華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

ビルマに雨の降るごとく――ムル&トマの対話

2007-09-29 23:47:54 | ムルのコーナー

 相も変わらず、野良猫ムルと腰巾着のトマの真夜中の会話などを――

トマ:ねぇ兄貴、兄貴は「みゃんまぁ」っていう国、知ってる?

ムル:みゃんまぁ? ああ、ビルマのことか……。

トマ:あ、そうそう。華氏もビルマとかって呼んでたけど……でも正式名称はみゃんまぁなんじゃないの?

ムル:あれは1989年に今の軍事政権が強引に呼称変更したものなんだぜ。ビルマの国民でも、認めていない人達、多いんだ。日本とかはミャンマー連邦っていう国名表記を認めてそれしか使ってないけどさ、ほかの国では、ビルマという国名で呼んだり、「ビルマ」と「ミャンマー」を併記するところも多いらしい。おいらはどうせ国境なき野良猫だから国名なんざどうだっていいみたいなもんだけどさ、でもやっぱし、感覚として「ミャンマー」は使いたくねぇなあ、という気がすンだよな。

トマ:ふうん……。

ムル:で、そのビルマが何だって言うんだよ。

トマ:うん。今さあ、すごく大変なことになってるみたいじゃん。僕にはよくわかんないけどさ、反政府デモを起こした市民とか坊さんとかに対して軍隊が武力行使をしたとか何とか。日本でも随分、抗議行動が起きてるじゃん? 全日本仏教会とかも、抗議声明を出したんだってね。

ムル:デモの参加者を警棒で殴り倒したりするだけじゃなくて、銃も向けたんだよな……。 

トマ:そういう話聞くだけで、僕なんかすっごく「怖い」という気がするの。なんで、国民に銃を向けなきゃいけないのさ? 人間はよく言うじゃない? 国を守るために軍隊が必要なんだ、武装が必要なんだって。その理屈も僕にはよくわかんないけど、国民に発砲するっていうのは、わからないなんて次元を通り越してるよ。

ムル:国を守ってるつもりなんだろうよ。たださぁ、そこでイメージされてる「国」は、その地に住み暮らしている人達、じゃねぇんだよ。国体とか政権とかのことなのさ。

トマ:国体……を守るために、国の中に住んでる人達に暴力をふるってもいいというわけ?

ムル:政権にとっては、反対する人間は「敵」なんだよ。そして、軍事政権というのは、要するに「武力」……というか、「力」による支配の形だからなぁ。敵は武力で制圧すべき、ということになって当然なのさ。あいつは敵だ。敵を殺せってやつさ。

トマ:なーんか昔々、一揆を起こしてお城に押しかけた人達を、銃を撃ちまくって殺したみたいな図……。

ムル:何をイメージしてるのか知らねぇけど、人間の歴史の中で、ウンザリするほど繰り返されてきたことなんだぜ。そうそう、村野瀬玲奈さんって人がさ……村野瀬さん、知ってるだろ?

トマ:うんっ! だいぶ前だけど、お嬢さまと一緒に遊びに来てくれた人だね~。

ムル:おまえなぁ……遊びに来たんじゃなくて、死刑廃止の話をしにきたんだけどな……。何聞いてたんだか。ま、いいや。村野瀬さんがブログでこう大書してる

【ビルマ(ミャンマー)の情勢を悲しみをもって見ながら、軍隊と独裁政権は民衆を守らずに自己の暴虐を隠そうとするものだとあらためて確信する。】

トマ:なるほど……。

ムル:軍隊ってのはさ、国家という概念に忠誠を誓う存在であって、個々に息づいている人間……国民と言っても民衆と言っても大衆と言ってもこのさい何でもいいけどよ、ともかくひとりひとりの人間に対して忠誠を誓ってるわけじゃあねえ。上のほうの連中はさぁ、そこんとこをあんまりはっきりさせるとまずいんで、どこの国でもいつの時代でも適当に誤魔化し続けてきたわけだけどさ。

トマ:「愛する者達を守るために~」なーんて言ったりしたわけだよね? ほんと不思議なんだよね……僕たち猫もさぁ、餌の取り合いで争ったりはするけどさ、僕らは軍隊とかって持たないからほんとわかんない。

ムル:ま、人間に猫の真似しろったって無理だけどよ。ともかく「国家」なんてものはもともと取扱注意の危険物だからさぁ、何重にも枷をはめて使わないとほんと危なくって仕方ねぇんだよ。ましてや武装なんかさせちゃあいけない。人間もだんだんそれに気がつき始めたんだと思うな。ミンシュシュギという考え方も、要するに国家を暴走させないために最もいい方法として選択されたんだとおいらは思ったりするんだ。

トマ:でも、まだまだ武装し、こわもてで通そうっていう国もある……。

ムル:日本だって、ヒトのことは言えねぇんだぜ。dr.stoneflyさんっていう人のブログに、こんな一文があった。

【ミャンマー軍事独裁政府は近い将来の日本政府の姿と重なる。】

トマ:兄貴もそう思うわけ?

ムル:ほんとに民主主義国家か、って聞かれるとさ、つい考え込んじゃうようなところがあるからなぁ。そりゃさ、カタチは一応、それらしくなってるさ。でもなぁ……ま、その話してると長くなるから、別の時にゆっくり話すけど。それに何よりさ、「こわもてになりたいよぉ」の政治家とか、競争や自己責任のだーい好きな政治家がうようよしてるじゃんか。「優しくなければ生きている資格がない」のは、何もハードボイルドの探偵だけじゃねえんだぜ。国家ってものこそ、「優しくなければ存在する資格がない」とおいらは思うんだよな~。

トマ:なんで急にフィリップ・マーロウが出てくんだか……。

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来年5月「9条世界会議」開催

2007-09-27 23:50:18 | お知らせ・報告など

 既に御存知の方が多いと思うが、来年5月に日本で「9条世界会議」が開催される。これは「武力によらない平和の実現」という日本国憲法9条の精神を世界に広げ、全世界的な常識にするための運動である。呼びかけ人は、井上ひさし氏・加藤登紀子氏・佐高信・高遠菜穂子氏・森村誠一氏……ら多数(正確な数を数えてないんで、スンマセン)。

 詳しいことは「9条世界会議」のサイトを参照していただくのが一番だが、少しだけ紹介すると――2008年5月4~6日の3日間が予定されており、場所は千葉の「幕張メッセ」。ノーベル平和賞受賞者たちの講演、パネルディスカッションのほか、分科会、展示、反戦・平和をテーマにした映画、演劇、コンサートなどが企画されつつある。ほかにも全国各地で、イベントが計画されているそうだ。

 実行委員会では、世界会議のキャラクター(虹色の9の字を抱えた小さなこども)を描いたグッズ(缶バッチ、ポストカード、Tシャツ)も製作した。第一の目的はこの世界会議の情報を広めるためだが、むろん、売り上げは運営資金になる。

 グッズはまだ大々的には売り出されておらず、サイトにも載っていないが(近日中にネットで公開される予定)、つい先日、実行委員のひとりに会う機会があり、その時に写真を分けて貰ったので一足早く皆さんにお見せしてしまおう。上が缶バッチ、下がポストカードである。護憲関連のイベントなどでは販売されているので、もう知ってるよという人も多いかも……ではあるけれども。

 なかなか協力できない貧乏ヒマ無し人間なので、せめてカンパのつもりで……と思って、少しばかりグッズを購入した。知り合いの若い人たちなどに配って、世界会議の話などもしてみるつもりである。

 世界会議、私も行きまする。大勢の、お互い名も知らぬ同志たちと会うために。

 

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昔話「御領主選び」

2007-09-18 23:57:53 | 現政権を忌避する/政治家・政党

 昔々、海の果てに――。大勢の人々が押し合いへし合いして住んでいる島がありました。

 この島はそのまたずっと昔から、御領主様が治めております。代々の御領主様の中にはとんでもない人もいて、生きていることが嫌になるほど重い年貢を取り立てたり、むやみに細かな規則を作って人々の日々の暮らしを締め上げたりしました。そして、ちょっとでも不満を漏らすと掴まえて首をちょん切られたりしたこともあったのです。そうなると島人たちもさすがに一揆を起こして御領主様に反抗したのですが、それは「悪政はゴメンだ」という意思表示でしかありませんでした。御領主様を追い払って自分達で島のあり方を決めよう、と思ったことは一度もなかったのです。

 島の長い歴史の中で、御領主様一族は何度か変わりました。今の御領主様一族は、60年ほど前に新しく表舞台に立った人達です。この島は60年ほど前に海の外の大きな国々と戦争をしてペシャンコになり、その当時の御領主様たちは力を失って、新しい御領主様一族が登場したのでした。もっとも実のところ、新しい御領主様たちは昔の御領主様達と縁続きでしたし、それに何よりも島で最も古い家系と言われ、なぜか島の人々の尊崇を集めている神官の家がそのまま残っていますから、何も変わっていないとも言えるのですけれども。

 いま、この島は、御領主様選びでお祭り騒ぎが繰り広げられております。100年ちょっと前、海の向こうの国々の「新しいやり方」を取り入れて、御領主様は「選ばれる」ことになりました。60年ほど前の、島が滅びかけるほどの経験をしてからは、それがもっと前面に出されてきたのです。

 御領主様は御領主様。同じ一族の間で誰が御領主様になっても、本当は大した差はありません。それでも島の人々は、つい「次は誰」という話題で盛り上がってしまいます。

 自分達が主導権を握るなんて、考えたこともない。島の人々は「名君幻想」に骨がらみになって、「善政を敷いてくれる」御領主様、つまり名君が欲しいのです。名君と言って言い過ぎならば、「よりマシな御領主様」への期待。他人任せ、他人頼みというのがいかにあやういものであるか、知っているはずであるのに。この島は、やはり――いずれは滅びていくのかも知れません。受動的な生き方は、実は生き物として最悪の選択肢なのですから。

◇◇◇◇

 福田VS麻生の報道には、もううんざりだ。どっちもどっち、五十歩百歩。同じ穴のムジナというやつである。自民党の息の根を止めるチャンスを、うかうかと見逃すまい。

 

 

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「看板」だけ替えて誤魔化すんじゃない!――安倍辞任劇

2007-09-12 23:48:24 | ムルのコーナー

 ようやく涼しくなってきた水曜の夜更け。古ぼけたマンションのベランダの隅で、野良猫のムルと、その弟分・トマシーナ(トマ)が喋っている。

(こいつら、何者だ?という方は、このエントリの最後のところを御覧下され)

ムル:やぁ、トマ。しばらくぶりだな。痩せたんじゃねぇか? 夏バテかよ。

トマ:うーん。ここんとこ2か月ぐらい、華氏の奴があんまり家にいなくてさぁ……2日ぐらいなんも食べてなかったり。ときどき華氏の友達ってのがご飯くれに来たりしたけど、それもアテにならなくてさぁ。

ムル:むっせきにんだなー。後足で砂かけて、家出しちゃえよ。どうせ住み心地のいい家じゃねぇんだしさ。

トマ:でもねー。一宿一飯以上の義理があるから、黙って消えちゃうのも悪いしね~。第一、これからだんだん寒い季節に向かうし……。春になってから考える。

ムル:ちぇっ、だらしねぇ野郎だな……。

トマ:そうそう、無責任って言えばさぁ、首相が辞めるんだってね。夕方、外を歩いているオジサンオバサンが、「無責任だよな」みたいな話してた。

ムル:大恥かいたって感じはあるよなぁ。参院選で負けて、それでも「辞めない」って大見得切って、所信表明演説だか何だかまでやって、いきなり「ボク、もうやってらんない」だからさ。誰だって「何だ、あいつ」と思うよな。

トマ:ねえ兄貴、安倍首相が辞めるっていうのは、いいことなんだろうか。

ムル:な、何だよ、いきなり「ムチャクチャ素朴な」質問するなよなー。

トマ:安倍首相ってさ、美しい国だとか戦後レジームからの脱却とか、聞いてる方がシラケるようなヘンテコなことばっかり言う人だったじゃん? 憲法改定にイノチ賭けるみたいなこと言ったりしてさ、自分はこの国のゆくえを決められる立場にあるんだみたいな勘違いしてる人間だったよね。だから辞めるって聞いて、一瞬、「あ、よかったじゃん」と思ったんだけど……でもよく考えてみたら、あのヒトが辞めたらそれで世の中OK、なわけじゃないんだよね。

ムル:そうそうそう。安倍晋三っていうグランパ・コンの坊ちゃんは、確かに問題多い政治家だとおいらも思うぜ。たださ、安倍だけがロクデモナイ奴、というわけじゃあない。前の小泉もそうだったけど、安倍にしても、おいらは「出てくるべくして出て来た政治家」だと思うんだよな。自民党の鬼っ子だったわけじゃあねぇ。

トマ:次の首相は誰か、とか賑やかだけれど、誰がなっても同じってところはあるよね。

ムル:むろん少しずつは違うだろうけど、所詮は「赤トラ猫」と「黒トラ猫」の違いぐらいだよな。でも、目先が変わると、つい「あ、世の中変わるかも」「あ、今度はいいかも」ってすぐ期待しちゃったりもする。

トマ:期待しちゃったりするって……誰がよ?

ムル:誰ってこたぁないさ。誰でもそういうところがあるっていう話。

トマ:そう言えば、安倍首相は辞任表明の記者会見で、「現政権の路線を推し進めるためには、自分が首相であることが障害になる。新しい首相のもとで継続してもらうべきだと思った」みたいなこと言ったんだってね。

ムル:看板だけ替えようってわけだな。魅力がなくて客にそっぽ向かれてる店が、品揃えどころか内装も替えないで、店の看板だけ目新しくしたり、店の前に置くマスコット人形だけ新しくしようっていうのと同じ。姑息なんだよな~。

トマ:それでも、期待する人が出てくるわけ?

ムル:多分、な。次の首相は、安倍政権の「過ち」とやらを――わかりやすくて、実はちっちゃなことだけ取り上げてさ、「安倍首相はこういうところがよくなかった。ワタクシはそういう過ちは繰り返さないように気持ちを引き締めて……」とか言うだろうさ。でも「路線そのものは間違ってませんでした」ってね。

トマ:変なの……。おかしいのは「路線」そのものなのにさぁ。

ムル:路線、なんてぇのはわかりにくいからね。たとえばだよ、「子供というのは家畜と一緒で、飼い馴らすべきである」という方針を持った学校があるとするだろ。で、生徒を殴ったり脅し上げたりして教育して、さすがに問題になって校長が辞任したとするだろ。次の校長はぐーんとソフトなイメージで、「体罰などは絶対許されることではありません」と言ったりする。でも「飼い馴らし」の方針は全く一緒で、殴ったりする代わりに、巧妙な洗脳教育を始めた……。おまえ、どう思う?

トマ:相変わらず、兄貴のたとえ話ってわかりにくいし、何となくピントもはずれてる気がするけど……ま、いいや。要するに「表面だけ変わったって、モトが同じなら一緒じゃん」って言いたいわけだネ。

ムル:なーんか、ヤな奴だな、おまえって……。

トマ:へへへ。兄貴が変なたとえばっかりするからだよーん。

ムル:もうひとつ、怖いのはな。「安倍さん、カワイソウ」ムードが出てくることだよな。

トマ:えっ??? そんなもん、出てくるの?

ムル:知らんよ、そんなもん。おいら予言者でも政治評論家でもねーもん。ただ、出て来たっておかしくはねぇ。日本人の特性……かどうかは知らねぇけど、すごすごと尻尾巻く相手を、何処までも追及できないんだよな。すぐ「カワイソウ」「そんなに責めなくても」になっちまう。そりゃさぁ、惻隠の情ってのはすごく大事だよ。おいらも好きさ。でも、誰に対してもズルズル惻隠の情をかけちゃうのがいいことだとは、おいらは思わねぇ。特に公的立場にある人間に対しては、とことん厳しくしないとダメだと思うんだよな。

トマ:惻隠の情、かぁ。「死者に鞭打たない」なんてのも、それと関係あるよね。

ムル:むやみに鞭打つのがいいとは言わねぇけどさ、打つ時、打つ相手に対しては、容赦をしちゃあいけないのさ。その辺を「ま、すんだことだし」って言ってると、いつまでもいつまでも同じことが繰り返されるとおいらは思うんだ。

◇◇◇

ムル=都の東北を縄張りとするボス猫。  トマ=華氏宅の居候で、ムルの腰巾着。

このコンビの思いつくままの対話は、「ムルのコーナー」の中におさめております。

 

 

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