あたしのご飯も忘れる……ってことはさすがにないけども。で、あたしもやっぱり家族の端くれだし、ママさんが何怒っているのかちゃんとわかって、気持ちを共有するってのかしら、そういうことをしたいわけ。そりゃあたしは猫だもん、むつかしいことはわかんないけど……。たとえばね……ママさんが「戦後日本が失ったもの?」というタイトルで書いてるんだけど(詳しいことはそっちを見てね)、国会議員の人に対して「戦後日本が失ったものは?」というアンケートがあったんだって。そこで上位になった3つが、「地域のきづな」「他人への思いやり」「家族のきづな」だったそうなのね。で、ママさんはこれをすごく不愉快に思ってるふうなの。教員免許の国家試験かとかにも怒ってるみたいだけど、「失ったもの」の話は怒りが爆発するんじゃなくて、一瞬まともに怒る気にもなれない、みたいな絶望的なため息を感じるの……あたしの思い過ごしかも知れないけどね。ちょっと引用するわね。

【「地域のきずな」は、落語に登場する長屋のご隠居さんはご愛敬として、下手をすると隣近所の干渉になりかねません。】【「家族のきずな」ってなんだろう、「イエ」の成員間の関係を指してはいないか?】【さらには「美しい家族のきずな」がことさら強調されると、ただでさえ「小さな政府」が目指されている社会では、福祉問題も家族問題に還元されてしまうのではないか? と心配します。】【「地域のきずな」「家族のきずな」が失われたと判断した議員の一人ひとりは、いったいどんなきずなを思い描いていたのか、訊いてみたい気がします。】

 ママさんが不愉快に思うのって、わかる気はするの。でもあたしはそれを、うまく頭の中で整理できないのよね。何せ、地域も家族もない「猫」だもん。それに、ほんとにそういうものが失われてきたのかも知れないなと思ったりするし。世の中がどんどん悪くなってきたのは確かかも、とか。ムルちゃん、どう思う?

 

【回答】「昔はよかった」なんて言葉は、眉に唾付けて聞くべしだね。

 やぁ、とむちゃん、お久しぶり~。ほんと、ママさん怒ってるね。とむちゃんの言う通り、ズバッとした直球じゃなくてちょっと遠回しな表現になっている分、かえって深く静かに潜行する感覚みたいなものを感じるね。

 いや、おいらもさぁ、国もなければ親もない、ご意見無用の野良猫だからよ。絆なんて言われると「わかんねえー」と首振るしかねぇけどさあ。ただ、「昔はよかった」風なことが言い出される時って、ちょいと気をつけた方がいいとは思うんだ。たとえばさ、江戸時代はよかった、人情があふれてて……みたいに言う人っているじゃん。そりゃまあ、今より人情は厚かったかも知れんさ。おいらには、その辺のことはわかんねぇよ。でもよぉ、江戸時代っつーのは、庶民の人権なんか認められてなかった時代だぜ。そりゃ、いいところもあっただろうけど、社会の仕組みとしては決してユートピアじゃなかったはずさ。だから、ギリギリのところで嫌でも助け合わなければならなかった、のかも知れない。時代小説、ってのがあるだろ? いや、むろんおいらは猫だから1冊も読んじゃいねぇけどさ、いろんな小説家が時代小説書くのは、「自分の意思ではどうしようもない有形無形の掟に縛られた世界での悲劇や喜劇」を書くのに、すごく便利だからじゃないかなって思ったりする。ひょーろんなんかする気はないけどさ。

 戦前の社会でも、そりゃあさあ、いいとこはいろいろあったと思うよ。失われたものもいっぱいあるかも知れない。その辺は猫の長老にいろいろ聞いたりしてる。でもさあ、明治憲法と、今とは全然違う民法に縛られてた時代なんだぜ? 息苦しかったと思うけどなあ。

 ま、それはそれとして。失われたものは、あるかも知れない。失われた風景、とかは確実にあるだろうしね。でもねえ、とむちゃん。さっきちょっと言いかけたけど、それが「昔は良かった」とは絶対イコールじゃないとおいらは思うんだよな。「昔はよかった」ふうなことを言う連中の言葉を、よくよく聞いてりゃわかるじゃん? そういう連中は、自分達に都合のいいところだけ取り上げてるだろ。いや、誰だって何か言うときは、自分に都合のいいところをピックアップするさ。そのぐらい、おいらでもわかってるさ。おいらもしょっ中、やってるからさぁ。だから問題は、「何が言いたくて、それを持ち出したか」だと思うんだよな。聞いてるとわかると思うけど、「昔はよかった」論者がいうところの「よかったもの」って、分際を知った生き方とか自分を抑えて誰かに尽くす精神とか、オカミに都合のいいモラルと関係の深いものが多いと思わない? 

 本当のこと言うと、おいらは「人情」とか「絆」とかの基本みたいなものは失われたわけじゃないと思うんだ。自分の命を賭けて誰かに尽くす、みたいな心意気も在る。話が逸れちゃうから具体的には言わないけどさ、おいらだって、人間社会と接する中でそういうのを感じることは結構あるもん。ただ、「昔」とはすこーし色合いが違うかも知れないけどね。当たり前じゃん、世の中は変わっていくんだもん。表現方法だって変わって当然じゃんか。

 地域の絆がとか家族の絆がとか、何とかのひとつ覚えみたいに言われるけどさぁ、そんなもん、ほんとのとこどうだっていいじゃん。人間が生きていく上で必要なものであれば守られるし、不要なものであれば捨てられる。多分必要なものなんだろうけど、それなら無くなったりはしないさ。もし無くなるとすれば、それは人間が地球にとって不要、つーか有害無益な存在だったというだけのこと。ま、静かに絶滅するんだね。既に消え去った数え切れないほどの種の後を追ってさ。いずれにしたって、絆なんてものは無理矢理作りあげたり押しつけたりするもんじゃねぇし、そんなことしたってうまくいきっこないさ。

 それなのにことさらに「絆が失われた、失われた」と言いたがるのって、すごく危険だなとおいらは思う。そういうこと言う人の頭にある「絆」のモデルは、過去のものでしかない。昔を懐かしむことでしか自分という存在を確認できないジイチャンの、老いの繰り言だね。……って、そこそこ若いくせにそういう老いの繰り言する連中もいて、その辺はちょっと信じらんない気分だけど。懐古趣味って、たぶん、人を酔わせるんだよね。未来は不確実だけど、過去は確実に存在するわけだし。

 でもさぁ……昔のことを考えるのはいいよ。て言うか、昔のことは知っておくべきだし、いいところはきちっと評価して受け継いでいくべきだけど、「昔はよかった~」だけにはなっちゃいけないと思うんだよな、おいらは。

 それと、もひとつ。ママさんの言葉にもあるけど、「いったいどんな絆をイメージしてるんよ?」ということ。おらが村さえ豊かになればいいとか、よそ者は排除しようぜっていう絆もあるしね~。

 無理矢理引きずり出したのに、まともな話できなかった。ごめんね。これからきちっと考えとくから、勘弁して~。……てことで、とむちゃん、ママさんによろしくねっ。いつぞやはご馳走さま、また遊びに行くからサカナ食べさせてね~と伝えておいて。おみやげも持ってくからねって。おいら、とむちゃんに色目使ったカドでママさんに嫌われてるかもだからさぁ、これでも結構、気にしてンのよ。こう見えてもおいら、繊細なんだぞ。

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牡猫ムルの人生相談・3――厚生労働大臣の巻

2007-02-01 21:39:20 | ムルのコーナー

 都の東北を縄張りとするボス猫のムルが、皆様の悩みに勝手に答える「牡猫ムルの人生相談」。第1回は某国首相、続けて第2回は「憲法の話をしたい若いママ」の悩みを取り上げました。久しぶりの第3回は――自分の発言がなぜそんなに非難されるのか(実のところ)わからないという、お年を召した厚生労働大臣の悩みに答えます~。(ムルって何だと気になる方は、こいつを簡単に紹介したエントリをご参照くだされ)

【質問】きちんと謝ったのに、どうしていつまでもゴチャゴチャ言うんだ!?

 私は厚生労働大臣であるが、実は先日、うっかり「失言」をしてしまった。少子化問題のことを話した時に、「産む機械、装置の数は決まってるんだから、ひとり頭で頑張ってもらわんと~」と言ったのだ。そしたらもう、ババア共、じゃなかったご婦人の皆様や、それどころか野郎共、じゃなかった男性達までがうるさいことうるさいこと。あたしゃね、別に女性の人格を無視したわけじゃあ、ありませんよ。差別意識なんてこれっぽっちもありませんよ。第一、私は自分の母親を尊敬しとるですしね。でもまあ、表現が適切じゃなかったかも知れない、と思って慌てて訂正したしね、申し訳なかったと陳謝いたしましたよ。それなのに、まだブウブウ言う輩が多くて、ほんとのとこ面食らっておるのだ。機械とか装置とかっていうたとえも、ここだけの話じゃが別におかしいとは思わんのだよ、わしゃ。単なるたとえじゃないか。キイキイ言う人間の気が知れんよ。でも、オンナ共、じゃなかった女性の反感買うと参院選も危ないとかって言われて、謝りましたよ。総理はそれで充分だって言ってくださったし、経団連会長だって「すぐ謝罪、訂正したんだからいいじゃないか」と言ってくれてますしね。それなのに、まだ「辞任しろ」という声が聞こえるのには正直言って腹が立つばかり。いったい何が不足なんだ。土下座でもしろって言うんですかね。

 

【回答】ゴメンですまない話なんだよ。あんた、わかってないね。

 あーあ、こんな話、もう喋るのもうっとうしいんだよな(設定した華氏の奴、今度ずぇったい引っ掻いてやるぞ)。

 あんた、「謝ったからそれでいい」と思ってるの? 華氏じゃないけどさ、「ゴメンですむ話ではない」 とおいらは思うぜ。形だけでもいいから謝れば、みんなチャラになる。水に流してもらえる。あんたらきっと、そう思って生きてきたんだろうなあ。口で謝ってダメなら、土下座すればいいか、ってさ。ほんともう、度し難い感性だよな。経団連も、馬脚あらわしちゃったよな。

 ちょっとまずい表現しちゃった。だから謝って、言い換えればいいじゃん、とあんた思ってるだろ? それが変なんだって、あんた気がついてないんだよな……。あんたは「機械、装置」という言葉はさすがに不適切だったとかって言って、「産む役割の人」とか、そういう表現に言い換えたんだって? 同じじゃん。何処が違うのさ。ゾゾゾゾゾっと、おいらなんか鳥肌が立つよな。おいらは数にも入んない、生きようが死のうが世界とはなーんの関係もない野良猫だけどさ、「産ませる役割の存在」なんて言われりゃあマジで怒るぜ。国民はモノ、なんだよな。おかみの言う通りに「産めよ増やせよ」をやってろっていうんだよな。個々の人間の存在とか、歓びとか悲しみとかなんざ、ぜーんぶ、なーんの関係もなくってさ。そうゆう発想なんだよな、あんたら。働け、そして産め。国に奉仕せよ。

 あんたは「美しい季節とは誰にも言わせまい……」のnizanさんが言うように、ノスタル爺かも知んない。ノスタル爺なら、それはそれでかまわねぇよ。勝手にやってな。でもさあ、それをいつまでも引きずって、それどころか若い層にまで押しつけようとするのは、やっぱしおかしいぜ。黙って消えて行きなよ、悪いこと言わねぇからさ。(だいいち、あんたがノスタル爺ぶりを振りまくと、迷惑に感じる人も多いと思う。反戦老年委員会さんとか、再出発日記さんとかも、絶対不愉快だと思うんだよな。こんな奴と、同世代じゃねえぞーって)

 ちょびっとだけ言葉飾っても、衣の下から鎧がチラチラするっていうやつ。あんた見てると、ほんとそう思う。とくらさんって人もさ、「おばさんをお嬢様と言ってるだけの言葉に騙されない」と言ってるぜ。庶民てのはね、すこーし反応が鈍いかも知れない。周囲に気イ使っちゃって、つい口ごもったりするかも知れない。おいらの友人の華氏も、そういうヘタレな奴さ。でも、いつまでもいつまでも騙されちゃあいないんだぜ。いつまでもいつまでも黙っちゃあいないんだぜ。ぎりぎりまで行けば、やっぱしキレる。あたりまえじゃんか、生き物だもん。

 ところで首相は「反省した上で職務をまっとうし、結果を出して欲しい」とか言ってるようだし、あんたも「全力を挙げて取り組む」とか言ってるんだよね? なーんかさ、あんたでなきゃ出来ない、みたいに首相は(本気かポーズかは別として)言い、あんたは「我こそは」って思ってるみたいだね。都知事流に言えば、余人をもって代え難い、ってやつかね。でもさあ、そんなこと、ゼーッタイにないんだって。いくらでも代わりはいるって。特にあんたと同程度の人だったら、自民党内には掃いて捨てるほどいると思うよ。それに気がつかない、あるいは気がつかないフリしてるってことが、そもそも問題だとおいらなんざ思うけどなあ……。

 関係ないけどさ、「なだ いなだ」って人が筑摩書房のPR誌の『ちくま』だったかな、おいらよく覚えてないけど、ともかくどっかで「安倍首相は美しい国、美しい国と連発している。よっぽどこの国が汚いと思っているらしい」と吐き捨てていた。それ読んだ時は「晋三君にとっては、この国は汚ねぇんだろーな」と思っただけだけれど、あんたの発言聞いて、おいら、「けっ、やっぱりこの国は汚ねぇや」と思ったね。そーりだいじんとは、全然違う意味だけどさ。きったねぇ!!

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